幼女のようじょ

えあのの

文字の大きさ
上 下
36 / 39
第二章 冒険のはじまり

35日目 「生きた家と昔のお話」

しおりを挟む

 「この家、生きてるのよ」

 その場にいたみんなが驚いた表情をしているのと対照的にシエルは納得したような顔で口を開いた。

 「聖獣ってことね......」

 「あら、そこまでお見通しだったのね」

 ルキアは淡々とそう答える。

 「いや、はじめから確信していたわけじゃないわ。もしやとは思っていたけど」

 「ねえ、その聖獣っていうのはなんなのかしら」

 マリーはきょとんとした顔でそう尋ねる。

 「それは私から説明させて貰うわ。あなた達、精霊様については知ってるわよね?

 ルキアがそう切り出すと、マリー達は頷いた。

 「私の家はユースフィリアに毎年植林することで精霊の加護を受けているわ!」

 「ああ、ユースフィリアだときっと風の精霊のことね」

 「え、もしかして属性とかあるの??」

 みよは少し食い気味にそう尋ねる。

 「あら、詳しいのね」

 「ええと、昔読んだ本に書いてあって」

 (嘘ではないよね......よくあるファンタジーものに出てくるから! なんて言えないし)

 「そうなのね。それなら話が早いわ。はるか昔の話なのだけど、1000年ほど前に精霊も巻き込んだ大きな戦争があったの。その時に唯一消滅したのが土の精霊。各精霊にはそれぞれ特別な力があって、土の精霊は"物に魂を吹き込む力"を持っていたの」

 「物に魂を吹き込む力?」

 みいは首を傾げている。

 「命を吹き込まれた物達は、自らの意思を持って動くことができるようになった」

 「そして一様に、強力な力を持っていた」

 シエルは真面目な口調でそう付け加える。

 「そうね。そしてそれらは"戦争の道具"になった。形は様々よ。弓やら大砲、薬瓶とかまであったらしいわね」

 「それらは聖獣と呼ばれ、全て土の精霊の命が吹き込まれた物だった。でも、戦争でその全てが力を失ったとそうされているわ」

 シエルはそれを聴いて軽く頷きながら呟いた。

 「そう聞いていたから、驚いたわ。こんなに大きな聖獣がまだ生き残っていたなんて」

 「そう、つまるところこの家が聖獣なのよ。まあ、初めはもっと小さかったのだけどね」

 そう言いながらルキアは壁を撫で、優しい笑みを浮かべる。

 「おそらく武器庫か何かの聖獣だったんでしょうね。初め私が森に来た時は、ただの瓦礫にしか見えなかったわ。それでもなんとなく伝わってきたのよ。この子がなんとなく"助けて"って言っているような気がして」

 「そうだったんだ......」

 (話はなんとなくわかったけど、この家自体が生きてるなんてなんだか本当に信じられないな)

 「改修魔法で復元した後に資材を拾ってきて改築を続けてこうなったってわけね」

 みよ達は改めて屋敷を見渡している。

 「これだけの改修と改築、相当大変だったんだろうなぁ」

 「そうね! それに相当な魔法の才能がないと成し得ないことね。本当にすごいわ!」

 「住まわして貰ってるんだから当然のことよ。ちょっと危ないけれど、その分信頼は厚いから」

 そういうと少しガタガタとシャンデリアが揺れる。喜んでいるのだろうか。

 その揺れに驚いたみいが震えているのをマリーが頭を撫でて落ち着かせている。ちょっと微笑ましいかも。

 「まあ、というわけなのよ。本当にごめんなさいね。お詫びとしてはなんだけど、困ったことがあればいつでもこの森に戻ってきなさい。それくらいのことしかできないから」

 「私も......また会いたいから。用事とかなくても全然戻ってきてね!」

 リリは目をキラキラとさせている。

 「あら、リリは当分忙しいんじゃないかしら?」

 ルキアは少しいじらしく微笑みながらそう呟いた。

 「えー、みよ達が戻ってきたら少しくらい遊んでもいいでしょ?」

 「さあ、どうかしらね」

 「そんなぁ」

 そんな会話をしながら夜は更けていった。



しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?

N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、 生まれる世界が間違っていたって⁇ 自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈ 嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!! そう意気込んで転生したものの、気がついたら……… 大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い! そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!! ーーーーーーーーーーーーーー ※誤字・脱字多いかもしれません💦  (教えて頂けたらめっちゃ助かります…) ※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

神によって転移すると思ったら異世界人に召喚されたので好きに生きます。

SaToo
ファンタジー
仕事帰りの満員電車に揺られていたサト。気がつくと一面が真っ白な空間に。そこで神に異世界に行く話を聞く。異世界に行く準備をしている最中突然体が光だした。そしてサトは異世界へと召喚された。神ではなく、異世界人によって。しかも召喚されたのは2人。面食いの国王はとっととサトを城から追い出した。いや、自ら望んで出て行った。そうして神から授かったチート能力を存分に発揮し、異世界では自分の好きなように暮らしていく。 サトの一言「異世界のイケメン比率高っ。」

人生負け組のスローライフ

雪那 由多
青春
バアちゃんが体調を悪くした! 俺は長男だからバアちゃんの面倒みなくては!! ある日オヤジの叫びと共に突如引越しが決まって隣の家まで車で十分以上、ライフラインはあれどメインは湧水、ぼっとん便所に鍵のない家。 じゃあバアちゃんを頼むなと言って一人単身赴任で東京に帰るオヤジと新しいパート見つけたから実家から通うけど高校受験をすててまで来た俺に高校生なら一人でも大丈夫よね?と言って育児拒否をするオフクロ。  ほぼ病院生活となったバアちゃんが他界してから築百年以上の古民家で一人引きこもる俺の日常。 ―――――――――――――――――――――― 第12回ドリーム小説大賞 読者賞を頂きました! 皆様の応援ありがとうございます! ――――――――――――――――――――――

ラストヒーロー:魔王軍全戦力vs.僕1人

混沌世界終焉
ファンタジー
魔王

処理中です...