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第5章 エーリス国へ

【46】叔父

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迎賓館で開かれた歓迎パーティは、エーリスの名だたる貴族・政財界の大物が参加しての大々的なものだった。
男女問わず着飾り、なんとかしてオーディンの目にとまろうと躍起になっているが、ことごとく黒服さんたちにはばまれていた。

昼間のショックで早々に退出した両親に代わり、主賓席でオーディンをもてなしているのは叔父のエンディミオンだ。
叔父は父王の年の離れた弟だが、若くして神官を志し王位継承権を捨てている。
アウレリア教の聖地エーリスで次期神官長になること間違いなしの叔父は、父王に匹敵する権力者であることは間違いないが、その容姿がそうは思わせない柔らかな雰囲気を醸し出していた。

30歳とは思えない若々しい容貌、ボクと同じプラチナブロンドの長髪は腰までも伸び豊かに波打っていてシルフのようだと謳われ、ライラックの瞳と白い肌はエーリスの宝と吟遊詩人が歌にするほどだった。

そう、叔父はボクにソックリだった。
嫌、正しくはボクが叔父にソックリだったのだ。

小さい頃から叔父の子ではないかと揶揄され、その度に両親には二人共お祖母様にソックリなだけだよと言われてきた。
実際もしボクが叔父の子だったとしたら叔父が13歳の時の子供という計算になるから誰も本気では言っていない。
けれど成長するにつれ自分でもソックリになってるなぁとは思う。
オーディンと並ぶ叔父は、シルファ製の白銀に輝く神官服を纏って輝くばかりの美しさで人々を魅了していた。

久々に帰国したボクにまとわりつく人々を適当にあしらい、少し離れた席で二人の様子をボーッと見ていたらボクに気安く話しかける声がした。

「よっ、おかえり元気だったか?」

数少ないボクの学友のギデオンが、隣に椅子を持ってきて座った。
過保護な両親によって学校に行かせてもらえなかったボクは、宮殿内で3人の貴族の師弟とともに勉学をしていた。
2年会ってないだけでこんなに変わるのかとビックリするくらい男らしく成長した幼馴染がそこにいた。

「ギィ久しぶり、見違えちゃってスグにはわからなかったよ」

「それはこっちのセリフだってーの。はぁ…可愛かったシィはどこにいっちゃったんだよ」

可愛いってのもやだけど、可愛くなくなったってのもやだなと口をとがらせてたら、人差し指で唇を押さえられた。

「相変わらずだなそのクセ。やっぱりシィだ」

昔そのままの笑顔でニコニコと笑うギィ。離れていた時間があっという間に消え去っていった。



いつまでいられるのか、シアーズはどうだ、とかたわいない話で盛り上がる。
ハッキリしないけど、まぁ2週間位かなと答えると、ギデオンが複雑そうな顔をした。

「仲良くやってるみたいで安心したよ」

含みをもたせた言い方が引っかかり何の事かと問い詰めると、人差し指を曲げクイクイと手招きされる。
顔を寄せると内緒話のように耳元で囁かれた。


その内容の信じられなさに愕然としたボクがオーディンの方を見ると、体の奥底まで凍えるかのような氷の眼差しとぶつかった。

「ヤバッ…とにかく今の話は聞かなかったことにしてくれな」

そう言ってギデオンはそそくさと自分の席に戻っていった。
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