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ウンディーネ様のいる闇の神殿へ

それぞれの道へ

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その後、ウンディーネ様からの提案でアイシスさんはカルロさんと同じ水の神と神殿を守る守護者となり、その魔力で生きている時と何も変わらない肉体を得られることになった。

不老不死なのはエルフの時と変わらず、ただウンディーネ様の命とアイシスさんの魂が直接繋がっている為、彼女の死がアイシスさんとカルロさんの消滅に直結することとなったが、神の中でも最強に近いウンディーネ様ならよほどのことがない限り大丈夫だろう。


エルフ王のマグオートもその内容には納得済みらしく、何の反対もしなかった。


ただ、エルフの里へと帰る時にだけ。



『・・・・・たまには里にも顔を出せ』

『お父様っ!』

『その際には、そこにいる子孫も一緒に我らが聖地に来ることも特別に許そう。お前の子の姿が一目見たいとアリア に泣きつかれて敵わない』

『お母様・・・・・うん!その時には必ずルークを連れていくね!』


一際大きくため息をついたマグオートの姿に、ただ『泣きつかれて』るわけではないのがすぐにアイシスには分かり、相当な圧力で散々母から脅されたのだろう姿が頭に浮かび思わず笑いが溢れる。

表向きは厳格で頑固な父が一番強いように見えて、普段は父に逆らうことなく側で支えている慎ましい母が、実はその父の上を行く強さを隠し持っていることはアイシス以外の姉妹も全員分かっていることだ。


最後の別れの時はマグオート様もアイシスさんもまたすぐ会えるからと特に何も話すことはなく、お互いに穏やかな眼差しで見つめ合いながらその瞳で心を物語っていた。





そんなマグオートの発言に、話題に出されたルーク本人が1番言葉を失っており彼にしてはとても素直に驚きを示している。


アイシスさんが言うには、魔法使いにとって魔法や魔具に、調合に使われるSSランクと言われ滅多に市場には出回らない様々な希少植物に魔法生物などありとあらゆる魔力に関わる存在の宝庫とも言える場所で、ゲームでも超激レアアイテムゲットとスーパーレアモンスターに遭遇し放題の、コンプリートを目指すプレイヤーからすればまさに天国とも言える場所だった。


ルークですらもエルフの里への興味は人一倍あったようで、はしゃぐ様子は見せなくともどこか嬉しそうな雰囲気がにじみ出ている気がする。

同じく魔法や魔法生物に大変興味のあったカルロから、ずるいぞ!!俺も一緒に行きたいっ!!と、思った以上に本気で羨ましがられていた。

そんな彼からすれば遠いおじいちゃん?に当たるカルロの必死な姿を見てもルークはいつも通りの笑みで、『嫌です♪』『義理の父親なんですし、マグオート様に自分からお願いしてみてはどうですか?』と、本人がその場からすでにいないにも関わらず、その名を聞いただけで今だに顔を引きつらせているカルロを面白がりながらやり取りを続けている。

もしかしたら、これは彼なりのコミュニケーションなのかもしれない。




そして、色々とお世話になったクロワッサリーにはウンディーネ様を通じて改めてお礼をいい、また何かあれば絶対に呼ぶことを約束して、彼は家族と仲間の待つ鳥の王国へと帰って行った。



「ピイィーーーーーーーーーッ!!」



水の神殿の外に出るなり、大空を何度も旋回しながら大きな鳴き声をあげて飛び回る姿が、彼なりに別れを名残惜しんでくれてるような気がして、その姿に両手を大きく振りながらじんわりとクローディアの胸の奥がが熱くなる。

彼はこれからも鳥の王国の勇敢な戦士として、多くの仲間の先頭をきって戦い続けるのだろう。



「キャン!!キャン!!」

「またすぐ会いに来るからね、バルバロス!!」


そしてバルバロスは主人であるボルケーノの了解があっさりと降り、引き続き水の神殿を守護する番犬として居座ることになった。

ここならアイシスさんやカルロさんもいるから、バルバロスも淋しくないだろう。

むしろ、主人であるボルケーノの方が何やら少々落ち込んだ様子でイヴァーナ様とともに空間に溶けていった。

聞くところによれば、相当あのウンディーネ様からきつい対応を受けたのだとか。


「クゥーーーーーン」

「!!??」


正体が分かっていても、やっぱりこの姿は反則なまでに可愛い!!


「この~~愛い奴め!」


わしゃわしゃわしゃわしゃ!!と、思う存分その毛並みを撫で回し、バルバロスがうっとりと恍惚状態になるまでその眉間から鼻にかけての凹凸や、前足の脇の下に後ろ足の付け根、顎の下や腹や背中などを思う存分撫でくりまわす。

前世で犬を飼ってた友達に教えてもらったポイントを思い出しながら、その反応が楽しくて夢中で撫で回したらさすがにやりすぎだと途中でウンディーネ様にやんわりと止められた。


バルバロスは、あまりの気持ちよさにぐったりと全身の力が抜けてしまっている。



そういえば前世でも保育園の子ども達をくすぐり倒して、よく同僚に止められていたっけ。

わきゃわきゃと懐かしい感覚に両手の指を動かしていると、その手をスッと私よりも色の白いキレイな手に取られた。

この憎らしいほどにシミひとつない、陶器のような白い肌といえば。



「・・・・・なに?ルーク」



ニッコリ。


キレイに無言のまま笑ったその顔に、なぜか背中がゾクゾクっと寒気が走ったその瞬間ーーーーーールークの唇がクローディアの手の甲にそっと触れる。



「!!??」



こ、この光景はっ!!

少し前にも全く同じ光景が目の前で広がったのをデジャブで感じ、すぐさま自分の手を勢いよくその場から引き剥がすが時はすでに遅し。


「あ、あんた、人に断りもなく何勝手なことしてんのよっ!!」

「フフ♪こんな程度で真っ赤になってて、この先どうするの?」

「別に、あんたとこれからどうなることもないから問題ありません!それに歳はとってても、心は清い乙女なんです!!」


私が以前に住んでた日本に、こういう習慣はありません!!


「!?」


そしてもう1つの恐ろしい可能性に気がつき、すぐさま手の甲を見てみると、そこには再びあの薔薇の刻印が!!


「な、な、な、なんてことを・・・・・ッ」


あの時のーーーーー恥ずかしさと悔しさと怒りと、色んな感情が一気に混ざりまくった瞬間を思い出し、真っ青になったクローディアはなんとかその刻印を落とそうと、神殿の水の中に手を入れて何度もゴシゴシと赤くなるほどこすりあげる。



「そんなことしても、無駄なことは知ってるくせに」

「ルークのバカッ!!今度は何のためにまたコレをつけたわけっ!?」


何をしても落ちないと嫌になるぐらい十分分かっているけれど、それでも洗い続けることが止められない。


「・・・・決まってるじゃない♪虫除けだよ」


「ーーーーーーッ!!」


「はぁ??虫??」



美しく微笑んだルークの目だけが、『ある人物』に向けられてゆっくりと動き、その冷たく光る紫の双眸が姿を現す。


別に蚊に食われやすい体質でもないし、怪しげな虫がいれば燃やすなり凍らすなり対処の仕様が色々あるだろうに、毎度のことながら何適当なことを言ってるのかと、怒りながらも再びゴシゴシと甲を洗い続けている。



「ーーーーーーーーッ!!」

「・・・・・・・フフ♪」



その傍らで静かにそして激しく火花が散っていることを、クローディアは幸か不幸か全く気づかなかった。
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