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守るべき弱き者
テオフィル視点
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***テオフィル視点***
誘拐、発見、からの行方不明。ちっぽけなチビのせいで、ジュリアス様の秋季休暇中の後半の公務が吹っ飛んだ。捕まえた犯人は逃走し見つからない。
せっかくジュリアス様が大活躍したのに―――だ。
そしてすべての元凶のチビを私はなぜか今、ジュリアス様のベッドで看病している。
行方不明となったコイツを探し回って憔悴していたジュリアス様の元にやってきたと思ったら、高熱を出して寝込むとは、迷惑甚だしい。
新学期が始まり、生徒総会やら生徒会の仕事やらで忙しいジュリアス様に代わり昼間のこいつの世話を任された。
医師に診察を受けると事件のストレスによる発熱だと、点滴と注射を受けジュリアス様のベッドに寝かされている。
医務室なり病院なり行けば良いのにと思うが、ジュリアス様からチビから目を離すなと言われた。
私の仕事は殿下のお世話なのに―――
熱はなかなか下がらない、寒くてガタガタ震えたかと思うと、身を捩り服を脱ごうとする。暑いのか?
意識が朦朧とするチビに水吸いで水分を与えると、水吸いを持つ私の手を握ってきた。
目の焦点が合わず、どこを見ているかわからない表情だが、掴んだ手の力は思いの外強い。
両手で私の手を握ると、目を閉じ安心したように横たわるチビが…幼き日のジュリアス様と重なる。
初等部入学前の殿下は、活発だがよく熱を出すお子様で、看病していると不安なのか『手を握っててくれ』とねだられた。
チビの小さな白い手。汗が張り付いた額を濡らしたタオルで拭う。
『とって…くるしっ…』苦しげに喉をかきむしる。
首の包帯をはずすと事件の時の枷の痕が見えた。もう包帯は外したというのに、苦しいと喉をかきむしる。手を捕らえ押さえるが暴れるチビ。小さな体で弱っているのに、よくこんな力があるものだ。
仕方がないので両腕を体ごと抱きしめるようにしてベッドに一緒に横たわる。チビは私の胸に顔を寄せると心臓の音を聞くかのように耳を寄せ『シグ…』とつぶやいた。
誰のことだ?殿下以外の男の名だろうか、けしからん。憤慨しているとおとなしくなったチビが、スースーと眠りに落ちた。
その後、部屋に戻ってきた殿下がベッドに横たわる私とチビを見て…こっぴどく叱られた。迷惑なチビはやっぱり嫌いだ。
夜の医師の診察の時でも、あまり熱は下がってなかった。殿下は意識朦朧としているチビに、すりつぶした野菜入りのスープを与えるが吐いてしまう。トイレにも抱き上げ手ずから連れて行かれる甲斐甲斐しさだ。
汗まみれの体を拭くからと部屋から追い出された。
私が幼き日の殿下にして差し上げたことと同じことをされている。同じベッドで夜も眠られたが、うなされるチビのせいであまり眠れていないようだ。
次の日も昼間の看病を任された。少し顔色が戻ったか…?静かに寝息を立てている。
早く治ってもらわねば困る。
氷嚢を取り替えようと額の上から退けるとウッスラと目が開いた。さまよう瞳が私を捉えるとニッコリと微笑み、再び目を閉じた。
天使だ……
