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シグリッド
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しおりを挟むある朝 目が覚めるとベッドにシグの姿はなく
小屋の外でパウルの吠える声がした
急いでベッドから飛び降り駆け出した
小屋から出るとそこには倒れるシグの大きな体があった
『シグ!シグ!!どうしたのしっかりして!!』
シグの体にはウッスラと雪が積もっていた
(う…)
『シグ! ああ…よかった だいじょうぶ?すぐに家に…』
シグを抱え起こそうとするが小さなフェルにはできなかった
『シグ シグ! 毛布 持ってくるから待ってて!』
消えゆく意識の中で小屋の中に走っていくフェルを見る
(わしがいなくなったら あの子は…
神様…神様がいらっしゃるなら
どうか わしにあと数年 命をください…)
薄れゆく意識
あんな小さな子を
誰も頼る人のない寂しいあの子を置いて
この世を去れというのか
神よ…
(それが無理ならば…
どうか あの子が幸せになれますように…)
毛布を掴んで戻ってきたフェル
『シグ…やだ!
シグ…置いて行かないで…
一人にしないで!!』
クゥウン…
パウルがシグとフェルの顔を心配げに交互に舐める
泣きじゃくり毛布ごと抱きついてくるフェルの頭を撫で
意識混濁したシグは中空を見つめる
その瞳には安らかな安堵が見て取れた
(『そうか…良かった
神様…ありがとうございます……』)
年老いた皺だらけの顔に微笑みを浮かべ
最後の言葉をつぶやいた
シグが動かなくなって3日目
フェルはようやくシグの体に土をかけお墓を作った
『シグ…なんで…
ボク一人でどうしたらいいの…?』
クゥン…
パウルがフェルの手を舐める
パウルを抱きしめベッドで眠った
そのうち食べ物が底を尽き
山羊の乳だけですごした
そんな日々の中
老犬だったパウルが
シグリッドの後を追うように亡くなったーーー
シグのお墓の隣にパウルを埋めた
2つのお墓の間に寝そべり
ボクも死んでしまおうと思った…
(もう誰もボクを待ってない
この世に一人っきりだ)
目を瞑り 毛布を握りしめ降ってくる雪を眺めた
『死ぬ前にもう一度ジェイに会いたかったな…』
首にかけている真っ白な石のネックレスを握りしめた
(『またいつか会える日までお互いにこのネックレスを身に着けていよう』)
深々と降る雪の中
ジェイの思い出を胸に幸せな気分で瞳を閉じたーーーーー
死んだと思ったボクが目を覚ますと
ボクはまたあの森の塔に連れてこられていた
そこには母と暮らした部屋があり懐かしさがこみ上げた
母の世話をしていたシグの妹である老婆との生活
シグとの山の思い出は
握りしめて離さなかったこの毛布と
シグの分厚いガラスのメガネだけ
ボクはその塔で騎士学院入学の春まで過ごした…
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