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6章

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 屋敷のほうへと走り去る千早ちはや永遠とわを見て、テルフィエンデが呟く。

千早ちはや殿はリウアン族なのに、これほどのクウガ族の中にいても普通にふるまわれておられる。すごいことです」



 --------そうなのか?

 そういえば以前リウアン族とは自分たちの種族だけで固まり、他族と関わらない臆病な種族だと聞いた。



「なぜ千早ちはやは平気なんだろう」

「それは多分…」顎に手を当てたテルフィエンデが予想外の答えを返してきた


「きっと白の番様の力です」

「力?」

「はい」

 屋敷に向かう足を止め、テルフィエンデと向かい合い話を続ける。


千早ちはや殿は永遠とわ様の近くに長くおられたのではないですか?」

 どのくらいだっただろう?と指折り数えてみる。

「9ムンセほどだろうか、リウアン族が冬眠するまでずっと一緒に暮らしてたらしい」

「やはりそうですか」

 納得したように顎をさするテルフィエンデだが俺には訳が分からない。

「白の番様には虫や動物が捕食されることを恐れもせず近寄ってきますでしょう」

「ああ、困るくらい来るときもあるな。大型獣はさすがに追い払うようにしていたが」

 それは俺も知っている、力というか永遠とわは誰からも愛されるからだと。

久遠くおん様は逆にすべての生き物には畏怖と警戒の対象です。なぜならあまりに強すぎるからです。全生物の中の最強のクウガ族であり、更にそれらを統べる王ですから、さぞや動物に逃げられたのではないですか?」

 苦笑交じりの問いに

「苦労なんてもんじゃない、はるか遠くにいても俺の気配を察して逃げる、それで狩りが下手だと父親に叱られるのだからたまったもんじゃなかった」

 テルフィエンデが珍しく噴き出して笑い、つられて後ろのクウガ族の戦士も笑った。


「それはご災難でございました。しかし永遠とわ様と出会われてからはどうですか?」

 そういえば……

「確かに永遠とわが来てからは変わった。だんだんと生き物との距離が狭まり、ある日俺の掌にチョシの子が乗った時、その命の重みに感動した」

「白の番様からは常に聖なる力が溢れています。それは近くにいればいるほどその力に護られ、同化してゆく」

 ゲルゼルもどきとの闘いで臥せっていた俺に千早ちはやが近づけたのも、リウアンの村で白の番と1番近くで長く暮らしていたからなのか。

 「リウアンの村での扱いも永遠様が来てから変わったのではないですか?」

 確かにそうだ、鳶尾いちはつに追いつかれたときも村人たちは俺を見ても失禁することも座り込むこともなく立ち、しかもかばってくれた。


 白の番にはすべての生き物に愛される力があるとテルフィエンデは説明した。

 「お二人がおられる限り、恐れるものは何もありません。逆におられなかった頃は…」

 テルフィエンデは遠くを見、それ以上のことは言わなかった。



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