【R18】魔王様は勇者に倒されて早く魔界に帰りたいのに勇者が勝手に黒騎士になって護衛してくる

くろなが

文字の大きさ
上 下
31 / 152
【第二章】囚われの魔王様

十四話 勇者ユタカは魔王様の服を脱がせるのか

しおりを挟む
 

 城に帰って来たけど、イーグルに破壊された部分が直っているなんて都合の良い事はない。


「まずは塞ぐぞ」


 天井が大きく崩れていて、雨風をしのぐ事ができないのは大変だ。
 リズ様はすぐさま大掛かりな城全体の修繕に取り掛かる。


「お手伝いする事はありますか?」
「いや、私の魔法でやれるだけやるから今は大丈夫だ」


 そう言うと、リズ様はパラパラと種のような物をばらまいた。
 修繕作業を得意の植物で行うつもりらしい。
 地面が光の絨毯みたいに輝いたかと思うと、蔦や枝がいっせいに城に絡み付いていく。
 みるみる石材と木が融合して、ファンタジーの遺跡みたいになっていく。


「おお~綺麗だな」


 デュラムも感心したように植物の成長を眺めている。
 俺も神秘的な光景に目が離せない。

 やがて天然の屋根が出来上がった。
 晴れた時は、葉の隙間から光が差し込むようになっていて、天気の悪い時には隙間なく木々で塞がれる便利仕様だそうだ。
 魔王城があっという間に生きた城に早変わりである。


「全体の修繕はこれで良いだろう。屋内は重要な部分はフランセーズが守っていたから大丈夫だろうが、細かい修理や改装は各自好きにしろ」


 リズ様はこの流れで、デュラムに約束していた調理場と倉庫以外にも自室を与えた。
 これで魔王と三人の勇者が住まう城になった。
 観光地にでもしたら儲かりそうだな。


「ユタカ」
「はい、なんでしょうかリズ様」


 村人服からいつもの鎧に装備を変更してリズ様に跪く。


「新しい寝室を用意する」
「はあ」
「何を呆けている、お前と共に過ごす場所だ」
「んぁ゛!?」


 めちゃくちゃ変な声が出てしまった。


「ふ、ふ、夫婦の寝室ってやつですね」


 動揺が全く隠せない。声だけでなく顔まで裏返ってしまいそうだ。


「ああ、そうだ。だが共寝は直ぐにでなくていい。ゆっくり話す時間を取りやすいようにしたいのだ」


 自室は互いに今まで通りだけど、寝る時のみ同室という環境を試してみたいということらしい。

 セックスのお誘いということじゃなかった。
 少しだけ残念に思いながらも、単純に相性を見るのは確かに大事だ。
 イビキとか歯ぎしりがうるさいと嫌だよな、わかる。


 壊れていない余った部屋を見て周り、城の中でも広くて、一番奥に位置した部屋を寝室に決めた。

 リズ様によって互いの部屋に、直接寝室に移動できる魔方陣が設置された。
 一瞬で遠い部屋に行けるなんて、魔法マジ万能。

 寝室には、俺が三人並んでゴロゴロできそうなでっかいベッドが用意された。
 贅沢に中央にドーンと置かれて、本当に寝る事がメインの部屋なんだと妙に緊張してしまう。

 ベッド全体が天井からつり下げられた薄い布で覆われてる。
 天蓋付きベッドっていうより形はちょっとサーカスのテントっぽい。
 部屋の中に秘密基地ができたみたいだ。

 外からはシルエット程度しか中の様子が見えないのに、中に入ると、薄いベール越しくらいの鮮明さで部屋が見渡せて驚いた。


「マジックミラー!?」
「ユタカの世界ではそう言うのか。敵襲に気付かないのは困るからな」


 一番無防備な状態ですもんね。


 リズ様が天蓋を点検しているのをベッドに座りながら眺める。
 俺は魔法が使えないので基本役立たずなのだ。

 今のリズ様は、魔王服からマントを外した状態なので体のラインがよく見える。
 髪は長いけど、だからといって女性らしさは皆無だ。
 全体的にスラリとしているけど、肩幅もあるし、厚みもある。
 鍛えられた男の体としか言えない。

 ヤバい、すんごくムラムラしてきた。
 こんなに近くで体を見続けるなんて今までしなかったし。
 ベッドに好きな人と二人という事実が、今更俺を襲ってくる。

 なんか別の事を考えよう、そうだな、魔王服って脱がせるの難しくないか?
 ボタンも多いし、スムーズに脱がす事が出来るのか心配になってきた。
 全然別の事に思考は移動してないが、気になるものは気になる。


「リズ様、その服ってどうやって脱ぐんですか?」
「魔法だが」


 そうでした。
 いやでも待ってくれ、いざセックスってなった時に魔法で衣服が消えるとか情緒が無い。
 脱がす楽しみもセックスの一部だって雑誌で読んだ気がする。


「一応、確認なのですが、今からエッチしますっていう時って、服はどうするんですか?」
「魔法で全て消すだろうな」
「やっぱり! それ禁止ですからね!」
「なんなんだ、急に」


 リズ様は呆れたように俺を見る。
 これは譲れないので、しっかり伝えなければ。


「いきなり全裸はロマンがありません」
「交尾できればいいから下だけ消せばいいのか」
「ぜんっぜん違いますよ!!」


 それもまあ、シチュエーションによっては大いにアリですけど。
 でもそうじゃない、それはもっと経験を積んでからでいい。
 今は基本的なことから! 魔物の価値観には負けないぞ!


「人間には、相手の服を脱がすという行為にもちゃんと意味があるんです」
「そうなのか。で、どういう意味なのだ?」


 改めて言うとなると結構恥ずかしいが、雑誌の受け売りを述べておこう。


「プレゼントの包み紙を開ける時のワクワクとか、ドキドキ感です。服を脱がしている時間も興奮を高めるための儀式というか、とっても価値のある時間なんです! だから俺は一枚一枚リズ様の服を脱がしたいんです!」


 童貞ゆえの想像語りになってしまうのが内心ではしんどい。
 いや、でも間違ってないはずだ。


「ほう……それは私でも感じられる事なのか興味があるな」


 ん? お? まさか?


「ユタカ、故郷の服になれ。私も脱がせてみたい」
「ッシャ!!」


 リズ様の興味を引きだし、見事脱がし合いっこの権利を獲得した。
 俺は心の中でだけにとどめたつもりのガッツポーズを全力でキメていた。

しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

処理中です...