7 / 149
出会い
2
しおりを挟むこの子はママと召使いの老婆と
この森の中の塔に3人暮らしらしい
時々父親が訪れる以外に訪問客はなく、そういうときは必ず屋敷から外に出され夕刻の鐘が鳴るまで帰ってはいけないのだという
(こんなに幼い子供なのに…)
かわいそうに思い頭をなでると、またこぼれんばかりの天使の笑顔である
母親の病のことを聞くと要領を得ないながらも、魂がこの世とは離れた遠くに行ってしまっているとのこと
生活に支障は無いようだが子供の衣服を見ても そこそこの地方領主の子ではあろうことが見て取れたので
母親の治療にボクがどうこう口を出す問題ではないと判断した
それからボクはちょくちょくこの森を訪れ(侍従には金を握らせ森の外で待たせている)
フェルと楽しい時間をすごした
「ねぇねぇジェイもっと教えて!」
ボクは本名を教えるわけにもいかずジェイとだけ名乗っていた
子供は外界と接触したことがないまるで森の妖精のようだった
自分の名も知らないこの子をアンジュと呼ぶことにした
ボクが教える遊びや遠い国の話に興味津々で
帰る時間になると涙を浮かべながらもニッコリと微笑み「またね」と言う
連れて帰りたい衝動を抑え週に1~2度 たわいない話をしたり遊んだりしていた
半年もたったある日
とうとう抜け出して一人で行動していることが侍従長にバレで侍従は免職
ボクは外出禁止となってしまった
************************
粉雪がフワフワと降り注ぐその丘には両手を高く上げ一心に祈るフェルの姿があった
ジェイが来なくなって1ヶ月ほどフェルは毎日毎日ここで祈っていた
「ママをなおしてください ジェイにまたあわせてください」
羊毛でできたフード付きマントを着ているとはいえ冬の森の中はシンシンと冷え込んでいた
一心に祈るフェルの手をギュッと握る手にハッとし見上げたら
そこには召使いの老婆の姿があった
「もう戻りますよ」
感情のない声でそういい連れ帰られる毎日
あきらめられずに毎日丘に通い続けたある日
丘の上のいつも二人で腰掛けていた木の切り株の上に乳白色の石のネックレスと手紙がそっと置いてあった
手紙をそっと開いてみるとフェルにも理解できる優しい言葉で
『ジェイはもう来られなくなったこと
一緒に過ごせた時間は1番幸せだったと
そしていつかまた会えるようにお揃いのこのネックレスを身につけていよう』
と書いてあった
もう会えないという胸を締め付ける現実と
握っている石が自身の体温のためか暖かく感じられ
ジェイに抱きしめられたような気がして
またいつか会えるためにとの言葉をかみしめ空を仰いだ
これがフェルが今までで1番幸せであった頃の記憶である
0
お気に入りに追加
336
あなたにおすすめの小説
僕が玩具になった理由
Me-ya
BL
🈲R指定🈯
「俺のペットにしてやるよ」
眞司は僕を見下ろしながらそう言った。
🈲R指定🔞
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨
ので、ここで新しく書き直します…。
(他の場所でも、1カ所書いていますが…)
おねしょ癖のせいで恋人のお泊まりを避け続けて不信感持たれて喧嘩しちゃう話
こじらせた処女
BL
網谷凛(あみやりん)には付き合って半年の恋人がいるにもかかわらず、一度もお泊まりをしたことがない。それは彼自身の悩み、おねしょをしてしまうことだった。
ある日の会社帰り、急な大雨で網谷の乗る電車が止まり、帰れなくなってしまう。どうしようかと悩んでいたところに、彼氏である市川由希(いちかわゆき)に鉢合わせる。泊まって行くことを強く勧められてしまい…?
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる