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第1章 シルヴァリオン

【14】 お色気ムンムンの女保険医さんキボンヌ

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寂しい… オーディンのことばかり思い出す。
広い温泉に入っててもオーディンがいつも座ってた場所をつい見てしまう。

前にいたメイドさんや使用人の人はいなくなってしまって、今ボクの周りには黒服さんしかいない。
(一人の食事ってこんなに美味しくないんだ)
黒服さんに一緒に食べようと誘ってみても当然断られるし雑談もしてくれない。

眠る前、コッソリとオーディンの寝室に入ってみた。
きれいに整えられたベッドは主の長い不在を現してるようだった。

寝転んでみたらオーディンの匂いがした。
「オーディンのバカ…」
もう会えないのかな。
いっぱいの【タカハシサン】を見せてくれて変装して一緒に門兵さんの交代式を見たことや、手づかみで食べる民族料理や楽しかったことを思い出す。
(楽しかったのにな…)
頭に浮かぶのは、あの夜の困り顔のオーディン。


ボクはこの日、そのままオーディンのベッドで眠った。






次の日の昼休み、食堂の昨日の席で食事をした。
昨日の先輩が現れることもなく今日もボッチ飯を食べた。

食堂の生徒の会話にオーディンの名前が出たので、聞き耳を立てていると久しぶりの登校だとか言ってた。
(オーディンが学園に来てるの?)
急いでお昼ごはんを食べる部屋に行ってみたけどいない。

意を決して生徒会室に行ってみる。ノックをして入るとオーディンが生徒会の人と話をしていた。
ボクを見つけるといつもの艶やかな笑みを浮かべ「シルヴィ」って呼んでくれた。

(ああオーディンの声だ)

駆け寄り、思い切って「どうして返ってこないの?」と聞いてみると、『何かと政治のほうが忙しくてね』 だって




嘘だ―――




こみ上げるものを飲み下す、嘘だ、嘘だ、嘘つき。




目も眩むほど美しい微笑みを浮かべるオーディン。
ボクが断ったから帰ってこないんでしょ?
これからもずっと帰ってこないの?
ボクはこれからも、ずっと一人なの?

もう…元には戻れないの………?





もういいや…




「ボク…皇子宮を出て叔母様の所に帰るね」そう言って生徒会室を飛び出した。


廊下を滅茶苦茶に走った、ぶつかった生徒が文句を言うのが聞こえるけど関係ない。



(嫌いだ―――オーディンなんて大っ嫌い!)









午後の授業開始のベルが鳴る。
授業になんて出る気分じゃないけど、荷物は教室にあるから帰れない。
どうしようかと廊下を歩いてたら医務室があった。

(ここで放課後まで寝かせてもらおう)

医務室に入ると、お色気ムンムンの女保険医さん……なんているわけもなく、デップリと太った中年の男性保険医さんがいた。
白衣の袖からは手の甲までビッシリと生えてる黒い腕毛が見えた。

(うっ…苦手なタイプかもしれない)

どうしたの?と聞かれ咄嗟に虫刺されのことを言ってしまった。虫刺され程度では午後中ベッドにいさせてもらえそうにないのに。
ベッドに腰掛けてと言われ言うとおりにする。上着を脱ぎ腕の赤い痕を見せるとウンウンと何かわかったような顔をした。
この世界に来てから、美形ばかり見てたせいか(キモデブだけどちゃんとお医者さんなんだな)と失礼なことを考えてしまった。

戸棚からシロップのような薬を取り出したキモデブが「アレルギー薬だからと」飲むように言ってくる。
ピンク色のそれは甘くて美味しかった。
「あと塗り薬もあるからね塗ってあげるね」とニタニタした顔で寄ってくるから
「塗り薬は持ってるからいいです」と断ろうとした時、ボクの右手は小刻みに震えていた。

え…?

左手も見ると震えている(なに、これ…?)薬によるアナフィラキシーショック?
「あ…ぁ…」口がうまく回らない。
キモデブにトンと肩を押されボクがベッドに倒れ込むと、手慣れた動きでネクタイをほどいてきた。
「見ない顔だけど、かわいいねぇ食べちゃおうかな」なんて言われて背筋が凍る。
手足に力が入らない、ネクタイがはずされシャツもはだけられる。

「…ぁ、…っやぁ…め」

「ここにもあるね、あ!ここもだ」腰骨の辺りや背中を撫でる指が気持ち悪い。
ズボンのベルトを外し下着ごとずり下げられた。
(あの薬―――) キモデブは最初から治療する気なんてなかったんだと、気づくと同時に涙が溢れ出た。

「いやらしいね…こんなに痕つけて、太ももにもあるね」

ボクを赤ちゃんのおむつ替えのような格好にして、自分でも見たことがない場所を見られている。

ヤダ…!ヤダヤダ、やだヤダ、イヤダ!

(おいこら!神!見てるんだろ!?
 王になる前にこんなキモデブにやられるとか、ルール違反じゃないのか!?)

キモデブはボクの震える足を、片方抱えあげて内ももを舐めてきた。

ゾワゾワッ―――全身が気持ち悪さで総毛立つ。

「ちょっと内診するから、力抜いててね~」



わざとらしく自分の指を舐めた後、キモデブの中指がユックリとボクの後孔に差し入れられた。

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