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【最終章】魔王を護る黒騎士
エピローグ -闘技場-
しおりを挟むテリアです。闘技場での報告をしますね。
闘技場は血気盛んな魔物の本能が呼び起こされたらしく、人気は絶大でした。
レジャンデール神は闘神の力を見せつけ、魔界で大量のファンができ、交尾の申し込みが殺到していました。
魔物は強さと性が直結しているので、闘技場の周りには連れ込み宿をつくると繁盛するかもしれません。
レジャンデール神は神界でも浮名を流していたそうですね。
各世界で戦神と呼ばれる強い神の言い伝えがあれば、大体それはレジャンデール神の子供なのだとか。
あ、忘れてはいけないのが魔王代行の事です。
対戦カード全てが終わり、魔物達の興奮が冷めやらぬ時にクラウンさんが登場しました。
裏方ではクラウンさんはガクガクと全身が震えていたらしいのですが、舞台に立てばカリスマ全開でした。
「我は魔王リスドォルから直々の依頼で、魔王不在時に貴様達を取りまとめる魔王代行を務めることになった悪魔クラウンだ」
統率者として認めたくなるような、凛々しく、涼やかな通る声が響きました。
声の力に静まり返ったのは一瞬で、直ぐに闘技場からはざわめきが起きていました。
本来、魔物最強であるのが魔王の条件なのに、代理とはいえ弱者として有名な悪魔が登場したのですから、この反応は仕方ないのかもしれません。
魔王の決定とあれば表立って抗議する者はいませんでしたが、闘技場は殺気立った空気になりました。
「異論は認める! 悪魔という弱者が上に立つのは納得がいかぬ者も多いであろう!」
そのクラウンさんの言葉に、再び闘技場は静寂に包まれました。
魔物達がクラウンさんの次の言葉を期待し、早く聞かせろという思いが一つになったからです。
「我よりも強者であると自負するならば、このリンクに降りて来るがよい! 我は貴様達に力を示す義務があるのだからな!」
瞬間、雄たけびが闘技場全体に響き、クラウンさんの前に数十の魔物が集いました。
歓声と熱気に一気に包まれ、僕まで興奮してきます。
集まった魔物を見渡したクラウンさんは、口の端を片方大きくつり上げて笑いました。
「フッ、まずは我の前でどれだけの者が立っていられるか見ものだな。我より圧倒的に弱い者は、リンクに立つ資格すらないと知れ」
クラウンさんがそう言った瞬間でした。
数十いた魔物のほとんどが全身から血を噴き出し、バタバタと倒れ、一瞬で血の海になったのです。
立っていられた者は片手で数えるほどになり、その少数精鋭ですら頭を抱え、鼻血を出して苦しんでいます。
観客席からはどよめきが聞こえました。
「グーデ、リエール」
「はっ」
クラウンさんに呼ばれて現れたのが魔神二人だったため、観客席のざわめきが更に大きくなりました。
悪魔よりも高位で、しかも神種である魔神が跪き、クラウンさんに頭を垂れたのですから驚いたことでしょう。
「治してやれ」
「お任せください、クラウン様」
二人は魔方陣を展開し、全員を癒しの光で包みました。
フランにもこの様子を見せてあげたかったなぁ。
回復魔法は使用者独自の価値観で修復方法が違っているので見ていてとても面白いのです。
あの双子の魔神の修復は一つ一つの細胞からしっかりと構築されていくので丁寧で美しいです。
フランの回復魔法は気合なので何故か一瞬で治っているんですよね。神をも超える速度なんです。凄いでしょう。あ、伴侶自慢をしている場合じゃありませんでしたね。話を戻します。
魔神は叫びました。
「立っていられなかった者は去れ! クラウン様との力の差はわかっただろう!」
「立っていられた者は僕達魔神が相手だ! このグーデとリエールはクラウン様の剣。剣を折らねば主に近付く資格はないと心得よ!」
魔物を完治させた二人はクラウンさんの前に出てそう宣言しました。
この時点で闘技場内にいた全ての魔物達は、クラウンさんを魔王代行として認めていたと思います。
しかし、立っていられた者は前に出ました。
「あの~、魔王代行の件は納得したからよ、それとは関係なく魔神と戦ってみたいんだが……」
「わしもわしも」
「あたしも~」
単純に腕試しをしたい魔物が戦いを魔神に申し込んでいました。
それに答えたのは魔神ではない別の声でした。
「今日の所は魔王代行のお披露目が済んだのです。せっかく強者が選ばれたのなら、対戦カードを組んだ方が盛り上がるし楽しいでしょう? 近々次回の大会を開くという事でお願いしたいのですが」
登場したのはブルガーさんです。しれっとクラウンさんの腰を抱いています。
新たな悪魔に魔物達は注目しました。
魔物達は観戦で昂った闘志の行き場を失って大ブーイングです。
「申し遅れたが、俺は上位悪魔のブルガー。今は魔獣界の長もしていてね」
爽やかに微笑むブルガーさんに、闘技場内は期待に息を飲みました。
「クラウンではなく、俺の部下達が本日のお相手を務めよう」
ブルガーさんの言葉に、続々と闘技場に魔獣が入って来ました。
クラウンさんと双子は退場し、そこからは殺し以外は何をしてもオッケーの大乱闘です。
血の気の多い者達が心行くまで戦いに明け暮れていました。
以上が闘技場での出来事になります。
ちなみにですが、僕もこっそり乱闘に参加して顔を腫らして帰り、フランにこっぴどく叱られてしまいました。
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