熱で潤んだ瞳が、定まらない視線がこの弱々しい生き物の儚げな美しさを増している。熱のせいで私が誰だかわかっていないであろう微笑みだ。熱が下がって正気を取り戻すと、私には決して見れない顔だろうな。
殿下には見せるのであろう。
あのような顔をされると………かわいい、守ってやりたいと思ってしまうな。
昼休みに様子を見に戻ってこられた殿下が、チビの顔色を見て少し安心されスープと薬を与え、私にお礼を言われ授業に戻られた。今日は吐かないようだ、少しは良くなっているのか。
食後、眠っていたチビが起き上がろうとするのが見えた。体を支え起こすとトイレに行くという。
…困った
漏らされても困るので、抱き上げてトイレにつれていき下着をずり下げ座らせる。
軽い……小さい…子供だ。
小用を足す間も体を支えてられないのか上半身が私の方に倒れ込む。幼い股間を手早く拭き、抱き上げると汗でしっとりしていたので着替えさせることにした。
チビの学院専用の夜着は2枚しかなく、洗濯が間に合っていないので困ったがジュリアス様のTシャツを着せよう。
体格差でロングワンピースのようになるのでちょうどよい。温かい湯とタオルを用意し、夜着を脱がせた。
汗でシットリとした真っ白な体を、手早く拭く途中に目に入った背中のコレは…
天使の羽をもいだ痕だ
いや怪我の痕…?このような弱き守るべき者の背に、このような傷があるのを見て私はギュッと抱きしめずにはいられなかった。
着替えさせベッドに横たえると目が開いた。昨日よりは焦点が合っているが、未だ熱は高い。
私の顔を見ると怯えたような光が瞳に走ったかと思うと
『ごめんなさい…』と謝ってきた
ジュリアス様が無理矢理にでもPetit frèreにすると言ったと。
自分ではもう止められそうにないからなんとかしてくれと、高熱で潤んだ瞳で力なく願うチビ。
私は殿下の留学が取りやめになったのを知っていて、留学するからとこいつを騙してPetit frèreを阻止していたというのになぜ謝るのか。
事件後、このチビの父であろうシュライン・ラ・トゥール伯爵を探したが行方不明だという。
長男が伯爵家を取り仕切っているようだが、フェルなんて弟は知らないという。
得体が知れないのは変わらない。
けれど―――
このチビが命より大事だというジュリアス様。
そのジュリアス様の為を思い、今なおPetit frèreを辞退しようともがくコイツを…
もう認めても良いのではないか、と自身に問う。
1番大事なのはジュリアス様の幸せなのだから
誘拐、発見、からの行方不明。ちっぽけなチビのせいで、ジュリアス様の秋季休暇中の後半の公務が吹っ飛んだ。捕まえた犯人は逃走し見つからない。
せっかくジュリアス様が大活躍したのに―――だ。
そしてすべての元凶のチビを私はなぜか今、ジュリアス様のベッドで看病している。
行方不明となったコイツを探し回って憔悴していたジュリアス様の元にやってきたと思ったら、高熱を出して寝込むとは、迷惑甚だしい。
新学期が始まり、生徒総会やら生徒会の仕事やらで忙しいジュリアス様に代わり昼間のこいつの世話を任された。
医師に診察を受けると事件のストレスによる発熱だと、点滴と注射を受けジュリアス様のベッドに寝かされている。
医務室なり病院なり行けば良いのにと思うが、ジュリアス様からチビから目を離すなと言われた。
私の仕事は殿下のお世話なのに―――
熱はなかなか下がらない、寒くてガタガタ震えたかと思うと、身を捩り服を脱ごうとする。暑いのか?
