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城下での平和な日常 2

必殺!○○○○キング!!

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先ほどクローディアの前に現れた1つ目スライムは、ゲーム『リベラトゥール』の中で割とポピュラーな、1番ローズが遭遇するであろう定番モンスターで、青・緑・黄・橙・赤の5種類に分かれており青が最弱の赤が最強の順番でもって物語の戦闘中に出会っていく。

ちなみに、目の前で氷漬けになっているのは青スライム。

戦闘に出たばかりのローズが戦に慣れる為の練習相手の様な存在であり、実はHPも一桁で子どもでも武器をまともに扱えれば倒せるぐらいと表記されたモンスターである。

ただ、スライム族は一度倒されるとその身が弾けて一時的に戦闘不能になるが、実は時間がたつとまた集まって復活するとかなんとか、裏設定があったらしい。

ゲームを周回する中で散々お目にかかってきた愛着すら湧いていそうなモンスターな為、突然の登場にはびっくりしたがその青色には逆に心が落ち着いてしまった。


「ぼくの国のめしつかいたちはカエルやヘビでも泣いてにげるが、さっきの騎士やこの国の王子は大して反応がないからスライムをたくさんよびだしてやったんだ!」

「・・・・す、スライムを、呼び出す?」


ランディ王子は誇らしげに胸を張りながらドヤ顔でクローディアを、残念ながら身長の差があるために形的には見上げているのだが、本人の気分的には見下ろしているのだろう。

両手を腰にあてながら、後ろに倒れるギリギリまでがんばって背をそらしていた。



いや~とりあえず、すごい背筋だね。

いっそそのまま、後ろに倒れこんでブリッヂして勢いよく起き上がるとかしてみたらどうだろう?



この国の英雄と呼ばれ、騎士院の長を務める剣においては国1番のジークフリート様だけでなく、カエルやヘビどころかあらゆる毒ヘビや暗殺者に日々狙われていたアルフレド様からしたら、普通のカエルやヘビなど無反応どころかあのアルフレド様にいたっては鼻で笑っている姿が目に浮かぶ。

だからと言って最弱スライムを出されても大して変わらないとは思うが、国交の為に彼の機嫌をなるべく損ねないようにと色々気苦労の方で疲れ果てたのかもしれない。


「おい!!このぼくをむしするな!!」

「・・・・・あ、すみません。つい」


顔を真っ赤にしながらランディ王子がビシッ!!っと、指を差してくる。

こらこら。

王子様でも、人に指をさしてはいけません。


「ぼくはモンスターを呼び出せるんだ!しかも、そのモンスターを相手の好きなものや嫌いなものが見えるようにもできるんだぞ!」



どうやらこの王子様。

年齢は10歳そこそこながら、スキル『召喚』をすでに身につけているらしい。

まだまだレベルは低いものの、もしそのスキルが上がっていけば高レベルモンスターも従えるような立派な『召喚士』になれるかもしれない。

しかも短い時間だが『幻影』のスキルもあるとなれば、それぞれに磨けば使い道はより多岐に渡って活躍できるだろう。

何やら昔ゲームで見たことのある、超強力魔法や特技をもちながら、レベルが低すぎてMPが全然足りなくて発動しない、というどこぞの成長過程が恐ろしく晩成型な可愛いモンスターを思い出してしまった。



「どうだ、すごいだろうっ!!」

「!?」


なるほど。

それで、最初に現れたのが可愛い方のバルバロスだったと。


「・・・・ちなみに、さっきの2人にも同じものを?」

「そうだ!おもしろかったぞ~!赤くなったり、青くなったりして2人ともどんどんあわてはじめて!」

「!?」


2人には一体、あのスライムが何に見えていたんだろう?

