悠遠の誓い

angel

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10章

あざ

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わたるのこめかみに青あざができていた。

「こけてぶつけた」というが痛々しくて見てられない。

髪の毛で隠せばイケるやろ。といつも通りバイトをするが本当に転んだだけなんだろうか―――――?

もしかして新しパパとやらが…?そう考えると心配でたまらなかった。
オレはまだ渉の両親を見たことがなかったからだ。


「渉」

「んあ?」

渉の手を取り真剣な顔で言う。

「困ったことがあったらオレに言ってくれ。お前のためだったらいつでも体張るから」

キョトンとしたあとアババババと言いながら手を振り払われる。

「困ってへん!なんも困ってへんから!」

挙動不審になる渉。ますます怪しい…。振り払われた手を再びガシッと握る。

「明日と明後日バイト休みだし。オレ1回お前ん家泊まりたい、いいか?」

「うぇっ!?なんで?」

「お前も今度オレん家泊まればいいじゃん。冬休みの宿題も一緒にやろーぜ」

断らせない。オレは…コイツを新しパパから守るんだ!



一緒に渉の家に帰り簡単な夕飯を作る。今日は鍋焼きうどんだ。
長らく母親と二人暮らしだったという渉は一通りの料理が出来た。


「洗い物メンドイからいつも一皿料理や」って笑う渉だがこの日の鍋焼きうどんもスゴクおいしかった。

「せやろー関西風のつゆもイケるやろが」
以前 うどんのつゆで言い合いになったことがあったのを引き合いに出してくる。悔しいがその通りだった。

一緒に洗い物をして順番にお風呂に入る。
渉はオレがついこの前まで一人で髪を洗えなかったことを知らない。

「お先にお風呂ありがと」
「おー俺も入ってくるわ」

コタツのおいてある部屋の奥の4畳半が渉の部屋だ。狭いからベッドじゃなく布団を敷いて寝てるらしい。
2つ並べて布団を敷くとキツキツだった。

「ショタ髪乾かさんのか?」ドライヤーを手に戻ってきた渉。
「オレ自然乾燥なんだ」
「なんでや、冬やぞ風邪ひくやろ」
「苦手なんだよドライヤー」

頭に巻いたタオルを奪われちょいそこ座れって言われる。

「これなソフト乾燥って機能がある最新式のたっかいヤツなんや」って当てられた風は熱くも冷たくもなくふわりとしたぬるい風でいつもの息が詰まるような嫌さがなかった。

「ほら 気持ちええやろ?ママのやけどな。これ使つこたら髪の毛サラサラなるんやで」

髪に触れる手が優しくて気持ちいい。

(海瑠…オレ ドライヤーも克服できちゃうかもしんない)

勉強も渉に教えることでずいぶんと得意になってきた。人に教えると頭に入りやすいんだって。

(海瑠がいない世界なんて生きていけないとメソメソ毎晩泣いてたのが嘘みたいだ)

「ほな寝よか」

布団に入り電気を消そうとする渉に「あっ…」と言いかけやめた。「ん?」と言いながら電灯のひもを引くと真っ暗にはならず小さなオレンジ色の豆電球が部屋を薄暗く照らした。

『オレの家以外泊まるの禁止ね』あの日の海瑠の声が蘇る。

あっという間に隣で寝息をたてている赤髪を見ると、こめかみの青あざがオレンジのライトに照らされる。呼吸とともに上下する胸。

「オレが守るからな…」そっと手を伸ばし額にかかる髪をなでつけた。


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