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モブ女子、いざ死の山へ!
忘れられました!
しおりを挟む目が覚めるとそこは『自分の部屋』の天井で、久しぶりに会ったはずの父さんも母さんもいつもと同じでそれなのになんだろう?
『いつもと同じ』でいいはずなのに、何か少しずつ違和感がある気がする。
なのにずっと頭の中にもやがかかったみたいに曖昧で、『それ』がなんなのかが全然分からないんだ。
「ごちそう様!!」
「あら、レオ。今日はよく食べたわね!」
「え?俺最近メチャクチャ食べるじゃん!」
毎回テーブルに、食べ終わったお皿が20~30枚はあるよね?
「そうね。確かに前に比べたら食べるようになったけど、まだまだ心配だったから嬉しいわ♪」
え? これだけ食べても、まだ心配されんの?
「????」
俺の食欲があまりなくて食べられなかったのは、だいぶ前のことだ。
それこそ村を出る前くらいの。
最近はーーーーーの作ってくれたごはんがおいしくて、何回もおかわりしてたのに。
あれ?
誰に作ってもらってたんだっけ??
ローズだったかな??
いや、確かローズは料理苦手だったはず!
前に食べたカレーは本気で死にそうな思いをしたもん!!
しかもそれを誰かに話したら、
くそッ!!
ブルー○ス!お前もかッ!!!
って、他の人の名前を叫んですんごい怒ってた気がする。
あんな破壊力のある料理を作れるのなんて、ローズぐらいしか知らないけどな~~。
「レーーーオーーー!!」
「・・・・・・・」
「ほら、レオ!ローズちゃんが遊びに来てるわよ!」
「あ、うん!ごめん、今行く!!」
そうだ!
きっとローズだ!!
俺の知らない間にものすごい死にものぐるいの特訓をしたか、とんでもない奇跡でもひき起こして食べられる料理を作れるようになったに違いない。
「ローズ、おはよ~~!!」
「レーーーオーー・・・・キャッ!!」
ローズの後ろから飛びついて、抱きしめながら『いつものように』朝の挨拶をする。
「おはよ~!」
ニッコリ♪
「・・・・・??」
あれ??
「レオ、どうかしたの??」
「ローズいきなり飛び付いたのに、俺のこと怒らないの?」
「え?」
「ほらいつもみたいに、よいっっしょーーー!!って一気に投げ飛ばしたり、右ストレートォォーーー!!って、いいパンチで殴ったりとか・・・・あれ??」
俺、なんでこんな可哀想なこと言ってるんだ??
でもいつもこうすると、毎回怒られてたような気がするのに。
「フフッ。何それ!レオがくっついてきてくれたことで、私が怒ったりするわけないじゃない♪」
「そ、そうだよね」
そういえば、ローズが怒ったところなんかほとんど見たことはなかった。
何で、怒るなんて思ったんだろう?
「ちなみにさ、俺じゃなくてトーマスやスネフが同じことしても、ローズは怒らないの??」
トーマスやスネフは、同じ村に住む俺とローズの同世代の友人だ。
2人ともローズのことが友人以上に好きなのは見え見えで、知らないのはローズくらい。
「もちろん♪私はレオも、トーマスも、スネフもみんな大好きよ!」
「!!??」
『だから、こういうことは愛しのーーーにだけって何度も言ってるでしょうがっ!!』
『それはーーーーに今すぐお願いして!!私のもう2度とあるかどうかの、至福タイムを奪わないで!!』
あれ、なんだろ??