そっちの方がものすごく気になる。



「おい!!このぼくをなんどもむしするな! このブス!!」

「ごめん、つい考え事を・・・・・って、今なんて言いやがりました?」

「ふん!!ブスをブスと言って、なにがわるい!!あの騎士や王子のかわりにだれがくるのかと思えば、ただの庶民のしかもどこにでもいそうな顔の女が来るなんてがっかりもいいとこだ!!」

「・・・・・・・・・・はい?」


クローディアの笑顔がヒクヒクと引きつり、両手がポキポキと力を強く込められて拳を作っては緩められを震えながら繰り返している。


「品のあるうつくしい女ならまだしも、こんなほこりのかぶったような庶民のブスが、高貴な血をひくぼくの友だちになどなれるわけがないだろう!?みのほどをしれっ!!」

「!?!?」


クローディアはその瞬間、声に出さずにボルケーノに防音の結界をこの部屋の中に張ることを即座に頼み、ドアの外で待っているだろうジークフリート様の耳からは決して聞こえないように遮断させて頂く。



「・・・・・ずいぶんと素直で、美的感覚も正常な上に大変自分のお気持ちに正直でいらっしゃるランディ王子、どうぞお覚悟を」

「き、きさま、なにをする気だ!?お、おいっ!!だれか、さっきのやつらでもいい!!この女を今すぐにとめろ!!」


据わった目と低い笑い声とでジリジリと近づくクローディアに、ただごとではないことを感じたランディ王子が怯えながら部屋の中をあちこち逃げるが、すでに出入り口は完全に封鎖した後。


逃げ場など、残念ながらどこにもなぁ~~~い♪


「ふっふっふっ!一応、嫁入り前の乙女を、自覚もあるけどやっぱり何度もブス呼ばわりした罪は重いんですよってねっ!!」


両手をオペ室に入る医師のごとく横に曲げて、その指をゆっくりとばらばらに動かしランディ王子へと両手を一斉に頭上へ振り上げて襲いかかる。

あ、効果音は昔よく流行った、海の巨大なアイツが来るやつで。


さぁ、皆さんご一緒に!



ジャージャン。

ジャージャン。

ジャージャン、ジャージャン、ジャージャン、ジャージャン、ジャーーー!!!



「く、くるなぁぁーーーー!!!」













そして、ついに床に倒れた王子の体の上に乗っかるようにしてマウントポジションを取ったクローディアがランディ王子に向かってニッコリと笑って見下ろす。


「つーーかまーーえた!」

「な、何をする気だ!?」

「決まってるじゃないか!いたずらが過ぎる悪い子には、必殺!ハイパースペシャルビーーームッ!!!」

「ぎゃぁぁぁーーーーーーーー!!!」






こちょこちょこちょこちょこちょこちょっ!!!






「や、や、やめろぉっ!!はひゃひゃひゃひゃっ!!そ、そこは、もう、ひゃしゃ・・・・ぎゃぁぁぁーーーーーーーーっ!!!」

「まだまだ~~~スペシャルコースはこれからですよ、ランディ王子♪」





こちょこちょこちょこちょこちょこちょっ!!!





「ーーーーーーーッ!!!」



はい。

見ての通り、ビームとは名ばかりの全身くすぐりの刑でございます。

ただのくすぐりと侮るなかれ。

クローディアはあのバルバロスをメロッメロにしたゴットハンドを持つ女ですよ?


そして、前世では勤務先の保育園の園児達を毎日毎日くすぐり倒して、ある日突然クラスの園児に命名された、『くすぐり大王!!』というよく分からないがかなり恥ずかしい名を持つ元・女です。


どんなに生意気な口を開く子も、友達にケンカをふっかけるような子も許さない!!

お天道様が空にある限り、太陽に変わってこのくすぐり大王が全力でお仕置きを、しちゃうぞぉぉぉーーーーーー!!!


もちろん、ポーズは月の戦士と同じやつで。

まさかの再放送ならぬ、リニューアル版が出てて20歳近くも歳の離れた子どもたちとこのポーズが共有できるなんて、元・おばさんは感動です!


