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6章

23 俺の宝物

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 山頂の家から持っていくと決めていたものは櫛と木箱だ。


 突然現れた真っ白な幼体のアルゼ永遠の髪を梳かしていた赤い石が嵌め込まれたこの櫛は、母が結婚する時に母親から譲られたものだった。
 見た目の細工も素晴らしく価値のあるもので、俺の髪を梳かすにはもったいなくて木箱に仕舞っていた。
 この美しい櫛は俺のような醜い毛を梳かすにはふさわしくない。


 けれどアルゼ永遠が現れた時、自然とこの櫛で毛づくろいをして、この宝箱に白銀色に煌めくアルゼ永遠の白い毛を収めていた。

「ふわふわ、こぇあるぜの?」

「そうだ」

 幼体のアルゼ永遠の毛は大人と違って風が吹けば空に舞い上がってしまいそうに軽くて柔らかい。
 櫛で梳かすたびに丸めて、父さんが作ってくれた宝箱と俺が呼んでいた装飾が彫り込まれたの木箱に収めていた。
 
 「こぇ、だいじ。ね」

「ああ、おれの一等大事だ」

 父さん、母さん、アルゼ永遠のすべてが集まった俺の大事な物。
 これが無くなってなくて本当に良かった。



「こちらでお預かりします」

 宰相が手にしていたのは緋色の厚い布で4方には金糸で編まれた装飾が施されている。
 その宰相が手にした布の上に木箱を乗せるとそれを高く掲げ

「命に変えましても無事、王都までお運びいたします」

 と跪いた宰相の後ろには、少し大きめのそれこそ宝箱と呼ぶのにふさわしい箱があり、その左右には俺付きのクウガ族の戦士二人が同じように跪いていた。

 こんな狭い小屋の中で大柄な俺たちがひしめきあってるのがおかしくなって笑ってしまいそうになる。

「ありがとう、とても大事な物なんだ頼んだぞ。でも命を優先しろよ」

「かしこまりました!」


 その後全員に出て行ってもらい、2個しかない部屋にあるもの1つ1つを思い出を確かめるように触ってゆく。

 --------楽しいこともいっぱいあった

 いや、思い出すのは幸せだったことばかりだ。
 なのに胸が痛いのは……





 「永遠とわ様がいつもおっしゃってた特別なカルーペが食べとうございます」

  一人で行きたいところがあったのでラウミに頼んで一芝居打ってもらった。
 それは特別でも何でもない、永遠が集めた花の蜜を煮込んだものを塗っただけのカルーペだが、味は本当にうまかったし、ここでしか咲かない花から取った蜜で作っているからやっぱり特別だ。


 厨房係が持ってきていた食材と、瓶に詰めて保存していた蜜を手に家に入っていく永遠とわの後ろをついていくラウミが一瞬振り返り、すぐに永遠とわの元へと走っていった。



 王都に行く前にどうしても行きたい場所があった。

 一人で行くつもりだったが宰相が俺から離れるわけもなく、の護衛としてグニスタまでもがついてきた。

 こういう不自由にも慣れてきたが、場所が場所名だけに一人で行きたかったなと諦め交じりの苦笑をした。
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