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魔法使いバトル編

43 試合の行方

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私たちは遂に魔法使いバトルの決勝戦に進出していた。


前回の試合では私の見せ場がなく正直物足りない。
もっと私も活躍したい!


試合特有のハイテンションのせいか、何なのかは分からないが、私は無性に活躍したい衝動に駆られていた。

恐らくリドに敵を打つみたいなことを誓った手前、レイだけに良いとこを取られるのが何となく嫌だったんだと思う。




「それでは決勝戦、開始!」


監督の先生の声で試合がスタートした。



するといきなりスティーブ君が炎の柱みたいな魔法を飛ばしてきた!!

なんだこれー!!
超上級魔法じゃん!!

前言撤回。
私は助かればいいやと決意をあっさり翻した。

いやー! 神様、可哀想な私を助けてください!

最早神にすがり始めた私を何やら地面に書き終えたらしきレイが書いたばかりの円の中に私を押して入れてくれた。

その直後にスティーブ君が放った炎が目の前で消滅した。
どうやら魔方陣の効果で打ち消したらしい。

ありがとう!
流石レイさまです!

気づくと私は涙目でレイを拝んでいた。
レイが物凄く尊いお方に見える。まあ、実際に尊いお方ですけど……。


呑気に考え事をしている間にもスティーブ君はどんどん魔法を飛ばしてきている。

でも私にはレイの魔方陣があるから平気だもんねー、えへへ。


ちょっと私は調子に乗りすぎていた。

レイは難しい顔で何か考えている。
次あたりで決着が着くかなとか呑気に考えていたら、首と腰に手が回されて魔方陣から引きずり出された。


「きゃっ!」


しまった!
私としたことが従者がいたことを忘れていた!
それにこの魔方陣、普通に人間は通すやつだった!!
私のバカーー!!!

後悔あとをたたずとはこの事で私は何とか抜け出そうともがいたが相手の力が強く、逃れられない。

どうしよう……。


「レイ……。」


気づくとレイの名前を呼んでいた。

でも考えてみたら私が油断して勝手に捕まったんだから自業自得だよね……。

いきなり首に冷気を感じてビクッとする。
もしかしてこの人私の首を氷か何かで斬るつもりなんじゃ……。


「タイムタイム!殺しはダメ!!」


慌てて拘束している従者に言ったけど、冷たい目で見られただけだった。

ひぇー。恐い。
これ結構真面目に命の危機だ。


私が覚悟を決めて反撃しようとしたその時、大人しかったレイがいきなり従者の顔付近で風を発生させた。
いや、風なんて表現生ぬるい。突風だ。

私は従者との身長差のお陰で無事だ。

これじゃあ魔法を使うために頭で魔法を想像することも出来ず、私に攻撃も出来ない。

レイはこんな私を助けようとしてくれているのだ。
なんていい子!


いつの間にか緩んでいた腕から解放されて、気づけばレイに抱き締められていた。


「アイリーン、これでもう大丈夫だ。」

「ごめん、レイ。結局私が足手まといになっちゃって……。」

「いいんだ。俺だってアイリーンを守りたかったんだからな?」

「う、うん。」



なんだかいつも以上にレイがかっこよく見えて顔が顔が熱くなる。

どうしよう。これ熱とかじゃないよね?
こんな顔、レイに見られたくないよ。

しかしそういうときに限って見られてしまうもののようで、レイが抱き締めていた腕をほどいて私の頬にそっと手を添えて覗き込んできた。


「大丈夫か?顔に傷とかできてないよな。俺が不甲斐ないばかりにアイリーンをこんな目にあわせてしまった……。」


何いってるの?
レイは何も悪くないのに……。


「悪いのは私だよ。こんなのでもレイより年上で頼られなくちゃいけない存在なのに、任せっきりにして……。」

「そんなことはない!!それに俺は年下だけどアイリーンの前では格好つけて好きになってもらいたいし、ドキドキさせたい。もっと俺を頼れよ。」


そう言ってレイは頬に触れていない方の手で私の顎を掴んで目を合わせてきた。

なっ、なんなのこの俺様っぽい態度は!!
急に色気で迫らないで!

もういっぺんに甘い空気を吸いすぎて頭がクラクラする。


そんな私の様子を見てレイはふっと余裕の笑みを浮かべている。

何なのよー!
これじゃあどっちが年上かわからないじゃない!






あれ?そう言えばスティーブ君とその従者はいつの間に倒されたんだろう?

私は既に目の前で気絶している二人を見て呑気にそんなことを考えていた。

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