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15章
穴
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お尻がズキズキと痛い。
オレが落ちた穴は深さ5mほどだろうか、まだ昼間だから陽が届いてあたりの様子がよく見えた。
枯葉が積もってる場所に落ちたようでケガはしてないようだ。
直径2mくらいしかないような穴に出口は見当たらず、落ちた場所からしか出れないようだ。
(古井戸…?)
人工的に作られたであろう石積みは昔に使われてたであろう井戸だと察する。
(水がなくって良かった)
オレは泳げないし、夏とはいえ水にずっと浸かってると体も冷えるだろう。
よっこいしょと立ち上がって上を見る。よじ登れるだろうか?
ゴツゴツとした石の壁に指をねじこみ足も石にかける。右手に力が入らず左手だけでよじ登ろうと体重を移動した途端に落ちた。
何度繰り返しても登るのは無理だった。体力の限界を感じて井戸の底で膝を抱えて座った。
ベタベタする体に蟻が這いあがってくるのが気持ち悪くて何度も払う。
空を見上げても見えるのは木々の葉だけ。叫んで助けを呼んでみたけど誰も来るはずもない。
メモを置いてきた。『おさんぽにいってきます、おひるまでにはかえります』って。
そろそろお昼だろうか?海瑠のお仕事のトラブルはどうなったんだろうか。今頃探してるかもしれない。
忙しいのにまたオレは迷惑をかけるのかと思うと情けなさに涙がにじんできた。
森のどこかもわからないこんな穴の中に助けなんて来るはずもない。携帯電話でも持ち歩いてれば…と思ったがwi-fiのある山荘以外では電波は届いてないんだと思い出した。
散々道に迷ったからいつものお散歩コースからはかなり離れてるだろう。
(もしも誰にも見つけてもらえなかったら) よぎった考えに悪寒が走る。
こんな穴の中で飢え死にするんだろうか?
その前に水が飲めなくて干からびて死んじゃうのかな?
死んでも誰にも見つけてもらえず骨になっちゃうのかな……?
「うぐっ…」
泣いたら水分が減っちゃうのにオレは泣くのを止められなかった。
嫌だ…一人ぼっちで死ぬなんて嫌だよ。
穴の底で丸くなり益体もないことを考え続ける。
オレが死んだら海瑠は父ちゃん母ちゃんに叱られるかな?
捜索隊とかが組まれるのかな?ヘリも飛んじゃう?
山で遭難。失踪。家出。
そしてそのうち忘れられちゃうのかな…
ふと甘い香りが上から降ってくる。
海瑠のコロンだ。落ちるときに手から離れた瓶の蓋が開いてこぼれたのか、安心する大好きな香りが漂う。
「う…っ」
海瑠に会いたかった、ただ抱きしめてほしかった。
オレが落ちた穴は深さ5mほどだろうか、まだ昼間だから陽が届いてあたりの様子がよく見えた。
枯葉が積もってる場所に落ちたようでケガはしてないようだ。
直径2mくらいしかないような穴に出口は見当たらず、落ちた場所からしか出れないようだ。
(古井戸…?)
人工的に作られたであろう石積みは昔に使われてたであろう井戸だと察する。
(水がなくって良かった)
オレは泳げないし、夏とはいえ水にずっと浸かってると体も冷えるだろう。
よっこいしょと立ち上がって上を見る。よじ登れるだろうか?
ゴツゴツとした石の壁に指をねじこみ足も石にかける。右手に力が入らず左手だけでよじ登ろうと体重を移動した途端に落ちた。
何度繰り返しても登るのは無理だった。体力の限界を感じて井戸の底で膝を抱えて座った。
ベタベタする体に蟻が這いあがってくるのが気持ち悪くて何度も払う。
空を見上げても見えるのは木々の葉だけ。叫んで助けを呼んでみたけど誰も来るはずもない。
メモを置いてきた。『おさんぽにいってきます、おひるまでにはかえります』って。
そろそろお昼だろうか?海瑠のお仕事のトラブルはどうなったんだろうか。今頃探してるかもしれない。
忙しいのにまたオレは迷惑をかけるのかと思うと情けなさに涙がにじんできた。
森のどこかもわからないこんな穴の中に助けなんて来るはずもない。携帯電話でも持ち歩いてれば…と思ったがwi-fiのある山荘以外では電波は届いてないんだと思い出した。
散々道に迷ったからいつものお散歩コースからはかなり離れてるだろう。
(もしも誰にも見つけてもらえなかったら) よぎった考えに悪寒が走る。
こんな穴の中で飢え死にするんだろうか?
その前に水が飲めなくて干からびて死んじゃうのかな?
死んでも誰にも見つけてもらえず骨になっちゃうのかな……?
「うぐっ…」
泣いたら水分が減っちゃうのにオレは泣くのを止められなかった。
嫌だ…一人ぼっちで死ぬなんて嫌だよ。
穴の底で丸くなり益体もないことを考え続ける。
オレが死んだら海瑠は父ちゃん母ちゃんに叱られるかな?
捜索隊とかが組まれるのかな?ヘリも飛んじゃう?
山で遭難。失踪。家出。
そしてそのうち忘れられちゃうのかな…
ふと甘い香りが上から降ってくる。
海瑠のコロンだ。落ちるときに手から離れた瓶の蓋が開いてこぼれたのか、安心する大好きな香りが漂う。
「う…っ」
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