意識が朦朧とするチビに水吸いで水分を与えると、水吸いを持つ私の手を握ってきた。
目の焦点が合わず、どこを見ているかわからない表情だが、掴んだ手の力は思いの外強い。
両手で私の手を握ると、目を閉じ安心したように横たわるチビが…幼き日のジュリアス様と重なる。
初等部入学前の殿下は、活発だがよく熱を出すお子様で、看病していると不安なのか『手を握っててくれ』とねだられた。
チビの小さな白い手。汗が張り付いた額を濡らしたタオルで拭う。
『とって…くるしっ…』苦しげに喉をかきむしる。
首の包帯をはずすと事件の時の枷の痕が見えた。もう包帯は外したというのに、苦しいと喉をかきむしる。手を捕らえ押さえるが暴れるチビ。小さな体で弱っているのに、よくこんな力があるものだ。
仕方がないので両腕を体ごと抱きしめるようにしてベッドに一緒に横たわる。チビは私の胸に顔を寄せると心臓の音を聞くかのように耳を寄せ『シグ…』とつぶやいた。
誰のことだ?殿下以外の男の名だろうか、けしからん。憤慨しているとおとなしくなったチビが、スースーと眠りに落ちた。
その後、部屋に戻ってきた殿下がベッドに横たわる私とチビを見て…こっぴどく叱られた。迷惑なチビはやっぱり嫌いだ。
夜の医師の診察の時でも、あまり熱は下がってなかった。殿下は意識朦朧としているチビに、すりつぶした野菜入りのスープを与えるが吐いてしまう。トイレにも抱き上げ手ずから連れて行かれる甲斐甲斐しさだ。
汗まみれの体を拭くからと部屋から追い出された。
私が幼き日の殿下にして差し上げたことと同じことをされている。同じベッドで夜も眠られたが、うなされるチビのせいであまり眠れていないようだ。
次の日も昼間の看病を任された。少し顔色が戻ったか…?静かに寝息を立てている。
早く治ってもらわねば困る。
氷嚢を取り替えようと額の上から退けるとウッスラと目が開いた。さまよう瞳が私を捉えるとニッコリと微笑み、再び目を閉じた。
天使だ……
熱で潤んだ瞳が、定まらない視線がこの弱々しい生き物の儚げな美しさを増している。熱のせいで私が誰だかわかっていないであろう微笑みだ。熱が下がって正気を取り戻すと、私には決して見れない顔だろうな。
殿下には見せるのであろう。
あのような顔をされると………かわいい、守ってやりたいと思ってしまうな。
昼休みに様子を見に戻ってこられた殿下が、チビの顔色を見て少し安心されスープと薬を与え、私にお礼を言われ授業に戻られた。今日は吐かないようだ、少しは良くなっているのか。
食後、眠っていたチビが起き上がろうとするのが見えた。体を支え起こすとトイレに行くという。
…困った
漏らされても困るので、抱き上げてトイレにつれていき下着をずり下げ座らせる。
軽い……小さい…子供だ。
小用を足す間も体を支えてられないのか上半身が私の方に倒れ込む。幼い股間を手早く拭き、抱き上げると汗でしっとりしていたので着替えさせることにした。
チビの学院専用の夜着は2枚しかなく、洗濯が間に合っていないので困ったがジュリアス様のTシャツを着せよう。
体格差でロングワンピースのようになるのでちょうどよい。温かい湯とタオルを用意し、夜着を脱がせた。
汗でシットリとした真っ白な体を、手早く拭く途中に目に入った背中のコレは…
天使の羽をもいだ痕だ
いや怪我の痕…?このような弱き守るべき者の背に、このような傷があるのを見て私はギュッと抱きしめずにはいられなかった。
着替えさせベッドに横たえると目が開いた。昨日よりは焦点が合っているが、未だ熱は高い。
私の顔を見ると怯えたような光が瞳に走ったかと思うと
『ごめんなさい…』と謝ってきた
ジュリアス様が無理矢理にでもPetit frèreにすると言ったと。
自分ではもう止められそうにないからなんとかしてくれと、高熱で潤んだ瞳で力なく願うチビ。
私は殿下の留学が取りやめになったのを知っていて、留学するからとこいつを騙してPetit frèreを阻止していたというのになぜ謝るのか。
事件後、このチビの父であろうシュライン・ラ・トゥール伯爵を探したが行方不明だという。
長男が伯爵家を取り仕切っているようだが、フェルなんて弟は知らないという。
得体が知れないのは変わらない。
けれど―――
このチビが命より大事だというジュリアス様。
そのジュリアス様の為を思い、今なおPetit frèreを辞退しようともがくコイツを…
もう認めても良いのではないか、と自身に問う。
1番大事なのはジュリアス様の幸せなのだから
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