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9章
軍艦島
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寝起きの悪いオレが海瑠より先に目が覚めた。
昨日はキスしながらいつの間にか寝ちゃったんだな。シングルベッド2つのうち壁際の1つにくっついて一緒に眠ってたみたいだ。部屋の隅の電気がついてるから、まだ夜が明けない時間でも顔がウッスラ見える。
乱れた前髪がかかる整った顔。
薄く開いた唇が規則正しい呼吸音を奏でる。
キレイだな…
オレのだったんだ。この10数年ずっとオレだけの海瑠だったんだ。
あとちょっとだけ―――――
外が明るくなるまでオレはじっと見慣れたはずの幼馴染の寝顔を見続けた。
*
海に浮かぶ要塞は圧巻だった。
世界文化遺産『軍艦島』一周20分ほどで歩ける小さなこの島は、石炭を掘るために最盛期には5000人も住んでいたそうだ。崩れた建物、散らばる瓦礫が刻んだ歴史を物語る。
ガイドさんの説明を興味深そうに聞きながら歩く海瑠が、人目もはばからずオレと手を繋いで作られた狭い通路を歩く。水で苦労したんだって、そうだろうなー。感想を話しながら写真を撮りながら歩く。
朝から念入りに塗ってくれた日焼け止め。いつ用意してたんだ?っていう帽子をかぶってるのに暑さが半端ない。
「ガイドさんの説明でただの遺跡に生活してた頃が浮かんで見えたよな~」
船で本土に戻り、調べておいた有名店のカウンターで並んでチャンポンを食べる。オレの器からエビとキヌサヤと人参とキクラゲを取り、かわりにピンク色の蒲鉾を入れてくれる。美味しいな、調べてて良かったね と笑いあう。
湯気の向こうで長めの前髪を耳にかけ麺を啜るのを見る。耳にかける仕草がカッコイイ。こんなに綺麗でカッコイイ人間は芸能人にでもなるべきじゃないかと真剣に言ったことがあったな。興味ないよ って笑う顔もイケメンすぎて、宝の持ち腐れかよ!って突っ込んだよな。
観光をしながら土産物店に入りお土産を物色する。カラフルに彩られたストローのように細い口のガラスを手に取ると店員さんが『それは ぽっぺんって言うんだよ』って教えてくれた。カウンターの後ろから取り出した見本品に店員さんがそっと息を吹き込むと軽やかな音が鳴る。ビードロのおもちゃなんだって。たくさんありすぎて迷う。
店内の奥のほうまで悩みながら歩くと窓辺に置かれたぽっぺんが気になった。
濃い青や薄い青がまだらにちりばめられたソレを手にする。
見る角度によって印象がクルクルと変わるそれは海瑠の瞳みたいだった。これにすると言うと海瑠もその隣にあった色違いを手にした。温かなオレンジとピンクの入り混じったそれは、あの島からの帰りの船で見た夕陽みたいだなって思った。
昨日はキスしながらいつの間にか寝ちゃったんだな。シングルベッド2つのうち壁際の1つにくっついて一緒に眠ってたみたいだ。部屋の隅の電気がついてるから、まだ夜が明けない時間でも顔がウッスラ見える。
乱れた前髪がかかる整った顔。
薄く開いた唇が規則正しい呼吸音を奏でる。
キレイだな…
オレのだったんだ。この10数年ずっとオレだけの海瑠だったんだ。
あとちょっとだけ―――――
外が明るくなるまでオレはじっと見慣れたはずの幼馴染の寝顔を見続けた。
*
海に浮かぶ要塞は圧巻だった。
世界文化遺産『軍艦島』一周20分ほどで歩ける小さなこの島は、石炭を掘るために最盛期には5000人も住んでいたそうだ。崩れた建物、散らばる瓦礫が刻んだ歴史を物語る。
ガイドさんの説明を興味深そうに聞きながら歩く海瑠が、人目もはばからずオレと手を繋いで作られた狭い通路を歩く。水で苦労したんだって、そうだろうなー。感想を話しながら写真を撮りながら歩く。
朝から念入りに塗ってくれた日焼け止め。いつ用意してたんだ?っていう帽子をかぶってるのに暑さが半端ない。
「ガイドさんの説明でただの遺跡に生活してた頃が浮かんで見えたよな~」
船で本土に戻り、調べておいた有名店のカウンターで並んでチャンポンを食べる。オレの器からエビとキヌサヤと人参とキクラゲを取り、かわりにピンク色の蒲鉾を入れてくれる。美味しいな、調べてて良かったね と笑いあう。
湯気の向こうで長めの前髪を耳にかけ麺を啜るのを見る。耳にかける仕草がカッコイイ。こんなに綺麗でカッコイイ人間は芸能人にでもなるべきじゃないかと真剣に言ったことがあったな。興味ないよ って笑う顔もイケメンすぎて、宝の持ち腐れかよ!って突っ込んだよな。
観光をしながら土産物店に入りお土産を物色する。カラフルに彩られたストローのように細い口のガラスを手に取ると店員さんが『それは ぽっぺんって言うんだよ』って教えてくれた。カウンターの後ろから取り出した見本品に店員さんがそっと息を吹き込むと軽やかな音が鳴る。ビードロのおもちゃなんだって。たくさんありすぎて迷う。
店内の奥のほうまで悩みながら歩くと窓辺に置かれたぽっぺんが気になった。
濃い青や薄い青がまだらにちりばめられたソレを手にする。
見る角度によって印象がクルクルと変わるそれは海瑠の瞳みたいだった。これにすると言うと海瑠もその隣にあった色違いを手にした。温かなオレンジとピンクの入り混じったそれは、あの島からの帰りの船で見た夕陽みたいだなって思った。
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