他にも悪い子は狼が食べにきちゃうぞバージョンに、鬼がさらいに来たバージョンもなど色々あるが。

結局捕まった子は全身容赦のないくすぐりの刑に処され、あまりに笑いすぎてぐったりになりお昼寝時は大変みなお利口さんでよく寝ていた。

今思い出しても、クラスに担任は他に大抵3人~5人ほどどの年齢クラスの時も他にいたはずなのに、気づけばいつも悪役でこの『くすぐり大王』が割と頻繁に登場していたのを思い出す。

たまにうっかり、何かの扉を開けて目覚めさせてしまい、毎日のように『先生、もっとくすぐって~~~』とべったりくっついてきてしまう子も中にはいて、さすがにやりすぎたかと反省したのだが。

どうか、あの子達がまともな普通の性癖を持った大人に成長していますように。



「あはははははははっ!!も、もう!!やめっ・・・・あひゃひゃひゃひゃっ!!!」

「ふっふっふっ!!参ったか、ランディ王子!!」



まずい。

久しぶりの『くすぐり大王』が楽しくて全く止まらない。


「まいったか~~!!」

「ま、まいった!!も、もうまいったからまっ!!」


笑い過ぎたランディ王子の目には涙がにじんでいるが、頬が子どもらしく体温上昇とともに赤くなり、見た目だけならなんとも健康的な子どもらしくなった。

全力で外遊びに明け暮れた後と同じくらい、今の王子は汗びっしょりだ。


「よぉぉーーーーし、参ったならば許してやろう!!はっはっはっ!!」


前世の仕事時と同じセリフでその手をぴたっと腰に当てて止めると、ランディ王子はぜーはーぜーはーと肩で息をしながら大きく呼吸を繰り返す。

クローディアがマウントポジションからも立ち上がり、魔法で出した小さな氷を一粒ランディ王子の口の中に入れてあげてから、顔の汗を濡らしたハンカチで拭き取った。


「な、なんて・・・・なんてメチャクチャなおんなだ、おまえは!!」


悔しそうに顔を歪ませながら、ランディ王子が必死にこちらを睨みつけてくる。

そのランディ王子のそばに座り込むと、クローディアは満面の笑みを浮かべた。


「おまえ・・・・じゃなくて、私の名前はクローディア。これから、仲良くしようね!ランディ王子!」


「ひ、ヒイィィッ!!」



ブンブンとクローディアが勝手に繋いだ手をすぐさま剥がそうと勢いよく振りながら、クローディアを怯えた目で見つめる王子に思わず笑いがこぼれてしまう。

同じわがまま王子でも、アルフレド様は立派な青年でこの手は使えなかった。

そのせいなのか、なんだか久々の手応えにワクワクしてしまっている自分がいて、いやいや楽しむ時間はそろそろやめて自分の使命を思い出せ!とかなんとか真面目な言葉を浮かべて、浮かれる気持ちを鎮めて落ち着かせる。


「・・・・さて、ランディ王子。呼吸が落ち着いたら一緒に来てもらい所があるんだけど、いいかな?」


「!?」


クローディアからのお誘いに、ランディ王子は顔を真っ赤にさせながら怒り出す。


「ふ、ふざけるな!!だれがきさまのようなブスとっ」

「フーーーーーン、それなら・・・・」


だが、ランディ王子によく見えるように、クローディアの顔の横あたりで両手を『くすぐり王』の動きをしてみると。


「!?!?」


その動きだけでクローディアの意図を理解したランディ王子は、『や、やめろ!!』とすぐさま顔を青くして怯えながら、一緒についてくることをどうにか了承してくれた。


「こ、このぼくを変なところなどにつれていったら、ち、父上に言いつけてやるからな!!」

「大丈夫だって!別に危険な場所じゃなくて、ランディ王子も喜ぶ文句なしの美人のいる場所だから!」

「!?」


『美人』の一言にそっぽを向きつつも反応してしまうランディ王子に、やっぱり男の子だな~~~と密かに笑いながら、クローディアはボルケーノにこの部屋の結界を解いてもらうことをお願いし、ジークフリート様の待つ部屋の外へと急ぐ。

『彼女達』がいる現在の居場所は、国王陛下からすでに先程確認済みだ。


ジークフリート様にも事情は軽く説明して、クローディア達3人は『彼女達』のいるラファエル王子の部屋へと向かった。
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感想 18

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