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モブ女子、いざ死の山へ!
魔法が使えなくて困ってます!
しおりを挟む「ねぇ、ボルケーノはどうして『アグニ』を使うのを止めたの??」
氷の魔法を相手にするなら、ボルケーノと同じように炎の魔法のアグニを使ったっていいはずだ。
氷神との戦いの中で、何か役にたちたい!と思う私はそこが納得できていなかった。
『我が主よ、アグニを無事に発動させることができたようだな』
「う、うん!白い魔女に・・・・その、い、色々とね!」
ブチ切れて使いました!とは、さすがに団長の手前では言えず、ごにょごにょしてしまう。
『そうか。アグニは最強の攻撃力を持つ、炎系の中では最高威力であり最強魔法の1つ。その威力は術者の魔力に大きく左右され、どこまででもその威力・技の自由度が変化する』
「なにそれッ!?超すっげぇぇーーー魔法じゃん!!」
魔法の説明に、レオがキラキラお目目で振り返る。
その魔法の一端を見ているからこそ、余計にその目が輝いているのだが、クローディアはまさか見られていたとは気づいていない。
「レオナルド、余所見をするな!!」
「は、はい!!団長!!」
ジークフリートとレオナルドは、ボルケーノの代わりにイヴァーナが繰り出してくる氷山やつららをひたすらに斬って斬って斬りまくる!!のが、今の役割だ。
『アグニを使えば、それに対抗してイヴァーナが同じ威力を持つ氷系最強の魔法を発動させるはず。だが、もしその2つがぶつかってしまうと・・・・・・この山どころか、この国が更地となってしまうかもしれぬ』
「!?」
『炎と氷は全く反対の性質のもの。その2つの強過ぎる力がぶつかり合うと、国を滅ぼすほどの強い闇の魔法が生まれてしまう。アグニは最強の攻撃魔法だが唯一それを使ってはいけない相手が、イヴァーナなのだ』
「・・・・・ッ!?』
聞いてすぐに頭に浮かんだのは、昔夢中でやりこんでいた某RPGゲーム。
炎と氷、それぞれの使い手が2人技で力を合わせた時に確か反作用なんたらかで冥の属性の魔法が作り出されていた。
ゲームでは最強魔法もバンバンその辺で使いまくっていたが、それを実際に使うとどうなるのかは全然実感がなかった。
とにかく、目の前の敵にどれだけ大ダメージを与えるかしか考えてなかったと思う。
でも、確かにあれだけ広範囲で最高威力の魔法なのにたかだか数匹の敵だけにピンポイントに当たるわけないよね。
「で、でもそしたら、どうしたらっ!?」
『あぁ。我もそれをずっと考えてはいるのだが』
ボルケーノとイヴァーナの力はほぼ同等か、彼女の方が上かもしれない。
今は団長やレオも彼女の攻撃を防げているが、時間がたてばたつほど体力もなくなりそれと厳しくなる。
いくら自分が体力や傷を回復するといっても、長期戦はやっぱり不利だ。
『1つだけ、方法がありますわ♪』
『この声はッ!?』
「・・・・・・ッ!!??」
声の主を探そうと辺りを必死に見回すが、自分達の他に人などいない。
「だ、誰!?」
『主よ、赤い魔女だ』
「えっ!?」
でたッ!!!
それって、つい忘れてたフラグじゃない!!
『声の元は、主の持つその石だ』
「い、石が光ってるっ!?」
胸元を見ると、赤い石が同じく赤い光を放っていた。
『お久しぶりですね、ボルケーノ様』
『あぁ、久しぶりだな赤い魔女。いや、ライラよ』
「・・・・・・・」
確かに、声は赤い石から聞こえて来た。
その声は柔らかな女性のもの。
『私』もクローディアも、初めて聞く声だ。
なのに、その声を聞いたとたん、なぜかとても懐かしさと安心感を覚えた。
根拠はないけれど、もうこれで大丈夫。
そんな気がしていた。
赤い魔女はそのたった1つだけの方法を教えてくれたが、本当にそれに効果があるのか私はとても自信が持てなかった。
神様に魔女まで揃ってるんだから、絶対もっといい方法があるはずだ!
もっと凄い威力のある魔法とか、複雑に練りこまれた作戦の知恵とか。
具体的には思いつかないけども。
伝説の武器や防具とか、伝説の勇者とか!古のなんとか・・・・・はいたけど、そこは全力でノーセンキュー!!
なのに、なんで!?
なんで最後の賭けが、まさかのまさか様の『私』なんですかーーーーーーーっ!?
