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四話 【魔王】淫魔の王と人間の王子の小さな国*
しおりを挟む我、魔王カレリアンはインキュバスだ。本来なら挿入する側の存在なのだが、エアデールの魔力は直接胎に注がれたいと願ってしまう程に魅力的だった。
「んっ……ふ……んぅ……リアン……リアン」
「は……ぁ……ん、んッ♡」
エアデールのどこかたどたどしい口付けに愛しさが込み上がる。それでもリードしようというエアデールの思いはすぐに舌先に表れ、動きの巧みさが増していく。短時間での成長に我の胸が高鳴った。それに連動したように下半身が疼く。しかもその疼きは後方に集中しており、早く性器をぶち込まれたくてたまらない。これが淫魔の抗えない衝動なのかと驚くばかりだ。
先程だってエアデールの性器を口に含み、愛したいという衝動を止められなかった。我は今まで運よくこの衝動に触れずに済んでいただけなのだと実感する。他の淫魔はエアデールに近付くだけで正気を失うほど影響を受けていた。我は婚約者として近付いてもそういう事はなかった。魅力的な魔力に耐性があるからこそ魔王になれたのだろう。
なのに、今は浅ましいまでにエアデールを求めてしまう。
「リアン、何を考えている?」
我の動きが緩慢になった事を不審に思ったのか、エアデールが我の瞳を覗き込む。正直に言えば『早く抱いて欲しい、我のアナルに性器をハメて欲しい』という答えになってしまう。そんな事を言ってしまっては引かれるだけでは、と頭をよぎったのに、本能は勝手に口を動かした。
「エアデールのおちんぽが欲しくて……♡♡ もう、我慢できないから……♡ 下のお口が寂しくて泣いてるので……ガチガチおちんぽで慰めてください♡♡♡」
うわーーーーーーー!!!!! 本能の馬鹿野郎!!!! 脳内の考えよりも酷い発言だ!!!!
こんなガタイの良い男が媚びた声で甘えても可愛い訳がない。エアデールが固まってるじゃないか。死にたい。それだけでは淫魔の本能は飽き足らずに、身体が勝手に下を全て脱いだ。脚を開き、更に両手で尻肉をも開いて見せる。ドスケベ種族で本当にごめんなさい。ヒクヒクと蠢くアナルからはトロリと愛液が溢れ出ているのがわかった。こんな所が勝手に濡れていて気色悪いとか思われたらどうしよう。しかし、エアデールは嬉しそうに微笑んでいた。
「ふむ……本当だ。こんなに泣かせてしまって大変申し訳ないことをした。リアンを寂しくさせるなんて伴侶として失格だな」
「ひぁッ……アアッ♡♡」
エアデールはしっかり我のテンションに付き合ってくれた。ありがたい。ヌルヌルとした感触を楽しんでいるかのように、エアデールは丁寧に我のアナル周辺を指でなぞった。その動きに我はくすぐったさだけでなく快感も拾い、甲高い声が出てしまう。
「はう……ん♡ あ、あ……くっ♡♡」
「リアンは淫乱で、可愛くて、とても美しいな」
「あふっ……ひぃ♡ んんぅっ!!」
とうとう指が我の中に入って来た。それだけでもイってしまいそうだ。きっともう我はインキュバスと言えないだろう。サキュバス側の喜びを知ってしまったらもう戻る事はできない。
「んはっ♡ あっ、きもちい♡♡ エアデールッ♡ もっと、動かして……♡」
「コラ、それでは罰にならないだろう?」
そう言うとエアデールは指を引き抜いてしまう。そうだった、これは罰なのだ。なのに我はこんなに乱れて、欲望のままエアデールに指示までしてしまうなんて。気落ちしそうになるが、エアデールが優しく我の額にキスをした。
「今度は下のお口でご奉仕させてください、と言うんだ、リアン」
そうだ、我は自分ばかりで、共に気持ち良くなるという考えが無くなっていた。誠心誠意、真心を込めてご奉仕させていただくのだ。ちゃんとエアデールにお願いしなければ。
「エアデールの童貞オチンポ♡♡ この淫乱な処女ケツマンコでご奉仕させてください♡ いっぱい、いーっぱい種付けしていただけるように頑張ります♡♡♡」
もうヤダ我の上のお口! 全然言う事聞かない! 喧嘩売ってるのか? こんな言葉で喜ぶ訳ないだろう!
