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錻の握る夢
しおりを挟む雨が降り注ぐ音がする。
でも、音がするだけ。
ワイシャツが張り付く気配も
靴が浸水している感覚もない。
獅子と別れて幾許か彷徨っていたら
そんな騒がしい世界に迷い込んでいた。
右も左も北も南も分からずに徘徊していたところを
寝たきりの錻に声をかけられて、今現在に至る。
「なるほどね~」
何も見えない世界で横たわって
何も無い空間を漠然と眺めている。
錻と同じように。
気になったんだ、彼が見ている世界が。
大きな斧を握り締めたまま
動けなくなった彼の世界が。
この錻は木こりだったらしい。
増えすぎた錻たちは
住む土地もなく、家を建てる木材もなかった。
だから、彼はここ周辺の木々を伐採していたという。
伐採され尽くしたから何も無いのか。
そもそも俺には見えていないのか。
「分からないなぁ」
彼が雨に打たれ続けて『錆び付いた』理由も。
だって、錻は錆びない。
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