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4章
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「魔の者が後悔なんかしますか!?命を懸けて村を守りますか!?皆さんに問いたい!アイツに何か悪いことをされましたか!???」
静まり返った会場に千早は続ける。
「毎年みんなが冬眠している間にアイツは村の柵の修理や道の整備をしていたのを知っているでしょう?」
誰から命令されるでもなく
「毎年雪の重みで倒れる木が何本もあるはずなのに1つもないのはなぜですか?」
たった一人で
「冬眠から覚めた時、集会所の前に大量の薪があるのはなぜですか?」
感謝の言葉を聞くこともない
会場が千早の言葉に飲まれてゆくのに焦りを感じ鳶尾が発言する。
「存在自体が迷惑だからだ!そのくらいのことで贖いきれるものではない!ここはリウアンの村だ!よそ者は必要ない!!」
「よそ者じゃない!アイツの母は伯母上だ!」
「魔に魅入られよったか未熟者めが!!!!」
ビィイイインと腹の底に響くような咆哮に全員の背筋が凍る。
これぞ王者の資格たるもののもつ威圧。
「薬師も匙を投げた大やけどだったのに、今や跡形一つなく傷がすべて消えたと言うではないか!」
グ…言い返す言葉もない。
本当にひどい怪我だったんだ。腹は裂け、焼けただれた皮膚からは腐臭がしていた。
「魔の者は油断させ我らに取り入ろうとしている。その証拠があの白いアルゼだ」
ルセのことを白いアルゼと呼ぶのは鳶尾だけだ。
「愛らしい姿に変貌させ我らを騙し崩壊させるのが狙いなのだ!」
ザワッ!と人々が荒れだす。
「ルセが…」
「そんなばかな」
「あの子はよいこだ。ただただ可愛くてそんなはずはない」
鳶尾の言に納得できない声が大きくなってゆく
「目を覚ませ!!!!!!」
鳶尾の大声に座の注目が集まる。
「あのような生き物をかつて見たことがあるか!?」
見た瞬間から庇護したくなる
「あれもアルゼと種類は違えど、人々の心を瞬時に魅了し操る魔の者だ」
可愛らしくていつまでも目にしていたくなる
「それこそが魔の者である証!」
論点がずれてきている。今はアルゼについて話していたはずがいつの間にかルセまでもが糾弾の的になってしまっていたことに焦る千早が言い返す。
「ルセは何も知らないただの迷子の子供だ」
「アルゼが攫ってきたのだ!」
この時点で鳶尾の言に矛盾が生じているのを本人は気づいていない。
「ルセはなぜかある日、突然山頂にいたんだ。そして一人で冬を乗り越え、戻ってきたアルゼに見つけられ育てられたと言っている」
千早の言葉に、ルセから話を聞いたことのある老人たちがウンウンと頷く。
「そんなつくり話にまんまと乗せられおって!これだから素性の確かでない出は頭が弱くて困る。」
フンと鼻で笑う鳶尾は千早の出自の事を言い出した。
「4代前までしかたどれないような出自のお前など、この鳶尾と対等に話が出来る立場ではない、引っ込んでおれ!」
前々から鳶尾が重んじている選民思考。
リウアン同士の両親が5代続いてなければ不純物として同列には扱わないと言うそれはある意味危険な思考だった。
勝ち誇ったように言い放った鳶尾の背に1つ2つ言葉がかかる。
「…だとしたら俺ん家もダメだな」
「俺もだ、家系図なんてもんはねぇがな」
それはそうだった家系図なんてものはよほどの地位にあるものか金持ちが虚偽も織り交ぜて作らせたものしか存在しないだろう。
ザワザワとおさまりがつかなくなってきた会場を沈めたのは族長の一言だった。
「アルゼは処分が決まるまで洞穴の牢に幽閉。処分は追って沙汰する--------」
静まり返った会場に千早は続ける。
「毎年みんなが冬眠している間にアイツは村の柵の修理や道の整備をしていたのを知っているでしょう?」
誰から命令されるでもなく
「毎年雪の重みで倒れる木が何本もあるはずなのに1つもないのはなぜですか?」
たった一人で
「冬眠から覚めた時、集会所の前に大量の薪があるのはなぜですか?」
感謝の言葉を聞くこともない
会場が千早の言葉に飲まれてゆくのに焦りを感じ鳶尾が発言する。
「存在自体が迷惑だからだ!そのくらいのことで贖いきれるものではない!ここはリウアンの村だ!よそ者は必要ない!!」
「よそ者じゃない!アイツの母は伯母上だ!」
「魔に魅入られよったか未熟者めが!!!!」
ビィイイインと腹の底に響くような咆哮に全員の背筋が凍る。
これぞ王者の資格たるもののもつ威圧。
「薬師も匙を投げた大やけどだったのに、今や跡形一つなく傷がすべて消えたと言うではないか!」
グ…言い返す言葉もない。
本当にひどい怪我だったんだ。腹は裂け、焼けただれた皮膚からは腐臭がしていた。
「魔の者は油断させ我らに取り入ろうとしている。その証拠があの白いアルゼだ」
ルセのことを白いアルゼと呼ぶのは鳶尾だけだ。
「愛らしい姿に変貌させ我らを騙し崩壊させるのが狙いなのだ!」
ザワッ!と人々が荒れだす。
「ルセが…」
「そんなばかな」
「あの子はよいこだ。ただただ可愛くてそんなはずはない」
鳶尾の言に納得できない声が大きくなってゆく
「目を覚ませ!!!!!!」
鳶尾の大声に座の注目が集まる。
「あのような生き物をかつて見たことがあるか!?」
見た瞬間から庇護したくなる
「あれもアルゼと種類は違えど、人々の心を瞬時に魅了し操る魔の者だ」
可愛らしくていつまでも目にしていたくなる
「それこそが魔の者である証!」
論点がずれてきている。今はアルゼについて話していたはずがいつの間にかルセまでもが糾弾の的になってしまっていたことに焦る千早が言い返す。
「ルセは何も知らないただの迷子の子供だ」
「アルゼが攫ってきたのだ!」
この時点で鳶尾の言に矛盾が生じているのを本人は気づいていない。
「ルセはなぜかある日、突然山頂にいたんだ。そして一人で冬を乗り越え、戻ってきたアルゼに見つけられ育てられたと言っている」
千早の言葉に、ルセから話を聞いたことのある老人たちがウンウンと頷く。
「そんなつくり話にまんまと乗せられおって!これだから素性の確かでない出は頭が弱くて困る。」
フンと鼻で笑う鳶尾は千早の出自の事を言い出した。
「4代前までしかたどれないような出自のお前など、この鳶尾と対等に話が出来る立場ではない、引っ込んでおれ!」
前々から鳶尾が重んじている選民思考。
リウアン同士の両親が5代続いてなければ不純物として同列には扱わないと言うそれはある意味危険な思考だった。
勝ち誇ったように言い放った鳶尾の背に1つ2つ言葉がかかる。
「…だとしたら俺ん家もダメだな」
「俺もだ、家系図なんてもんはねぇがな」
それはそうだった家系図なんてものはよほどの地位にあるものか金持ちが虚偽も織り交ぜて作らせたものしか存在しないだろう。
ザワザワとおさまりがつかなくなってきた会場を沈めたのは族長の一言だった。
「アルゼは処分が決まるまで洞穴の牢に幽閉。処分は追って沙汰する--------」
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