【R18】魔王様は勇者に倒されて早く魔界に帰りたいのに勇者が勝手に黒騎士になって護衛してくる

くろなが

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【第二章】囚われの魔王様

十四話 勇者ユタカは魔王様の服を脱がせるのか

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 城に帰って来たけど、イーグルに破壊された部分が直っているなんて都合の良い事はない。


「まずは塞ぐぞ」


 天井が大きく崩れていて、雨風をしのぐ事ができないのは大変だ。
 リズ様はすぐさま大掛かりな城全体の修繕に取り掛かる。


「お手伝いする事はありますか?」
「いや、私の魔法でやれるだけやるから今は大丈夫だ」


 そう言うと、リズ様はパラパラと種のような物をばらまいた。
 修繕作業を得意の植物で行うつもりらしい。
 地面が光の絨毯みたいに輝いたかと思うと、蔦や枝がいっせいに城に絡み付いていく。
 みるみる石材と木が融合して、ファンタジーの遺跡みたいになっていく。


「おお~綺麗だな」


 デュラムも感心したように植物の成長を眺めている。
 俺も神秘的な光景に目が離せない。

 やがて天然の屋根が出来上がった。
 晴れた時は、葉の隙間から光が差し込むようになっていて、天気の悪い時には隙間なく木々で塞がれる便利仕様だそうだ。
 魔王城があっという間に生きた城に早変わりである。


「全体の修繕はこれで良いだろう。屋内は重要な部分はフランセーズが守っていたから大丈夫だろうが、細かい修理や改装は各自好きにしろ」


 リズ様はこの流れで、デュラムに約束していた調理場と倉庫以外にも自室を与えた。
 これで魔王と三人の勇者が住まう城になった。
 観光地にでもしたら儲かりそうだな。


「ユタカ」
「はい、なんでしょうかリズ様」


 村人服からいつもの鎧に装備を変更してリズ様に跪く。


「新しい寝室を用意する」
「はあ」
「何を呆けている、お前と共に過ごす場所だ」
「んぁ゛!?」


 めちゃくちゃ変な声が出てしまった。


「ふ、ふ、夫婦の寝室ってやつですね」


 動揺が全く隠せない。声だけでなく顔まで裏返ってしまいそうだ。


「ああ、そうだ。だが共寝は直ぐにでなくていい。ゆっくり話す時間を取りやすいようにしたいのだ」


 自室は互いに今まで通りだけど、寝る時のみ同室という環境を試してみたいということらしい。

 セックスのお誘いということじゃなかった。
 少しだけ残念に思いながらも、単純に相性を見るのは確かに大事だ。
 イビキとか歯ぎしりがうるさいと嫌だよな、わかる。


 壊れていない余った部屋を見て周り、城の中でも広くて、一番奥に位置した部屋を寝室に決めた。

 リズ様によって互いの部屋に、直接寝室に移動できる魔方陣が設置された。
 一瞬で遠い部屋に行けるなんて、魔法マジ万能。

 寝室には、俺が三人並んでゴロゴロできそうなでっかいベッドが用意された。
 贅沢に中央にドーンと置かれて、本当に寝る事がメインの部屋なんだと妙に緊張してしまう。

 ベッド全体が天井からつり下げられた薄い布で覆われてる。
 天蓋付きベッドっていうより形はちょっとサーカスのテントっぽい。
 部屋の中に秘密基地ができたみたいだ。

 外からはシルエット程度しか中の様子が見えないのに、中に入ると、薄いベール越しくらいの鮮明さで部屋が見渡せて驚いた。


「マジックミラー!?」
「ユタカの世界ではそう言うのか。敵襲に気付かないのは困るからな」


 一番無防備な状態ですもんね。


 リズ様が天蓋を点検しているのをベッドに座りながら眺める。
 俺は魔法が使えないので基本役立たずなのだ。

 今のリズ様は、魔王服からマントを外した状態なので体のラインがよく見える。
 髪は長いけど、だからといって女性らしさは皆無だ。
 全体的にスラリとしているけど、肩幅もあるし、厚みもある。
 鍛えられた男の体としか言えない。

 ヤバい、すんごくムラムラしてきた。
 こんなに近くで体を見続けるなんて今までしなかったし。
 ベッドに好きな人と二人という事実が、今更俺を襲ってくる。

 なんか別の事を考えよう、そうだな、魔王服って脱がせるの難しくないか?
 ボタンも多いし、スムーズに脱がす事が出来るのか心配になってきた。
 全然別の事に思考は移動してないが、気になるものは気になる。


「リズ様、その服ってどうやって脱ぐんですか?」
「魔法だが」


 そうでした。
 いやでも待ってくれ、いざセックスってなった時に魔法で衣服が消えるとか情緒が無い。
 脱がす楽しみもセックスの一部だって雑誌で読んだ気がする。


「一応、確認なのですが、今からエッチしますっていう時って、服はどうするんですか?」
「魔法で全て消すだろうな」
「やっぱり! それ禁止ですからね!」
「なんなんだ、急に」


 リズ様は呆れたように俺を見る。
 これは譲れないので、しっかり伝えなければ。


「いきなり全裸はロマンがありません」
「交尾できればいいから下だけ消せばいいのか」
「ぜんっぜん違いますよ!!」


 それもまあ、シチュエーションによっては大いにアリですけど。
 でもそうじゃない、それはもっと経験を積んでからでいい。
 今は基本的なことから! 魔物の価値観には負けないぞ!


「人間には、相手の服を脱がすという行為にもちゃんと意味があるんです」
「そうなのか。で、どういう意味なのだ?」


 改めて言うとなると結構恥ずかしいが、雑誌の受け売りを述べておこう。


「プレゼントの包み紙を開ける時のワクワクとか、ドキドキ感です。服を脱がしている時間も興奮を高めるための儀式というか、とっても価値のある時間なんです! だから俺は一枚一枚リズ様の服を脱がしたいんです!」


 童貞ゆえの想像語りになってしまうのが内心ではしんどい。
 いや、でも間違ってないはずだ。


「ほう……それは私でも感じられる事なのか興味があるな」


 ん? お? まさか?


「ユタカ、故郷の服になれ。私も脱がせてみたい」
「ッシャ!!」


 リズ様の興味を引きだし、見事脱がし合いっこの権利を獲得した。
 俺は心の中でだけにとどめたつもりのガッツポーズを全力でキメていた。

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