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五話 勇者と初めて*
しおりを挟む「ん、ん……ふ……ぁ」
「シエル……綺麗だ……可愛い……」
「ッあ……まさか、夕夜まで私が美女に見えているのか!?」
そんなミスはしていないと思うが、幻術系はかかりやすい人間は簡単にかかるからな。もしかしたら夕夜はそういうタイプだったのかもしれない。
しかし、夕夜は何言ってんだコイツという顔をしている。
「は……? シエルは相変わらずイケメンだけど? 俺より身長高くて、しっかり鍛えてるカッコイイ男にしか見えないよ」
「じゃ、じゃあ……何故キスした!?」
「したかったから。シエルに、どうしようもなく惹かれているから……」
「なるほど。では続きをしよう」
したかったのならば仕方ない。存分にするが良い。私は抵抗をやめて身を任せた。しかし、夕夜の反応は芳しくなかった。
「シエルは俺の事なんとも思ってないかもしれないけど、俺は……本気で言ってるんだけど……」
私も本気なのだが。夕夜には全く通じていないようだ。どうやら私の態度がいけなかったらしい。誤解を生むのはよろしくないので、必死に言葉をかき集めた。
「私が夕夜をなんとも思っていない……というのは間違いだと思うぞ。私は誰より夕夜の幸せを願っているし、好いている。だから、夕夜が本気で望む事をしたら良い」
「……シエルも俺の事、好きって思っていいの?」
「ああ。好きだ」
「俺も……シエルが大好きだ」
夕夜は熱に浮かされた様に、私の唇を激しく貪った。同じベッドで眠っていたのに、ここまで触れ合った事はない。私と夕夜が重なっている部分がとても熱く感じる。もどかしそうに、夕夜は二人を隔てている布を手早く取り去っていく。やっぱり器用だなと思う。
いざ裸になると、私は急に恥ずかしさが込み上げてきた。今まで誰にもここまで大きく肌を見せた事がなかったからだ。
「いつも余裕そうなのに……シエル、どうしたの? 顔赤いけど」
「……肌を誰かに見せるのが、初めてなんだ……」
「えっ……これ、初めてってこと? てか、俺が何しようとしてるかわかってる?」
「初めてだが、さすがにわかっている……性行為だろう……」
改めて確認されると、本当に合っているのか不安になってしまう。
魔王だし、私はあちらの世界では恐怖の象徴でしかなかった。誰かと触れ合うという機会がほとんどなかったのだ。
まさか夕夜とこうする事になるとは思わなかったが、正直嬉しくて仕方がない。私だけが嬉しいのかもしれないという不安は、夕夜の言葉によって一瞬で消え去った。
「うわー……うわぁ、マジで……? 嬉しい……感動で泣きそう」
「私も嬉しい……。その、初めてだから……全て、夕夜に任せる事になるが……」
「うん……俺に任せて」
夕夜の手が私の肌を滑る感触は、とても気持ちの良いものだった。夕夜が与えてくれる刺激を、私は一つ一つ大切に覚えていく。膨らみのない胸など面白くもないだろうに、夕夜は丁寧に全体に触れてから、小さな先端を指先でくすぐった。
「あっ……んぅ……っ」
「ここ、気持ち良い?」
「わ、からない……でも……恥ずかしさで、おかしくなりそ……」
「そんな可愛いこと言う……?」
夕夜はギュッと私を抱き締めた。皮膚にかかる夕夜の吐息すらも私の身体を震わせる。早く一つになりたかった。このために夕夜と出会ったのかもしれないと思うほどに、私は夕夜の温もりを求めていた。
「夕夜……はしたない、願いなのだが……もう、夕夜が欲しい……」
「シエルって意外と大胆だな……」
「私を大胆にさせているのは夕夜なのだから、ちゃんと責任を取ってくれ」
「ふはっ……そうだな。でも、入るかな……初めてだし、難しいかも」
私の臀部を撫でた夕夜が少し寂しそうに呟いた。確かに、人間の身体は不便だった気がする。しかし私は人間ではないのだ。
「大丈夫だ……私は魔王だぞ。その……ソコは……女と変わらない柔軟さを備えているし、中も清潔なんだ」
「そ、そうなの!?」
「子種をいくら出しても問題ないし、快楽だって拾いやすいはずだ……まあ、初めてだから私も聞きかじった知識を語っているだけだがな」
「百聞は一見に如かずってことだ」
「ああ」
「……じゃあ、触らせてもらうけど、何かあったらすぐに言って」
夕夜が新品の潤滑剤を開封した。アナル用と書かれているのだから、私との行為を事前に想定していたという事だろうか。それだけで、胸の辺りがギュッと掴まれたような感じがした。
私はこれまで、消えろと望まれる事はあっても、誰かに求められるなんて皆無だ。私自身をこうして求められるのは初めての経験だった。
「ふっ……う、んぅ……あ、あ……」
「ほんとだ……シエルの中……柔らかい……」
ニチ、ニチャと粘度の高いジェルの音が羞恥心を煽る。夕夜の指が私の中を行き来して、その刺激だけでも声が勝手に溢れ出て止まらない。夕夜のペニスで擦られたら私は一体どうなってしまうのだろう。
夕夜は指を抜き、自らのペニスにジェルを塗りたくった。とうとう、それが私の中に入って来るのだ。期待するように、大きく勃ち上がったそれを私は見つめてしまう。
「そんなに凝視されると恥ずかしいな……」
「す、すまない……」
「いいよ、でも、俺も余裕なくて」
そう言った夕夜は私の腰の下に枕を差し込んだ。
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