『ライラよ、そなたの言う方法とはなんだ?』
声の主と、ボルケーノは知り合いのようだ。
白い魔女も知ってたし、4人の魔女は全員神様と顔見知りなのかもしれない。
『それはクローディア=シャーロットさん』
「は、はい!!」
急に名前を呼ばれて、慌てた様子で返事をする。
声だけで姿は見えないはずなのに、なぜか背中がピンと伸びてしまった。
『あなたの持つ、その不思議な魔力です♪』
「えっ!?」
ま、まさか!!
それって他者自動回復機能のことを言ってらっしゃる??
『そう、その相手の体だけでなく心を癒す能力が、今の心を封じたイヴァーナに対して力を発揮するはずです』
「そ、そんな・・・・・って、あれ?」
気のせいかな?
今、さらっと私の心を読みましたよね??
『気のせいだと思うわ♪』
「!?」
あれ、おかしいな。
この感じによく似た感情を、つい最近味わった気がする。
もしかして魔女とか、魔導士ってみんなお腹が似たような色をしてるんだろうか??
『ライラよ、本当に主のその力がイヴァーナに有効だとしてもその為にどうすればいいのだ?』
ってなんでそこもっとつっこまないんですか、ボルケーノさん!!
こんなモブの平民の、いつどれだけの力を発動してるのかも分からない、どこでも誰にでも発動してるきまぐれビッチ能力ですよ??
いつでもどこでも、24時間対応可能です!
確かにレオの治療法のない病魔の進行を鎮めたり、毒に対して何か影響があったりボルケーノの封印も解いたりーーーーーって、あれ??
「・・・・・・」
いや、もしかしなくてもこれ、結構すごくないか??
今更だけどこれって、まさかのかなりレベルの高いチート能力ーーーーーーだったり??
いや、そもそも私まだこの子と仲良くなれてないから、私の意思は完全無視ですよね??
はっっ!?
ま、まさか、私がビッチ能力とか言ってるから怒らせていて仲良くなれないのか!!!
しまったァァァーーーーーーッ!!!
それはごめんなさい!!!
あなたはみんなに優しい、とても素敵な能力です!!!
本当にすばらしいっ!!
よっ、ナイチンゲールっ!!!
『クローディアさん、そろそろこちらに戻ってきてもらってもいいかしら?』
「は、はひィっ!!!」
やべっ!!
つい我を忘れて、意思の疎通をしたこともない同居人を褒め称えることに夢中になってしまった!!
『クローディアさんが正気に戻ったところで、私の提案する内容を話させて頂くわね♪』
「・・・・・すみません」
『あぁ、頼む』
穴があったらすぐに逃げ込みたいくらいに、恥ずかしいです。
そんな感じで小さく身を置く私とボルケーノに向けて、赤い魔女さんは作戦を伝えてくれた。
団長やレオも聞いた方がいいと、ボルケーノが2人とボルケーノ自身の意識をつなげてくれている。
『まずイヴァーナ様の気を逸らさないとだから、その役目をボルケーノ様とレオナルドくんにお願いするわ♪』
『承知した!』
「りょーーーかい!!」
ボルケーノを通じて聞いていたレオナルドも、元気よく答えて声だけ参加だ。
体は今も少し離れたところで団長と氷山無双をしている。
『そして、クローディアさんがイヴァーナ様の元へ気づかれないように進む為に、ボルケーノ様には炎の壁を無数に用意して頂きたいのですが、大丈夫ですか?』
『なるほど!!』
『クローディアさんは、その壁に隠れながらイヴァーナ様の元へ向かってね♪』
「・・・・・は、はぁ」
なるほど。
炎の壁に隠れながら見つからないようにこっそりと進んで、鬼さんこちら??
はっっ!!
これ、あれだ!!
小さい頃にやった、だるまさんがころんだor缶けりだ!!
つ、つまり、これは
イヴァーナ様ころんだ??
い ゔぁ あ な さ ま こ ろ ん だ
おぉ!!
10文字ピッタリ!!行けるじゃん!!
よし!!
イヴァーナ様のところまで、こっそり進んでって、あれ??
イヴァーナ様って、地上にいないですよね??
「あ、あの!!先せ・・じゃなくて、赤い魔女さん!!」
『あら、何かしら??』
「わ、私がイヴァーナ様のところに行くには、大きな難題がありますッ!私はただの人間です!空は飛べません!!」
大佐!!
飛○石とタケ○プターは、ここにはありません!!
『それなら、私が妖精のこなをかけてあげましょう♪』
「へ??』
『私が魔法の粉をかけたら、好きなこと、嬉しいのとを思い浮かべてね♪』
そ、それはまさかっ!?
あれですよね?
You can fly??
私はネバネバランドへ行くんですかッ!?
『あら、あなたが行くのはイヴァーナ様の胸の中ランドですよ♪』
わぁお!!
ナチュラルに心読みの通常運転、ありがとうございまーーーーす!!
しかも普通は温かい胸の中に行くのに、私が行くのは極寒の胸の中ですからね!
