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【番外編】ジン×デュラム
十六話 ジンの二度目の初めて *ラブラブ
しおりを挟む俺は導かれるままに先生の中に指を潜り込ませた。
ヌルヌルとした体内の感触が新鮮で、好奇心が先行した探るような動きになってしまう。
「ん、ん……」
「あったかい……柔らかい、です……」
「ふふ……ジンのために用意した場所だから」
そう先生が色っぽく微笑むと、俺は無意識に音がするほど大げさに唾を飲み込んでいた。
俺のため。
当たり前の事だが、人間の体は後ろが勝手に濡れることなんてない。
本来だったらあの夜、俺は先生に大怪我をさせていただろう。男でも女でも関係なく苦痛は避けられなかったはずだ。
しかし、そうならなかったのは先生が言葉通り俺のために事前に準備を重ねていたからだ。俺との行為を前々から視野に入れていたという事実。
喜びよりもまず実行力に敬服するしかなかった。先生は凄いんだと子供の頃から常々思っていたが、何年経ってもそう実感する事が多い。
もどかしげに先生は俺の頬に両手で触れた。
「お前はもう、子供じゃなくて……俺の旦那様だろ? だからさ、俺がジンのものだって身体に刻み込んでくれよ」
「せ、せんせいっ」
俺は先生の言葉に思考を奪われ、先生の脚を大きく開き、誘われるままに蠱惑的な窄まりに先端を押し当てる。
先生のソコは俺の存在を感じて、まるで中へ促すように入り口をヒクヒクと動かした。
グッと体重をかけると、最初の締め付けを越えればその後はなんの障害もなく奥へ突き進む。
「ふぁ……んッあぁ……」
「あ……せんせ……すごい……ッ」
体内への侵食が進む度に先生は声をあげた。
その声に比例して俺の興奮が高まっていくのを感じる。
「はぁ、あ……んっ」
「ッ……はぁ……」
これ以上進めない所まできて俺は息を吐いた。
まだ動かしてもいないのに、中に留まるだけで腰が蕩けそうな快感に見舞われる。
受け入れている先生は辛くないだろうか。
「ぁ……はぁ……あ……」
心配で表情を窺えば、頬が紅潮し、緩く口を開けて浅く息をしていた。
先生の中心は勃ち上がったままで、先端に透明の雫が浮かんでいる。
苦痛を感じているようには見えないが、念のため先生に声を掛けて確認する。
「大丈夫、ですか……?」
「ん……気持ち良すぎて、びっくりしてる……」
話しながら先生は自分のお腹をゆっくり確かめるように撫でた。
その様子は恍惚のようにも慈愛のようにも見える。
「それ、よく、わかります……」
俺も下半身の刺激にのみ狂っていたあの時とは全然違う。
今は先生の表情や動き、声といった全ての要素が快感に繋がって、さっきからずっと背骨を抜けるような気持ち良さが全身を襲っている。
「こんなん、動かれたらどうなっちゃうんだろ」
「わかりません……初めてなんで」
俺がそう言うと、先生は、はにかんだように笑った。
初めてをやり直すなんて無理なのではないかと思っていた。
しかし、心を通わせての行為はあまりにも別物で、これは“初めて”だと言わざるを得なかった。
「せんせい」
「ん……」
俺達は繋がりながら口付けを交わす。
それだけでも甘い痺れが全身を震わせ、どうにかなってしまいそうだ。
口付けが深く濃厚になると、自然と腰が動いていた。
「んぅ、んッ、ふぁ」
「はぁ、は……」
始めはゆっくりと先生の中を探り、互いの存在を確認するような動きだったのに、次第に動きは激しくなった。それに合わせ先生の声も変化し、快感を示してくれる。
「あっ、あ、んッ! ひっ、あぅ、ジン、すご……ッはげし……!」
先生の身体が小さく痙攣しているのが見て取れる。
ふと、腹部に生温かさを感じ、それが先生が出した精液であるとわかった。
止まるべきかとも思ったが、俺は穿つ勢いを弱めることはせずに動き続けた。
「あぁッ! も、イって……る……のにッ……ぃ」
「せんせ、もっと……もっと、気持ち良くなろ……?」
「ひぁあ、んぅ、こんな、あぐッ……ヒ、あァッ」
俺の背中にまわされた先生の手に力が入る。
ビリッとした痛みが走るけど、先生が感じている証拠なのだからその痛みも愛おしい。
あの夜は俺が先生の背中を沢山傷付けた。
だからそれ以上に先生も俺に跡を刻み付けて欲しいと願った。
「だめ、また……イきそ……っんぅ!」
「俺も……そろそろ、限界……ぅッ」
先生の中が俺の陰茎に絡みついて、快感を限界まで引き出そうとしている。
肉壁のうねりが先生の絶頂が近いと教えてくれ、俺はそれに合わせて動きを更に早めた。
ガタガタとソファが大きく揺れ、俺達の行為の激しさを伝えてくる。
「せんせい……ッ出る、でます……!」
「ジン、じん……も、だめ、あぅ、うう、ん、あぁッ!」
二人で絶頂に硬直し、ゆっくりと弛緩すると、荒い呼吸音だけが耳を刺激する。
結局、冷静に初めてを演出するなんて無理だった。ベッドに移動する余裕すらなかった。
正直あまりあの夜と大差ない。
それでも呼吸を整えている間、先生の顔を間近で見られるだけでも幸せだった。
「ふ……ふふ、なんだよ、じっと見て……」
「いや……キス、したいなと思ってました」
「すればいいじゃん、もう親子じゃなくて夫婦なんだからさ……なんの遠慮もいらねぇよ」
そうだ、俺は今、先生と対等な立場になったんだ。
正式な契約をしなくても、大勢の前で宣言するだけでも婚姻としての効果は十分にある。
プロポーズに必死でまだあまり実感が湧いていなかったけど、急に先生の伴侶になれた事実が脳に浸透する。
「あ、そういやまだ俺から言えてなかったな」
「え?」
先生が突然そう言った。
何かあったっけ、と俺は少しだけ冷静さが取り戻せたが、それも一瞬でしかなかった。
「ジンの事が好きだ。愛してる。一人の男として尊敬してるし、こうして抱かれたいって思うくらいジンは魅力的で、俺にはもったいないくらいの良い男だっていつも感じてる……。本当に好きなんだよ……」
最後の言葉は俺に伝えるというよりも、独り言のようだった。
そういえば先生からの好きって言葉は初めてだったのか。
気持ちは十分伝わっていたから気にしてなかった。
だが、こうしてハッキリ告白されると、感情が処理しきれずに脳が熱くなり過ぎて今にも破裂しそうだ。
それでもどうにか言葉を返した。
「おっ……俺も大好きです! 愛してます、先生」
「あ、せっかくだし名前で呼ぶ?」
先生が軽い感じでそう言った。
普段は良くても、今後誰かに紹介する時などに『先生』と言う訳にもいかない。
夫婦になったという実感という意味でも慣れておくのは必要なことだ。
俺は恐る恐る、先生の名前を口にした。
「デュラム……さん」
「んふふっ、新鮮だなぁ」
思わずといった風に先生はクスクス笑っている。
その響きには確かに喜びが含まれていて、急に俺の胸が締め付けられた。
ずっと静かに小さく灯していた恋心が燃え上がったような、好きだという感情で全身が満たされたみたいな感覚だった。
好きという気持ちで人が死ぬなら、俺は今死んでいたと言えるくらい心臓がドキドキしている。
夫婦になっても俺は一生、先生に恋し続けるんだと確信していた。
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