今日は特別な日だから

えあのの

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今日は特別な日だから

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 今日は特別な日。しっかりメイクしてお気に入りのワンピースを着てお出かけをする。人目を気にしないで良いように今日は遠くへ出かけるんだ。

 でも電車に乗るまでは用心しなきゃ。帽子を深々と被ってマスクもして足早に駅に向かう。ちょっと怪しいかなって思ったけど、今日は秘密のお出かけだから仕方ないよね。

 改札をくぐり電車に乗ると、何だか視線を感じる。何か変なところがあるのかな。気にしすぎかも。電車に揺られ、華やかな街に着いた。

 さっきのことが気になってお手洗いに行って確かめたけど、何も変なところはなかった。でも、お手洗いから出る時にすれ違った人は何だか驚いていたみたい。

 華やかな街に来た理由は何でしょう。今回の目的はとっても可愛いカフェ! 普段はあんまり来れないけど、今日は特別な日だから。

 街を歩くだけで少しそわそわする。やっぱり足元が少しだけスースーするかも。タイツでも履いてくればよかったかな。

 しばらくするとお目当てのカフェが目の前に現れた。やっぱり混んでるなぁ、お客さんも女の子ばっかり。

 ようやく順番が来ると、いよいよ店の中に入る。

 カランカランという音と共に店内に入ると、そこにはたくさんの可愛いが広がっていた。カフェの装飾も料理も店員さんも、全部が可愛いで埋め尽くされていた。こんなとこに自分がいていいのだろうかと呆けていると、店員さんから声がかかった。

 「何名様でしょうか」

 そう聞かれたので、小さな声で

 「一人です」

 と答えた。そうすると、店員さんは何だか目を丸くしていた。1人でいるのがそんなに珍しいのかなと思っていたら、

 「一名様ですね! そのお洋服とてもお似合いですよ♪」

 と褒めてもらった。突然のことで驚いたけどとても嬉しかった。

 そう言えば少し恥ずかしくて顔はよく見なかったけど、さっきの店員さんの声どこかで聞いたような気がするかも。

 そんなことを席につきながら考えていると、いよいよ可愛いケーキが登場した。

 「お待たせしました! 季節のクリーミーシフォンケーキです」

 そういうとその店員さんは僕の顔を覗き込んできた。

 「あれ? もしかして同じクラスの××
くん?」

 背筋が凍った。しまったという顔をした時にはもう遅かった。

 「やっぱりそうだよね! いや~ちょっとびっくり。××くんってこういう趣味があったんだ」

 終わった。クラスメイトにバレてしまった。明日からどんな顔で登校すればいいのだろう。そんなことを考えていると、

 「めちゃくちゃ可愛くない? お洋服もメイクもちょー好みなんだけど! あ、ごめん。言いふらしたりはしないから。普段と違いすぎて正直びっくりしちゃったけど、正直かなりポテンシャルあると思う、今度一緒に買い物いかない??」

 と言い終わったあと、彼女はハッとした顔をしていた。

 「ほとんど喋った事ないのにグイグイいっちゃってごめん、やっぱり急にそんなの嫌だよね......」

 僕がブンブンと首を振ると、彼女の顔がパーっと明るくなった。

 「いいの?! じゃあこれ私の連絡先。また連絡するね~」

 そういうと彼女は早速といなくなってしまった。

 こうして僕と彼女の奇妙な関係は始まった。
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