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10章
すっぱい
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2学期の期末テストが終わりテスト休みに入ったと同時に、オレと渉は遊園地のバイトを始めた。
遊園地と言っても某なんとかランドみたいな大々的なものじゃなく地元密着の小さな遊園地だ、世間ではどんどんつぶれていってる時代なのにこのアットホームな遊園地は地域のお年寄りと学生のバイトで細々と続いていた。
ここは小学校2年の時に遠足で来たことがあったな。あの時はまだオレのほうがかろうじてアイツより背が高くて、ズボンをはいてるのにアイツは係員のオジサンにおじょーちゃんって呼ばれたっけ。
遠くから走ってきた小さな男の子と女の子が乗車券を出すのを受け取る。男の子はいいけど…女の子の身長は130cmあるか微妙だったから、壁に貼り付けてあるキリンさんの絵の背を測るヤツに背中をつけて立ってもらう。
緊張する女の子、男の子も心配そうにオレを見る。ギリギリ…足りてなかった。
ごめんねと言うと女の子の目にみるみる涙があふれだす。大人が一緒なら乗れるからと親御さんを探すがそれらしい姿はなかった。
困ったな
「よーし、お兄ちゃんが一緒に乗ったるわー」ニコニコと現れた渉が男の子と女の子の手を取り飛行機型の乗り物に乗り込んだ。休憩時間なのか制服のジャンパーを脱いで腰に巻き付けてた。一緒にキャーキャーと叫び喜ぶ3人を見ながら渉の機転に感心する。
レールを2周して戻ってきた飛行機から降りてくる3人みんなニコニコ顔だ。渉に子供たちがありがとー!と言って走って行くと「あーおもろかった」と細い目を更に細くして笑った。
交代のおじいさんが来て、渉と連れ立ってバックヤードに行きベンチに座る。3時間働いて40分休憩のあとまた3時間働く。
「今日は天気よくて良かったな」「ホンマやな」
寒くなってきて花粉症が治まってるのか渉は黒マスクをしてない。細い目でキツイ印象を受けそうなのに、常に笑ってるから子供受けもよかった。
昼飯は家で握ってきたオニギリと水筒に入れてきたお茶。今日の具は梅干しと塩昆布にした。
渉には父ちゃんの工場がうまく行ってないことを話してた。
「ほんならキバって稼がんとな」と言い昼飯も買うんじゃなくオニギリ握って行こうって言いだしたのもコイツだ。
不格好なオレのオニギリと違って渉のは美しい三角で今日の具はツナマヨと牛肉しぐれらしい。
「うまそーだな交換しようぜ」
「はぁ?ありえんし!俺これチョー好きなんやから」
ケチ!うるせ!バカ! 不毛な言い合いをする俺たちの前を通りかかったバイト仲間のおじさんが笑う。
「もーしゃーないなー食べ物の恨みは怖いっちゅうしな」
ムグッ…
オレの口に押し込まれたのは渉の食べかけのオニギリで、牛肉しぐれの美味しさが口の中に広がると同時に
間接キスしちゃった―――――
今まで意識したこともなかったコイツにドキンとした。
赤い前髪が咀嚼に合わせて揺れるのを横目に見る。
心臓がドキドキする。なんでだ。好きなんかじゃないし。ただのオニギリだし。意識するのがおかしいし。
「うまかろう?」
「お、おう」
せやろーと自慢げに言う渉の顔が見れないでいると、オレの手に残ってた梅干し握りを取り上げポイと口に放り込んだ。
「すっぺーーっ!!! と思ったけどそうでもないな。はちみつ梅干しか?」
「う、うん。すっぱいのオレ苦手だから」
梅干しはすっぱないと意味ないやろーという渉は間接キスしたなんてみじんも思ってないみたいだった。
遊園地と言っても某なんとかランドみたいな大々的なものじゃなく地元密着の小さな遊園地だ、世間ではどんどんつぶれていってる時代なのにこのアットホームな遊園地は地域のお年寄りと学生のバイトで細々と続いていた。
ここは小学校2年の時に遠足で来たことがあったな。あの時はまだオレのほうがかろうじてアイツより背が高くて、ズボンをはいてるのにアイツは係員のオジサンにおじょーちゃんって呼ばれたっけ。
遠くから走ってきた小さな男の子と女の子が乗車券を出すのを受け取る。男の子はいいけど…女の子の身長は130cmあるか微妙だったから、壁に貼り付けてあるキリンさんの絵の背を測るヤツに背中をつけて立ってもらう。
緊張する女の子、男の子も心配そうにオレを見る。ギリギリ…足りてなかった。
ごめんねと言うと女の子の目にみるみる涙があふれだす。大人が一緒なら乗れるからと親御さんを探すがそれらしい姿はなかった。
困ったな
「よーし、お兄ちゃんが一緒に乗ったるわー」ニコニコと現れた渉が男の子と女の子の手を取り飛行機型の乗り物に乗り込んだ。休憩時間なのか制服のジャンパーを脱いで腰に巻き付けてた。一緒にキャーキャーと叫び喜ぶ3人を見ながら渉の機転に感心する。
レールを2周して戻ってきた飛行機から降りてくる3人みんなニコニコ顔だ。渉に子供たちがありがとー!と言って走って行くと「あーおもろかった」と細い目を更に細くして笑った。
交代のおじいさんが来て、渉と連れ立ってバックヤードに行きベンチに座る。3時間働いて40分休憩のあとまた3時間働く。
「今日は天気よくて良かったな」「ホンマやな」
寒くなってきて花粉症が治まってるのか渉は黒マスクをしてない。細い目でキツイ印象を受けそうなのに、常に笑ってるから子供受けもよかった。
昼飯は家で握ってきたオニギリと水筒に入れてきたお茶。今日の具は梅干しと塩昆布にした。
渉には父ちゃんの工場がうまく行ってないことを話してた。
「ほんならキバって稼がんとな」と言い昼飯も買うんじゃなくオニギリ握って行こうって言いだしたのもコイツだ。
不格好なオレのオニギリと違って渉のは美しい三角で今日の具はツナマヨと牛肉しぐれらしい。
「うまそーだな交換しようぜ」
「はぁ?ありえんし!俺これチョー好きなんやから」
ケチ!うるせ!バカ! 不毛な言い合いをする俺たちの前を通りかかったバイト仲間のおじさんが笑う。
「もーしゃーないなー食べ物の恨みは怖いっちゅうしな」
ムグッ…
オレの口に押し込まれたのは渉の食べかけのオニギリで、牛肉しぐれの美味しさが口の中に広がると同時に
間接キスしちゃった―――――
今まで意識したこともなかったコイツにドキンとした。
赤い前髪が咀嚼に合わせて揺れるのを横目に見る。
心臓がドキドキする。なんでだ。好きなんかじゃないし。ただのオニギリだし。意識するのがおかしいし。
「うまかろう?」
「お、おう」
せやろーと自慢げに言う渉の顔が見れないでいると、オレの手に残ってた梅干し握りを取り上げポイと口に放り込んだ。
「すっぺーーっ!!! と思ったけどそうでもないな。はちみつ梅干しか?」
「う、うん。すっぱいのオレ苦手だから」
梅干しはすっぱないと意味ないやろーという渉は間接キスしたなんてみじんも思ってないみたいだった。
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