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獅子の歩む夢
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虚空の広がる真っ只中で
ソイツは確かに何かを拾って歩いている。
俺には見えない何か。でも、確かにある何か。
咥えた広敷を下ろしは、拾い上げ
布に乗せて、再び広敷を咥えて歩く。
黒猫を見失って久しく、俺はそんな獅子を見つけた。
幾度、戦場を乗り越えてきたのだろうか。
彼の者の姿に、学生の頃観た戦争物の
"老いぼれた兵士"を思い出した。
くたびれたたてがみ、やつれた頬
顔は煤まみれで肢体は泥だらけ、何とも憐れな姿。
「おい、大丈夫か」
ライオンが倒れる。足を滑らせたのか、態勢を崩すものだから慌てて駆け寄ってしまった。
肩が裂ける。
肉が内側から捲りあげられるような痛みが走った。
獅子に噛まれたのだ。
安易に近づくから、ライオンが牙を剥いた。
息は荒く、か細くとも、獣は獣。
彼は立ち上がろうと藻掻く。
何かに駆られるように。何かに追われるように。
お前はどうして、そこまで……。
血を流す彼の左脚を見つめながら俺は思った。
ソイツは確かに何かを拾って歩いている。
俺には見えない何か。でも、確かにある何か。
咥えた広敷を下ろしは、拾い上げ
布に乗せて、再び広敷を咥えて歩く。
黒猫を見失って久しく、俺はそんな獅子を見つけた。
幾度、戦場を乗り越えてきたのだろうか。
彼の者の姿に、学生の頃観た戦争物の
"老いぼれた兵士"を思い出した。
くたびれたたてがみ、やつれた頬
顔は煤まみれで肢体は泥だらけ、何とも憐れな姿。
「おい、大丈夫か」
ライオンが倒れる。足を滑らせたのか、態勢を崩すものだから慌てて駆け寄ってしまった。
肩が裂ける。
肉が内側から捲りあげられるような痛みが走った。
獅子に噛まれたのだ。
安易に近づくから、ライオンが牙を剥いた。
息は荒く、か細くとも、獣は獣。
彼は立ち上がろうと藻掻く。
何かに駆られるように。何かに追われるように。
お前はどうして、そこまで……。
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