そうだよ。
ローズはいつだってみんなに優しくて笑顔で、『みんなのローズ』だったじゃないか。
だからこそ、俺のことを必死で見て欲しい!!って思ってたはずだ。
「変なレオ。ねぇ、今日は一緒に森の隠れ家に行こうよ♪」
「あ、うん。そうだね!森の隠れ家かぁ~~~懐かしい!!」
昔から村の子どもたちの為にある森の中にある小さな小屋で、親達公認の遊び場であり隠れ家でもある。
そこを利用する子どもたちによって隠れ家の外装も内装も、時代ごとに変化しながら親しまれている俺も大好きだった場所。
「レオたら一昨日も一緒に行ったばっかりなのに、懐かしいだなんて!」
「えっ?そ、そうだっけ??」
確かに、最近森とかにはたくさん行ってた気がする。
『じゃ、ジャーーーン!!今日は森に行って、この模様の毒キノコを狩りま~~す!』
「あ、そうだ!この間一緒に森で刈り取った毒キノコ!!まさか、触るだけで笑いがとまわらなくなるなんて知らなくて、2人して本当に大変な目にあっ・・・・た」
「どくキノコ??」
その時の色々な光景を思い出しつい笑いが自然と出てしまった俺の前で、ローズがキョトンとした顔で不思議そうにこちらを見ている。
「!?」
そうだよ!
俺は誰かと、確かに毒キノコを取りに行ったんだ!
赤い色のカサに白い斑点がついた、だれかが『パワーアッ○キノコだ!!』って嬉しそうに迷わず手で取ると、なぜか片方の腕だけ空高く伸ばして1人ジャンプしてた光景がうかぶ。
でもこの平和な村『レーシア』の周辺の森で、毒キノコなんてほとんど見たことないのに。
「レオ、どうしたの??」
「・・・・・・ッ!」
あの時。
2人とも知識不足でその毒キノコに素手で触ってしまって、しばらくしたら顔を見ただけでお互い笑い転げ始めて。
ようやくおさまっても、どちらかが笑うとすぐにつられて笑い出してしまい。
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さすがにあの時は全身全霊で俺の心が遠くに飛んでいって、一緒に行く!!って伝えることを少しいやかなり迷った。
『・・・・レオ!』
「!!??」
けど、一緒にいると毎日が楽しくて嬉しくて。
なのに俺じゃない人の為にどこまでも一生懸命な姿を見ていることがもどかしくて、その相手が羨ましくて恨め・・・ってこれはなし!
俺のことで怒らせて困らせてやりたくて、色々なわがままも言った。
そんな俺を最後の最後には仕方ないな~~と、笑って許してくれる温かく優しい人が確かにいたはずなんだ。
「レオ、今日は何をして遊ぼうか~?」
「・・・・・ローズ」
病弱で部屋から出ることもできないでいた俺の手をひきながら、今日は何がしたい??といつだって外の世界へ連れ出してくれた人。
明るい笑顔で俺の手を引く君のことが大好きなはずなのに、なんで俺は顔も思い出せない『誰か』のことばかり考えてるんだろう。
「レオ、どうかしたの??」
「ごめん、ローズ!」
ローズと繋がれていた、手を自分から振りほどく。
「レオッ!?」
大好きな君と、俺の生まれ育った大切な場所。
大事なものは全部ここにあるはずなのに。
俺が今、心から望んでるモノはここにはないんだ!
「俺、行かなくちゃ!!名前も顔もまだ思い出せないけど、彼女を探しに行かなきゃ!!」
「レオッ!!」
もう一度ローズにごめん!とだけ告げて、俺はきびすを返して走り出した。
どこに行けばいいのかなんて分からないけど、でも絶対近くにいるはずなんだ。
思い出せ!!
思い出すんだ、俺ッ!!
『大丈夫。あなたをけっして、死なせたりなんかしない』
「・・・・・・ッ!!!」
君の名をッッ!!!
「・・・・・レオ」
走り去って行くレオナルドの後ろ姿を悲しげに見つめていたローズに向かって、強めの風が吹きこみローズの桃色の柔らかい髪の毛が大きく揺れる。
その揺れる髪の中で形のキレイな唇が左右に動き、ニヤっと口元だけに笑みを 浮かべた。
「行かせないわよ・・・・レオ」
そして、ローズの周りにさらに激しい風が吹き荒れる。
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