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魔法使いバトル編

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「でも、王立魔法学院の生徒であるレイが団長って大丈夫なの?ほら、剣術使えないといけないし、他の騎士学校出身の人間の反発とかもありそうだし……。」

「剣術の方は大丈夫だ。俺は昔からお祖父様に剣術を習っていたからな。」

「そのお祖父様って何者なの?!」

「ああ、俺のお祖父様は前騎士団長なんだ。それがまたとにかく厳しい人でな……。それより、ほら、これで二番目の心配事も解決だ!まさか前騎士団長にして現在は騎士団のお目付け役を勤めている人の孫に対してあからさまに反発したりしないさ。」

「そっか……。レイは私に嫌われないか心配してたみたいだけど私の方がよっぽどレイに嫌われないか心配だよ。」

「なんでだ?」

「…………だって、レイは誰から見てもものすごくイケメンだし、頭はいいし、おまけに将来騎士団の団長になる超エリートでしょ?これから、ううん。今でも女の子がほっとかないよ。それなのに、よりによってこんな年上で可愛くもない、何の取り柄もない女と結婚しようとしているなんて、私からすれば信じられないよ!」

「泣くな、アイリーン。」


レイはそう言うと、私を優しく抱き締めて背中を擦ってくれた。

どうやら私は気づかぬうちに泣いていたようだ。
レイの前で泣くなんて恥ずかしすぎる。

気まずくて、レイに顔を合わせられないと考えた結果……みレイの胸に顔を埋めることにした。


「俺は世界で一番アイリーンのことを愛している自信がある。それはもしアイリーンが醜い顔をしていたり、今よりも頭が悪かったりしたとしても変わることがない。俺は5年前のあの夜会の日、誰もが俺の足を引っ張ろうとする汚い世界で唯一、俺を助けてくれた心優しい少女に恋をしたんだ。それは今でも変わってない。まあ、今はわりと面倒くさがりなところがあるってことにも気づいてしまったけどな?」


レイの私を抱き締める腕に力がこもったことから本心を言ってくれているのだとわかった。


「私がレイを助けたって、あのレイが言い過ぎちゃってそれをフォローしようとしたあれ?」

「そうだ。あのときアイリーンは気づいていなかったかもしれないが、見ていた大人たちはこれ幸いと俺のことを潰せないか考えて誰も俺や泣いている子供たちを手助けしようとしなかった。幼い子供相手に卑怯だよな。俺がどんなにあの時絶望したことか。まあ、俺も最悪な話、泣かせたことに関しては将来の交遊関係に支障をきたすかもなとか考えてた部分はあったけどな。」

「そうだったんだ……。あんなことで小さかったレイを救えていたならそれはすごく嬉しいことだね。私もあの時、あの少年と約束したことは覚えていたよ?」

「え?嘘だろ?!」

「本当だよ。あの時レイが告白してくれたことはずっと私の励みになってた。当時、私は同年代の子達の中でも少し浮いた存在でね?他の子は遊んでいるのに、私は一人くらい監視役がいないと遊びが白熱したときに止める人がいないだろうとか余計なことを考えちゃって遊びに参加できない。そんな子だった。」

「へえ。アイリーンが。でもそれもアイリーンらしいな。」

「今ではそれが自分だって割りきれてるんだけと、その時は一緒に遊んでいた子供に余計なことをしようとするなって怒られちゃって。レイたちを夜会で見たときにもとっさにあんなことをやっちゃって……。やった後で、しまった!余計なことしちゃった!って後悔してた。」

「あの時のアイリーンが?!」

「実はそうなの。その時にレイが告白してくれたんだよ。正直、子供の言うことだから好きだということに関しては信用してなかったけど、それでも私に感謝してるっていうことは伝わってきてた。すごく嬉しかったよ。自分のしてたことは無駄なことじゃなかったって言われたみたいで。それからはいつも、自分の行動に自信がなくなったときには、あの子、つまりレイを思い出してた。」

「本当か?!嬉しい!!
でも、俺はあれからアイリーンのことを考えすぎて何にも手に着かなくなったことがあったんだ。」

「ええー!それってどうやって解決したの?」

「それはグリードのお陰だな?」


するとここでさっきから後ろで黙ってて立っていたグリードさんが口を開いた。


「あの時のレイモンド様は正直見ているのも辛かったのです。なにをやっても上の空で教師の方からはお叱りを受ける始末……。そこで私はこんな提案をしたのです。一日真面目に勉強することがお出来になれば、アイリーン様をこっそり見に行くことを許可しますと。」


あんたなんという提案をしてるんだーー!





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