16 / 20
魔法使いの夢
しおりを挟む
泣きじゃくる耳の長い影がいた。
探していた影は、目と鼻の先にいる。
飛び越えては行けない崖の向こう側。
俺の跳躍力では、届かない距離。
『今行く!』と声を掛けても
『来ないで!』と叫ばれる始末。
俺がお前に何をしたのか?
今なら十二分に理解できる。
というよりも、理解させられた。
「嫌いだ」
終わらない世界。始まらない世界。
終わり切れなかった世界。
その昔、正義のヒーローのような魔法使いに
成りたかった男の子がいた。
魔法と言っても別にエクスペクトなパトローナム的なメルヘンなものじゃなく、言葉という力を借りて、多くの人に勇気と元気を与えられたら良かったのだ。
男の子はひたすらに走り続けた。
誰かの願う『誰か』に成ろうと。
こぼれ落ちてしまう心を
救い上げられる心に成ろうと。
「大っ嫌いだ」
中途半端な世界も。泣き虫も。
呑気な猫も。どいつもこいつも。
こんな世界を作った俺自身も。
人が死んだんだ。
1歩を踏み出す勇気のつもりだった。
でも、俺が押した背中は崖へ落ちた。
『思う通りにしてみたらいい』
その言葉の翌日に、その子は飛び降りた。
ビルから。
誰かを救えた気でいた。
何かを出来た気でいた。
でも、俺には何も為せていなかった。何も。
探していた影は、目と鼻の先にいる。
飛び越えては行けない崖の向こう側。
俺の跳躍力では、届かない距離。
『今行く!』と声を掛けても
『来ないで!』と叫ばれる始末。
俺がお前に何をしたのか?
今なら十二分に理解できる。
というよりも、理解させられた。
「嫌いだ」
終わらない世界。始まらない世界。
終わり切れなかった世界。
その昔、正義のヒーローのような魔法使いに
成りたかった男の子がいた。
魔法と言っても別にエクスペクトなパトローナム的なメルヘンなものじゃなく、言葉という力を借りて、多くの人に勇気と元気を与えられたら良かったのだ。
男の子はひたすらに走り続けた。
誰かの願う『誰か』に成ろうと。
こぼれ落ちてしまう心を
救い上げられる心に成ろうと。
「大っ嫌いだ」
中途半端な世界も。泣き虫も。
呑気な猫も。どいつもこいつも。
こんな世界を作った俺自身も。
人が死んだんだ。
1歩を踏み出す勇気のつもりだった。
でも、俺が押した背中は崖へ落ちた。
『思う通りにしてみたらいい』
その言葉の翌日に、その子は飛び降りた。
ビルから。
誰かを救えた気でいた。
何かを出来た気でいた。
でも、俺には何も為せていなかった。何も。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
複雑で単純なこと
すずねこ脚本リスト
ファンタジー
高校の通学中にふと書き留めた物語を手直ししました。
気づいた時からひとりぼっちな男の子。
部屋から出ることを許されず、日の目を見ることも認められなかった。
必死に扉を叩いても、必死に叫び続けても
誰も救い出してはくれない世界。
ここはそういう場所。
誰も彼を見てやしない。

ひとりぼっちのロボット/フリー台本
凩とぬ
ファンタジー
ゆったりと呼んでください。
どなたでも朗読OKです。
改変/自作発言は禁止です。
【ひとりぼっちのロボット】
作者名:凩とぬ
とできる限りご記入お願いします。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【ショートショート】11/22(いい夫婦の日)のおはなし
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
◆こちらは付き合っているカップル、同棲カップルやこれから結婚するカップル、夫婦など、幸せな気持ちになれる作品をまとめてみました。
普通に読んで頂いても癒される作品になっています。
声劇用だと1分半〜5分ほど、黙読だと1分〜3分ほどで読みきれる作品です。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる