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目が覚めるとボクはまた毛布にくるまれてあのベッドで眠っていた。
ここは温かい…
毛布を手に部屋から出ると狭いキッチンの隅で眠るシグリッドがいた。腕組みをして座るようにして眠るシグリッドはボクに気づかない。その顔には深い皺が刻まれ、苦しいかのように見えた。
釜戸でシュンシュンと湯気をあげる鍋にはいつもの薄いスープがある。
ボクについてきたパウルがシグリッドの顔をなめ起こしてしまった。
(勝手に家から抜け出したことで打たれるかもしれない―――――)
体が硬直し謝りの言葉を発しようにも声が出なかった。
「外は寒かっただろう?火のそばにおいで」 低い声だが恐ろしくはない。
それでもボクが動かずにいるとシグリッドは座っていた椅子を空け、座るように促してきた。
シグリッドが椅子から離れ戸棚から何かを出している。木のカップに何かが注がれると甘い香りが漂ってきた。
「村で少し金が入ったのでな、子供が好きだというショコラテの飲み物というものを買ってみたんだが飲んでくれないか?」
ひげだらけの顔がクシャリとゆがみ、目が細められる。パウルがしっぽをパタパタと振り欲しそうにする。
「パウルはダメだ。これは人間の飲み物だ。お前には骨をもらってきてやったぞ」
ほら と床に放るとパウルは嬉しそうに咥えかじりだした。
ボクは受け取ったカップから漂う甘い匂いにつられて口にする。これは飲んだことがあった。
だが品が悪いのか味が薄くてあまりおいしいとはいえなかった。
そんなボクの様子をニコニコと見るシグリッド。
「今日のスープには鳥の肉を少し入れたからな楽しみにしておくれ」
裾が綻んだ服を着て、お世辞にも豊かとは言い難い生活がわかる。なのにボクのために…
温かいショコラテを飲んだせいかまた眠気が襲ってくる。釜戸の前の椅子でウトウトしているとフワリと抱き上げられるのがわかった。
狭い部屋を移動しベッドまで運んでくれる間、その腕の心地よさに浸る。
(あぁ…なんて大きくて暖かいんだろう)
怖いことなんて1つもなかった。安心できる場所が出来た。いつまでもこの腕の中にいたかった。
この日からボクは何度も何度も寝たフリをしてはベッドまで抱き上げて運んでもらった。
起きてると気づかれないようにダラリと力を抜き、心地よい振動に身を任せる。だけどすぐにベッドに到着してしまう。
シグは……またあのイスで眠るんだろうか?このベッドはシグのベッドだろうに、ボクが占領してるから…?
そっとベッドに降ろされシグの手が離れていこうとした時、その袖口をギュッと握って眠ったふりを続けた。
行かないで…寒いんだ。その温かな腕の中にずっといたい。
いつまでも離さないボクの頭を撫で、その日から一緒のベッドで眠ってくれるようになった。
記憶にはないけれど、昔ボクは母と一緒に眠っていたころがあったのかもしれない。顔の横でなるトクントクンという音が懐かしかった。
ボクの居場所。大事な人の抱っこ。ボクの大好きな…
ここは温かい…
毛布を手に部屋から出ると狭いキッチンの隅で眠るシグリッドがいた。腕組みをして座るようにして眠るシグリッドはボクに気づかない。その顔には深い皺が刻まれ、苦しいかのように見えた。
釜戸でシュンシュンと湯気をあげる鍋にはいつもの薄いスープがある。
ボクについてきたパウルがシグリッドの顔をなめ起こしてしまった。
(勝手に家から抜け出したことで打たれるかもしれない―――――)
体が硬直し謝りの言葉を発しようにも声が出なかった。
「外は寒かっただろう?火のそばにおいで」 低い声だが恐ろしくはない。
それでもボクが動かずにいるとシグリッドは座っていた椅子を空け、座るように促してきた。
シグリッドが椅子から離れ戸棚から何かを出している。木のカップに何かが注がれると甘い香りが漂ってきた。
「村で少し金が入ったのでな、子供が好きだというショコラテの飲み物というものを買ってみたんだが飲んでくれないか?」
ひげだらけの顔がクシャリとゆがみ、目が細められる。パウルがしっぽをパタパタと振り欲しそうにする。
「パウルはダメだ。これは人間の飲み物だ。お前には骨をもらってきてやったぞ」
ほら と床に放るとパウルは嬉しそうに咥えかじりだした。
ボクは受け取ったカップから漂う甘い匂いにつられて口にする。これは飲んだことがあった。
だが品が悪いのか味が薄くてあまりおいしいとはいえなかった。
そんなボクの様子をニコニコと見るシグリッド。
「今日のスープには鳥の肉を少し入れたからな楽しみにしておくれ」
裾が綻んだ服を着て、お世辞にも豊かとは言い難い生活がわかる。なのにボクのために…
温かいショコラテを飲んだせいかまた眠気が襲ってくる。釜戸の前の椅子でウトウトしているとフワリと抱き上げられるのがわかった。
狭い部屋を移動しベッドまで運んでくれる間、その腕の心地よさに浸る。
(あぁ…なんて大きくて暖かいんだろう)
怖いことなんて1つもなかった。安心できる場所が出来た。いつまでもこの腕の中にいたかった。
この日からボクは何度も何度も寝たフリをしてはベッドまで抱き上げて運んでもらった。
起きてると気づかれないようにダラリと力を抜き、心地よい振動に身を任せる。だけどすぐにベッドに到着してしまう。
シグは……またあのイスで眠るんだろうか?このベッドはシグのベッドだろうに、ボクが占領してるから…?
そっとベッドに降ろされシグの手が離れていこうとした時、その袖口をギュッと握って眠ったふりを続けた。
行かないで…寒いんだ。その温かな腕の中にずっといたい。
いつまでも離さないボクの頭を撫で、その日から一緒のベッドで眠ってくれるようになった。
記憶にはないけれど、昔ボクは母と一緒に眠っていたころがあったのかもしれない。顔の横でなるトクントクンという音が懐かしかった。
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