「そうか……処女か……ふふ、人間でもないのに私のために純血を守っているとは、さすがだ。婚約者として弁えているようだな」
喜んでくれたー!! エアデールの口元がニヤニヤと動いている。人間より遥かに長く生きている魔王が処女とは考えていなかったのかもしれない。我はインキュバスなので処女は当然なのだが。でもまあ、エアデールが嬉しいならそれで良い。
「ああ……♡ この身体は貴方だけのものです……エアデール♡♡」
「私も、お前だけのものだ」
そう言うとエアデールは性器を我のアナルに押し込んだ。初めてでも淫魔の肉体は性器に吸い付き、奥へと誘っていく。
「ひっ……♡ あ、あ、アアッああ!!」
「くっ、締まる……熱い……」
ずっと待ち望んだ肉棒が我の内壁を抉ると、今まで感じた事のない快楽が全身を駆け抜けた。淫魔達が行為に耽る気持ちは本能的には理解していた。しかし、実際経験してみないとここまでの幸福感はわからない。気持ち良いだけでなく、とても満たされるのだ。エアデールと繋がった事で、空腹や寂しさといった全ての隙間が埋まるのを感じた。抜き差しが始まると、その快楽はどんどん増していく。
「エア、デーるッ♡ 気持ちいい♡♡ あぁっ、は、んっ……ひぁッ♡」
「ん……ッ、う……、ああ、気持ち良いな……最高だ……リアン」
我はエアデールの未来を奪ってしまったのに、こんなに幸せで良いのだろうか。強気で自信家だけど、妙な所で不器用なエアデールが好きだ。愛している。それはもう動かしようのない事実だった。それをハッキリ自覚すると、繋がっている部分がもっと気持ち良くなった。
「ああッ……んぁ、ぅうっ♡ んぐ、うあ♡♡ ダメ……なに、か……キてるッ……♡♡♡」
「私もだ、リアン……中に出すぞ」
「はひっ♡♡ いっぱい、欲し……ッ♡」
「ふっ……何度でもしような」
エアデールが我の膝を頭上に押しやると、結合がより深まった。無理矢理開かれた内部は、また知らない快楽を連れて来て我の背中が弓の様に反った。
「んはっ、あ゛あッ♡♡ あぁんッ♡ やぁ……もう、らめぇ……ッ♡♡」
「一緒にイこう、リアン……」
「ん、んッ……あ、ああッ──♡♡ エアデール……んうぅッ……!!!」
「リアン、リアン……ふ、っ……あっ──!」
絶頂を迎えた我とエアデールは互いを強く抱き締めた。きっと、離れたくないという思いが重なったのだ。そう思っていた。
しかし、それは思い違いだとでも言うように、残酷なエアデールの言葉が耳に届いた。
「リアン……やっぱり婚約破棄をしよう」
「……え?」
今の我はこの世の終わりのような顔をしていたと思う。それに気付いたエアデールは慌てて言葉を続けた。
「勘違いしないで欲しい、私はもう一度、ちゃんとリアンに結婚を申し込みたいのだ!!」
「我……と?」
「ああ、私が婚約していたのはカレンという令嬢だ。存在していない者との婚約だったとしても、正式に無効にしないと次にいけまい」
その通りだ。ガド・フィラン家は随分と昔に取り潰されて消えた名前で、我の魔法であるように思わせていただけなのだ。バレてしまった今、その存在を再びなかった事にするつもりだった。エアデールはそれに勘付いていたのだろう。少しだけバツの悪そうな顔をしてエアデールは言った。
「正直、カレンの事も気に入っていたのだ。たとえリアンが作り上げた幻想だったとしても、私はカレンに消えて欲しくないと思っている。正式に手続きすれば、王子に婚約破棄されたカレン・ガド・フィランは記録に残るだろう。そんな不名誉な形でもカレンという存在を残したいだなんて、私は酷い男だろうか?」
リアンとしては別にそれでも構わない。どうせいない者なのだ。エアデールに都合の良い様にして欲しい。だが、きっとカレンならばこう言うだろう。
「あらあら、まるでわたくしに落ち度があるように言うのはやめて頂きたいですわね。こちらから婚約破棄して差し上げますからありがたく受け取ってくださいな。それではお幸せに」
◇◇◇◇◇
誰もが羨む理想の令嬢カレン・ガド・フィランと王太子エアデールの婚約解消が発表された。
風の噂では、エアデールのカレンに対する冷遇に問題があったとかで、ガド・フィラン家が上手く国外へ逃げおおせたと言われている。婚約解消後にカレン・ガド・フィランを見た者はいなかったので、誰も噂以上の事を知り得なかった。
憶測を書いた新聞や物語はよく売れ、カレンの存在は民衆に知れ渡った。
一方エアデールは、カレンに振られたショックによるものなのか、塞ぎ込み、これまで優秀だった能力を発揮できずにいた。早い段階でエアデールは王位継承権を放棄し、療養という形で城を出て僻地で暮らす事になる。エアデールが連れて行った使用人は、ウェルシュとリアンという二人だけだったそうだ。
エアデールとリアンは結婚し、とても仲の良い夫婦だったと言われている。
いつしかその土地には、知る人ぞ知る大きな歓楽街が生まれた。人間とは思えぬ美貌を持つ男女と安価で安全に触れ合えるため、人や物が自然と集まり、エアデールの治める地はとても栄えたという。
めでたしめでたし。
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