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第一章 惨めな日々
1.婚約破棄通告
しおりを挟む「サクラ、お前と梨久君の婚約を破棄する」
淡々と告げる父親の言葉に私は息を呑み、呆然とする。父の後ろに控えた義母と妹が意地の悪い笑みを浮かべ動揺する私の様子を眺めている。
「元々親父同士の口約束がきっかけで結ばれたものだったからな。当人たちが亡くなった今、この婚約を維持する必要はない。先方からもお前との婚約を破棄して杏と再度婚約を結びたいとの申し出があった」
父親は私のことなど気に留める様子もなく一方的に話を進める。義母と妹「杏」の勝ち誇った顔が視界の隅に映る。カッと体温が一気に上昇したように感じられた。
「まぁサクラ、残念だったわね。でもあちらからの申し出を無下にすることはできないわ。私には勿体ないお話ですもの。お父様、私この婚約を謹んでお受けいたしますわ」
父に媚びるような異母妹の言葉を聞きながら、
こみ上げてくる悲しさと悔しさを隠すようにサクラは俯き、唇を噛んだ。
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