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3章
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--------数か月後
村の中心地の小さな池が湧き出す広場。
ここが族長がアルゼに与えた仕事をする場所だ。
朝食を終えた頃、一人また一人と獣人の子供が連れてこられる。
いわゆる子守の仕事、それがアルゼに与えられた仕事だった。
子守の仕事は普通、手仕事や力仕事が出来なくなった老人の仕事だが、族長はこれをアルゼの仕事に決めた。
見るからに愛くるしいアルゼはあっという間に老人や獣人の子供にも好かれて、仕事と言うよりはただ遊びにここに通っている。
『ルセ、みずあびしよ』
何度、名前はアルゼだと正しても子供たちにとってアルゼとは、黒くて大きくて子供を攫って食べてしまう化け物の名前で、この愛らしい人をアルゼなどと呼ぶことはできない。
『ルセもいっちょ、はいろ?』
茶色い尻尾をフリフリ右からも左からもねだられるのを老婆がニコニコと見ている。
相変わらずオレの着ていたブカブカの上衣の袖を切っただけのものを身に着けているアルゼ。
少しだけ背が伸び白くスラリとした綺麗な足に若い村人たちが落ち着かなくなるからと懇願され、老婆たちが縫ってくれた下衣もはくようになっていた。
この数か月、色んな事があった。
夜に何回も逃げ出し山に帰ろうとしては迷子になり連れ戻された。
口に合わなかった食事も野菜をゆでただけ、焼いただけという簡素な物しか食べないと理解してもらえて一時はやせ細った体も元に戻ってきた。
村で生活し、子供の相手をして老人の話を聞くうちに、普通の生活と言うものを学んでいった。
そうして気づいたオレの境遇。
オレは怖くない優しいと何度説いたところでわかってくれる村人はいなかった。
そうして暮らすうちにアルゼは山に帰りたいと言わなくなった。
たまに山のほうを見ては寂しそうな顔をすることはあったが、村での生活を受け入れ季節は流れ、秋になろうとしていた。
「もっと食わないと冬が越せないぞ」
千早が机の上の食べ物をガツガツと食らいながらアルゼの食べている野菜を見ている。
吹く風が冷たくなってきて村人たちは冬眠の準備におおわらわだ。
アルゼと同じように少し背が伸びた千早に冬眠の仕方を教えてもらった。
冬眠は家ごとに地下室で家族単位で行う。
食品庫も兼ねている地下室に寝具を持ち込み、春が近づくまで深い眠りに入るのだ。
去年の冬はどうしてたんだ?との問いには覚えてないと誤魔化した。
アルゼの1番古い記憶はオレの家でオレが来た時のことだ。
オレが言うには山の家に住み着き、畑に残った野菜の根っこや木の皮を食べて生きていたらしい。
どこから現れたのかなんてアルゼにはわからない。
覚えているのはオレが来てくれたこと。
美味しいごはんをくれて一緒の寝床で眠ったこと。
毎日が楽しくて幸せでずっと続くと思っていた日々。
ふっと薄い笑みが浮かび、その愛らしさに千早の鼓動が上がる。
「そ、そんな細っこい体じゃもたないんだからなっ」
ムンズと掴んだゆでたタエマラカスをアルゼのほうへと差し出す頬が真っ赤に染まっている。
「ありあと」
タエマラカスを受け取りカプッと齧ると、オレが茹でてくれたのと同じ味がした。
村の中心地の小さな池が湧き出す広場。
ここが族長がアルゼに与えた仕事をする場所だ。
朝食を終えた頃、一人また一人と獣人の子供が連れてこられる。
いわゆる子守の仕事、それがアルゼに与えられた仕事だった。
子守の仕事は普通、手仕事や力仕事が出来なくなった老人の仕事だが、族長はこれをアルゼの仕事に決めた。
見るからに愛くるしいアルゼはあっという間に老人や獣人の子供にも好かれて、仕事と言うよりはただ遊びにここに通っている。
『ルセ、みずあびしよ』
何度、名前はアルゼだと正しても子供たちにとってアルゼとは、黒くて大きくて子供を攫って食べてしまう化け物の名前で、この愛らしい人をアルゼなどと呼ぶことはできない。
『ルセもいっちょ、はいろ?』
茶色い尻尾をフリフリ右からも左からもねだられるのを老婆がニコニコと見ている。
相変わらずオレの着ていたブカブカの上衣の袖を切っただけのものを身に着けているアルゼ。
少しだけ背が伸び白くスラリとした綺麗な足に若い村人たちが落ち着かなくなるからと懇願され、老婆たちが縫ってくれた下衣もはくようになっていた。
この数か月、色んな事があった。
夜に何回も逃げ出し山に帰ろうとしては迷子になり連れ戻された。
口に合わなかった食事も野菜をゆでただけ、焼いただけという簡素な物しか食べないと理解してもらえて一時はやせ細った体も元に戻ってきた。
村で生活し、子供の相手をして老人の話を聞くうちに、普通の生活と言うものを学んでいった。
そうして気づいたオレの境遇。
オレは怖くない優しいと何度説いたところでわかってくれる村人はいなかった。
そうして暮らすうちにアルゼは山に帰りたいと言わなくなった。
たまに山のほうを見ては寂しそうな顔をすることはあったが、村での生活を受け入れ季節は流れ、秋になろうとしていた。
「もっと食わないと冬が越せないぞ」
千早が机の上の食べ物をガツガツと食らいながらアルゼの食べている野菜を見ている。
吹く風が冷たくなってきて村人たちは冬眠の準備におおわらわだ。
アルゼと同じように少し背が伸びた千早に冬眠の仕方を教えてもらった。
冬眠は家ごとに地下室で家族単位で行う。
食品庫も兼ねている地下室に寝具を持ち込み、春が近づくまで深い眠りに入るのだ。
去年の冬はどうしてたんだ?との問いには覚えてないと誤魔化した。
アルゼの1番古い記憶はオレの家でオレが来た時のことだ。
オレが言うには山の家に住み着き、畑に残った野菜の根っこや木の皮を食べて生きていたらしい。
どこから現れたのかなんてアルゼにはわからない。
覚えているのはオレが来てくれたこと。
美味しいごはんをくれて一緒の寝床で眠ったこと。
毎日が楽しくて幸せでずっと続くと思っていた日々。
ふっと薄い笑みが浮かび、その愛らしさに千早の鼓動が上がる。
「そ、そんな細っこい体じゃもたないんだからなっ」
ムンズと掴んだゆでたタエマラカスをアルゼのほうへと差し出す頬が真っ赤に染まっている。
「ありあと」
タエマラカスを受け取りカプッと齧ると、オレが茹でてくれたのと同じ味がした。
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