魔法使いの夢

これから始まる夢物語

夢に出会って。

やりたいことを見つけて。

上手くいかなくて。

向いてないくて。

でも、それは世界を照らす光だった。

世界を彩る色だった。

「ここは…」

水の中から体を起こす。

見渡す限りの青あお、蒼あお、碧あお。

海のように末広がりな大地の
あちらこちらに瓦礫が積み重なっている。

終わったらしい。この世界はようやく終わったらしい。

排水管でも壊れたのか地上は水に溢れ
空はどこまでも澄み渡っている。

地平線が分からない。
どこからが海で、どこからが空なのだろうか。

呆けていると後ろから猫の小さな声が聞こえた。

振り返ると子猫がいた。この子の視線の先には
レンガの下敷きになってる黒猫の姿があった。

ここにもヒーローがいた。

「お前もくるか？」

子猫を抱き上げながら、前を向く。

どこまでも続く世界で
俺たちは空の青海の青にも染まらない。

寂しくないと言ったら、きっと嘘になる。

でも、手も足も動くから。
この胸が『歩け』と内側から脈を打つから。

「行こうか、相棒」

自分の影の中へ、１歩踏み出した。

あの日無くした俺の影は今
水に沈む線路のようにどこまでも前に長く伸びている。