そんでもって、本当に赤い石から何か光るものが出てきてますよ!!
「!?」
その無数に広がる赤い光が私の体を包んで、そして消えていく。
「あ、光が!!」
『さぁ、楽しいことや嬉しいことを考えて♪』
嬉しいことーーーーーそんなの決まってる!!
ジークフリート様とデートでお茶して~~♪
フワッ!
ジークフリート様と手をつないで~~♪
フワフワッ!
ジークフリート様にハグされて~~キャッ!
フワフワフワッ!
そしてムードが盛り上がったところで、キスなんかされれちゃったりなんかして~~もう、やだぁーーーー団長ってばっ!!!
ぜひとも、よろしくお願いしまーーーーす!!
フワフワフワッ!!
フワフワフワッ!!
『あらあら。クローディアさんたら、それは行き過ぎよ♪』
「へ?いや、まだどこにも団長とは行ってな・・・・・・んギャァァァーーーーーーーッ!!!」
目をつぶってジークフリート様とのラブワールドに浸っていた私は、気がつけばみんなのいるところは遥か遠い空の下。
とんでもない高さのところまで浮かび上がっていた。
「た・・・・高い!!怖い!!高い!!怖いィィーーーーーーーッ!!!」
少し、高所恐怖症の気がある私。
この恐怖は足元のないランドマークタワーの屋上から下を見たら、同じ気持ちになれるだろうか?
「た、た、た、た、助けてぇぇぇぇーーーーーーーッ!!!!」
『あらあら、クローディアさん。あなたはもう飛べるのよ~♪』
「へ?」
飛べる??
アイ・キャン・フライ??
そうだ、私は妖精の粉じゃなくて魔女の粉をかけてもらったんだ!!
大丈夫!
私は飛べる!!
頭の中には、あの曲がバッチリ流れてます!!
さぁ、テレビの前のみなさんもご一緒に!!
ユー・キャン・フラ~イ♪
ユー・キャン・フライ♪
ユー・キャン・フラ~~~イ♪
「!!??」
やっぱり怖いので目は閉じて、ゆっくり体を前に倒して両手足を伸ばしてみると落ちる感覚は全くなかった。
風に乗ったように、私の体が空を飛んでいる。
「と、と、と、と、飛べたァァァーーーーーーーーッ!!」
本当に体がとても軽くて、まるで鳥になったかのように私は自由に空を舞い飛んでいた。
もちろん空は猛吹雪の中で景色は最悪だがボルケーノの加護のおかげで、吹き荒れる雪が飛行の邪魔には一切ならい。
そう!!
何を隠そう、いや何も隠してはいないが、私の小さい頃の夢は空を飛ぶこと!!
私の憧れたヒーローは『ピーター・○ン』
凄い!!
転生ワールド凄すぎる!!
女神ナーサディア様、あなた様はマジで最高ですッ!!
これだけは言わせてください!!
私、風になってる~~~!!
翼をくださいと、幾度となく願い歌い続けた30とプラス数年間!!
まさか空を自由に羽ばたける羽はないけども、タケコプターが発明される未来を待たずして、飛び回れる方法を得られるなんて!!
神様・仏様・女神ナーサディア様!!!
クローディア=シャーロット、いえ森山雫!
さいっこうに、
「し・あ・わ・せぇぇぇぇーーーーーーーーーーッッッ!!!!!!!!」
「あの、団長!えいっ!!」
「はぁあ!!何だ、レオ」
遥か空の上で、大絶叫しながらものすごく『いい顔』で空を夢中でクルクルくるくると飛び回る彼女の光景が、ボルケーノを通して2人の脳裏にも映し出されている。
「俺・・・・あんなに生き生きして嬉しそうなクロエ、初めてみました」
「そうか、同じく俺も初めてだ」
「「 ーーーーーーーー 」」
その後、2人は無言のまましばらく氷山を切り続けた。
そのスピードがなぜか一気に上がり、その表情も厳しいものになっていたことを彼女は何も知らない。
え??
いつまで飛んでるのかって??
やめられないし、止まれるわけがないじゃない!!
だってこれ、私の前世からの宿願ですよ??
ほ~~ら!!
見てみて、空中三回転!!
お次は空中トリプルアクセル風!!からのぉぉぉ~~~~大旋回ッ!!!
お次はぁぁぁーーーーーーーー!!!!
『そろそろ落ち着きなさいね』
「!!??」
そして、突然の急降下からのーーーーーー墜落ッ!!
ズドンッ!!!!!
『わ、我が主よ。だ、大丈夫か?』
「ご、ごめんなさい。調子に乗りすぎました」
『分かってもらえて、よかったわ♪』
目の前に降ってきた主のあられもない姿に、ボルケーノはオロオロし。
その炎の神の前では、体が大の字になって柔らかな雪の中に見事に埋まったクローディアの姿があった。
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