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5章
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アルゼが小さな華奢な体に纏うのは、クウガ族に渡された謎の布地で出来た手触りの良い白い上下に分かれた服と、膝下まである皮のようなもので出来た深靴。
「いじめてない?ほんちょ?」
俺の膝の上で大きな白い耳をピンと立て両手を広げて、俺を守ろうと目の前の4人に威嚇する。
本人は怖い顔をしてるつもりだろうが、まんまるの大きな目をしかめても、唇をへの字にしても可愛いだけだ。
「本当でございます。白の番様」
宰相の言葉に気になっていたことを思い出した。
昨日も誰かがそう呼んでいた
「なぜアルゼ…いや、永遠が俺の番だと思った?」
膝の上のアルゼも長期戦の構えか俺に体重を預けてもたれてくる。
「永遠様………」
宰相が瞳を閉じ黙り込む。
部屋にいる全員が宰相に注目しているとユックリと目を開き無言で何度もうなずいた。
「久遠様と永遠様、なんという素晴らしき御名でしょう」
後ろの3人も首がちぎれんばかりに頷く。
「クウガ族の名には意味のある言葉は使われていません。生まれた子を見て黒の王、もしくは宰相が頭に浮かんだ文字を名づけます。お二人のように素晴らしい意味のある言葉を名前にするリウアン族の文化に感服いたしました」
コホンと咳ばらいをするラフに気づいた宰相がハッとした顔をする。
「申し訳ございません。永遠様がなぜ久遠様の番だとわかったのかとのご下問でしたね」
深く頭を下げる宰相が顔を上げ、一つ長い息を吐いた。
「その前に黒の王と番様のお話をしてよろしいでしょうか」
無言で頷く。
「黒の王子が生まれる前後には運命の白い番様が現れます。それはクウガ族とは全く違う、どの種族にも属さない永遠様のような少しルセに似ている姿で、突然、幼い獣体で現れます。それは千年以上続いてきた歴史の中で途切れたことがございません」
突然現れる--------!?
信じられない話だが、言葉をさしはさむことをせず黙って続きを聞くことにした。
「先代の黒の王の番様も永遠様のような真っ白なお姿、大きな黒い瞳に豊かな尻尾でございました。」
思い出したのか宰相の顔が一瞬ゆがみ、瞳に涙が浮かぶ。
「先代の白の番様が出産で亡くなられ、黒の王子が忽然と消え去ったあの前に白い番様が現れることはありませんでした」
アルゼも静かに宰相の話に耳を傾けている。
「それから幾年待とうとも、黒の王子もお生まれにならず白の番様も現れず、これからクウガ族はどうなってしまうのだろうと皆の不安が増していきました」
「ちょっと待ってくれ」
理解できないことが多すぎて俺は宰相の話を遮った。
「はい」
リウアン族の誰もが恐ろしくて見ることができない俺のギラギラと光る瞳と、宰相の落ち着いた焦げ茶色の瞳がぶつかる。
「白の番が突然現れる、それは信じられない。そんな現象が…」
途中まで言いながら、アルゼが俺も耐えられない寒さの厳冬の山頂の俺の寝室になぜいたのかを思い返し押し黙る。
「ほとんどの場合は黒の王の近親者の屋敷内に現れます」
--------アルゼも突然あんな山頂にいた。
--------しかも俺の家に。
--------まさか本当に俺が黒の王とやらなのか?
クテニ族が机に置いた新しい器に手を伸ばしクンの匂いを嗅ぐとガビエの香りがした。
震えそうになる手を温かい器が鎮めてくれた。
一口飲み熱くないことを確認し、そのままアルゼの手に握らせる。
「アルゼは俺が住んでいた山頂の山小屋にいたんだ。全てが凍り付く生き物が生きれるはずがない場所で冬を越したようだった」
「なんと……」
「いじめてない?ほんちょ?」
俺の膝の上で大きな白い耳をピンと立て両手を広げて、俺を守ろうと目の前の4人に威嚇する。
本人は怖い顔をしてるつもりだろうが、まんまるの大きな目をしかめても、唇をへの字にしても可愛いだけだ。
「本当でございます。白の番様」
宰相の言葉に気になっていたことを思い出した。
昨日も誰かがそう呼んでいた
「なぜアルゼ…いや、永遠が俺の番だと思った?」
膝の上のアルゼも長期戦の構えか俺に体重を預けてもたれてくる。
「永遠様………」
宰相が瞳を閉じ黙り込む。
部屋にいる全員が宰相に注目しているとユックリと目を開き無言で何度もうなずいた。
「久遠様と永遠様、なんという素晴らしき御名でしょう」
後ろの3人も首がちぎれんばかりに頷く。
「クウガ族の名には意味のある言葉は使われていません。生まれた子を見て黒の王、もしくは宰相が頭に浮かんだ文字を名づけます。お二人のように素晴らしい意味のある言葉を名前にするリウアン族の文化に感服いたしました」
コホンと咳ばらいをするラフに気づいた宰相がハッとした顔をする。
「申し訳ございません。永遠様がなぜ久遠様の番だとわかったのかとのご下問でしたね」
深く頭を下げる宰相が顔を上げ、一つ長い息を吐いた。
「その前に黒の王と番様のお話をしてよろしいでしょうか」
無言で頷く。
「黒の王子が生まれる前後には運命の白い番様が現れます。それはクウガ族とは全く違う、どの種族にも属さない永遠様のような少しルセに似ている姿で、突然、幼い獣体で現れます。それは千年以上続いてきた歴史の中で途切れたことがございません」
突然現れる--------!?
信じられない話だが、言葉をさしはさむことをせず黙って続きを聞くことにした。
「先代の黒の王の番様も永遠様のような真っ白なお姿、大きな黒い瞳に豊かな尻尾でございました。」
思い出したのか宰相の顔が一瞬ゆがみ、瞳に涙が浮かぶ。
「先代の白の番様が出産で亡くなられ、黒の王子が忽然と消え去ったあの前に白い番様が現れることはありませんでした」
アルゼも静かに宰相の話に耳を傾けている。
「それから幾年待とうとも、黒の王子もお生まれにならず白の番様も現れず、これからクウガ族はどうなってしまうのだろうと皆の不安が増していきました」
「ちょっと待ってくれ」
理解できないことが多すぎて俺は宰相の話を遮った。
「はい」
リウアン族の誰もが恐ろしくて見ることができない俺のギラギラと光る瞳と、宰相の落ち着いた焦げ茶色の瞳がぶつかる。
「白の番が突然現れる、それは信じられない。そんな現象が…」
途中まで言いながら、アルゼが俺も耐えられない寒さの厳冬の山頂の俺の寝室になぜいたのかを思い返し押し黙る。
「ほとんどの場合は黒の王の近親者の屋敷内に現れます」
--------アルゼも突然あんな山頂にいた。
--------しかも俺の家に。
--------まさか本当に俺が黒の王とやらなのか?
クテニ族が机に置いた新しい器に手を伸ばしクンの匂いを嗅ぐとガビエの香りがした。
震えそうになる手を温かい器が鎮めてくれた。
一口飲み熱くないことを確認し、そのままアルゼの手に握らせる。
「アルゼは俺が住んでいた山頂の山小屋にいたんだ。全てが凍り付く生き物が生きれるはずがない場所で冬を越したようだった」
「なんと……」
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