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第一章 乙女ゲームの世界に生まれて

22 お茶会は続く

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「それは、この花です」

 ツバキの髪に飾られている、桃色の花を指差す。

「なるほど、可愛らしい花だ。リディア様の髪色と同じなので、リディア様が花になったかの様な花ですね」

 おぉ~さすがイケメン。言われたツバキが真っ赤になっている。

「それにしても、リディア様とヴァイス様は双子なのに、髪色違うのですね?同じ色だから外に出たくないのかと思っておりました」

 あまり俺ばかり喋るのもあれなのでツバキにアイコンタクトを送る。頑張ってくれ。

「は、はい。双子なのですが、母の影響を強くうけましたの」

 さすがツバキ。設定をちゃんと覚えている。俺がいなくても大丈夫そうだ。

「姉様が言うように、姉様は母様、俺は父似なんです。もっとも、俺は姉様と違い魔力量が全くないので、姉様が羨ましいかぎりです。」

「そうか、すまない」

「何を謝るんですか?お二人とも緊張が取れたようなので、俺はシュヴァと散歩でもしてきますね」

 いい雰囲気だし、俺はシュヴァを抱き抱え、席を立つことにした。

「ヴァイスさっ…ヴァイスが行くなら私も散歩に行きますわ」

 ツバキが立ち上がり、俺に目で置いていくなと語りかけてくる。

「それなら僕も…」

「ガルルルル。バゥバウ」

 ガタッとマローネまでもが立ったところで、大人しく俺に抱えられていたシュヴァが急に吠え、首を降っているようにみえる。

「ヒッ。シュヴァ様?」

「僕が嫌われているのかい?」

 恐怖政治の様に驚かせないであげてくれ。ツバキが怯えているし、マローネは落ち込んでいる。

「落ち着いてください。シュヴァは誰にでも吠えますからマローネ様が嫌いとかではないと」

「バゥ!バゥバウ!」

 嫌ってそうだな。

「シュヴァ様がそこまで吠えるのは初めて見ましたわ」

「いや、それは絶対嫌っているだろう」

「ど、どうでしょう?」

きっと今の俺の顔はひきつっているのだろう。ガシッっとシュヴァの口を片手でつかんで、吠えられないようにする。唸ってはいるがいくらかマシであろう。

「シュヴァの機嫌が悪いようなので、やはり2人で散歩に行きますね。お庭をお借りします。歩くだけなので大丈夫ですよ」

 2人の返答を待たずにそそくさと歩き出す。しばらく歩き、声が聞こえないところまで来た。

「シュヴァ、なんで吠えるんだよ」

「あいつ嫌い」

 シュヴァは最近やっと人型じゃなくても滑らかに喋れるようになった。ただし、普通のペットに見せかけたいので喋るなといってあった。いや、喋るなって言ったからってさ、あそこまで吠える?ツバキビビってたよ。

「嫌いって…いい人そうじゃないか?」

「嫌いなのは嫌いなの!」

 今日は駄々っ子モードすごいな。最近はあんまり駄々っ子じゃなかったのに。

「はいはいってどこだここ?」

 適当に歩いていたら、迷子になってしまった。しまった、ここはドリランド家の屋敷だが、庭に向かってだけなら大丈夫だろうと歩いていたのだが…どこだろう?
 扉とかはあるが、勝手に開けるのは失礼だし、うーん。
 ぼーっと突っ立ていたら人とぶつかってしまった。

「すみません」

「すまないってあれ?リディア嬢?マローネはどうした?」

この声と、俺の事を知っている人は…

「ラマール様!?俺はヴァイスです」

「あ?だからリディア嬢だろ?聞いているので知ってるぞ。それにラマールおじさんでいいぞ」

「しー」

「ん?隠れんぼか何かか?」

 父よ。なぜ俺の事をバラしたなら影武者ができた事を報告しない。迂闊すぎるだろ。

「ラマール様ちょっとお話しませんか?」

「アプローチされたら受けないとだな」

 こうして、マローネVSリディア影武者ツバキとラマールVSヴァイスリディア本物のお茶会が始まった。

 どうしてこんな事に…散歩に行くとか言わなきゃ良かった。
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