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モブ女子、他キャラとそれ以外の色々な出逢い

成人男性がワンコに見えます!

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「おはようございまぁーーーす!!!」



今日も騎士院に大きな声が元気よく響きわたる。


「おぉ!もうお昼か!」

「マルコさん、今日はお待ちかねのスペシャルAランチトンカツでーーす!!」

「俺の大好物じゃないかっ!これは交代が今から楽しみだな!!」


大きな荷物を背に抱えて歩くお弁当係ことステル・ララの店員、クローディア=シャーロットは連日同じ陽が真上に来た頃、雨の日は朝食の後早めに家を出て騎士達のお昼ごはんを届けにきていた。

初めは騎士の3分の1ほど、そして噂がひろまってすぐに3分の2になり、今では騎士院のほぼ全員がステル・ララでのお弁当を食べていた。

メニューを個人で頼むのは大変すぎるからと、日替わりで色んなメニューを大量に持ってくることになった。

どれもボリューム満点の特大サイズで、稽古等でお腹を最高にすかせてばかりの団員達にとっては大満足だと毎回喜んでくれている。


ちなみに本日のトンカツはララが新製品を閃いた!!と、現代のトンカツを閃いた?のでクローディアが命名した。
名前をわざわざ変えると自分自身が混乱するから、もう同じでいいよね!って感じで。



「おはようございます!グレイさん!」

「おはよう」


グレイさんは騎士院の副団長。
背は団長よりもさらに高く、現代でいうところの2Mくらいはあるだろうか?

体格は細身で縦にすらっとしていて、そして足が長い。
髪の色は赤銅色で、前髪も後ろ髪もストレートな毛質で少し長め。
目はツヤをなくしたゴールド。

手足はひょろりとしていて普段はあまり銀の鎧をグレイさんは好まず、黒の上下で割とスッキリスタイルでいることが多い。

好きなものは各地域の紅茶集めと、そのお茶を使ってのおもてなし。
気配り心配りもできる、女子力が高い副団長さまです。


「今日はAランチです!」

「そうか。ご苦労だったな」

「あの、団長は今日も?」

「あぁ。仕事で王宮だ」

「そ、そうですよね~~」


普段は団長のサポートをしながら団長が王宮や見廻り等で騎士院を留守にする時には、このグレイさんが騎士院代表となって取り仕切るのが通常の役割だ。


「伝言があるならば伝えるが?」

「いえ、大丈夫です!!」

「そうか。それならまた後でお茶を用意するから、配り終わったらこの部屋に来て待っててくれ」

「やった!ありがとうございます!!」

「今日のお茶も、自信作だ」

「へぇ~~それはどこのなんですか?」

「これは我が国から北方にある限られた島国にしかないお茶の葉で、身体を不思議と温める効能の高いものなんだ。しかも香りがまた素晴らしく」


あ、スイッチが入った。
こうなると普段は無口なグレイさんは饒舌になり話が止まらなくなる。


これまでは普段騎士院でお茶の葉について一緒に語れる人がおらず、1人で黙々と飲んでいたそうだ。

ある日、グレイの1人カフェタイムにたまたま居合わせたクローディアが、懐かしい紅茶の匂いに我慢ができなくなりグレイさんにお願いして一杯飲ませてもらったのが始まり。


これがすごくおいしい!!

向こうでも一般的なお茶・紅茶、ハーブティーなんかはよく飲んでいた。

匂いも味も向こうの世界とよく似た茶葉が多くあり、どれも本当においしくて実はグレイさんの入れてくれるお茶を密かに楽しみにしていたりする♪

毎回嬉しそうにお茶を飲む私の姿に気を許したのか、ポツリポツリとグレイさんの言葉が増えていき途中から遠慮はいらないと悟ったのか、今のように紅茶オタクな話で毎回大興奮しているグレイさんが目の前にいる。

あれ以来、団長とは遠目でお互い見つけあって手を振ったり会釈することはあっても、中々直接会えておらず団長よりもむしろグレイさんとの好感度がぐんぐん上がってる気がしてならない。

いや、今回の目的は団長攻略じゃなくて団長の死亡フラグ折りが目的なんだけど、だけどやっぱり会いたいっ!!




そして、正確には彼ともう1人。



「それで1回目のお茶が素晴らしいのは当然なんだが、この茶葉は実は2回目も格別で・・・・・・」

「グレイ副団長!!ずっりーーーのっ!!俺もクロエと一緒に話したい!!お茶したい!!!」

「ぎゃあっ!!」




ギュ~~~~~ッ!!!




「ちょっと、レオ!毎回後ろからいきなり飛びついて来ない!心臓に悪いでしょ!!」

「えぇーーーー??いいじゃん!!俺、クロエにこうして後ろからくっついてるの、大好きなんだも~~~ん♪」

「大好きなんだも~~~んって、犬や子どもじゃないんだから、じゃれないでよ!近すぎでしょ!!」

「それは却下♪」 



スリスリスリスリスリ!



「ちょ、ちょっとくすぐったい!」


人の首元に後ろから腕を回してきて今もギュウギュウと抱きしめながら、髪とほおを大型犬のようにすり寄せてくるこの青年は


レオナルド=ラティーート。


先ほどのもう1人、と言っていたのがレオナルドこと愛称はレオ。

彼も実はゲーム『リベラトゥール』の攻略者相手で、見た目そのままの爽やかワンコ系。

ローズの幼馴染で、初恋のローズを思い続けている、というゲームでの設定。



「ちょっと、こういうことはローズにだけやんなきゃ!誰にでもやっちゃダメ!!」

「えぇーーーー??俺誰にでもやってないよ?」

「へ??」

「だから、ローズとクロエにしかやってないよ!!!」 



キラキラキラキラキラキラ!!



あぁ~~~なんなんだ、これは!

この、爽やかイケメン&純粋さMAXの目から出るビームのキラキラはっ!

2人にしかやってない!って。

そんな堂々と二股宣言する人初めてみたよ!

しかも、なにそのご主人様ほめて!的な、目をキラキラさせて待ってる感じっ!!

しかも、成人している男性なのに頭にピョンと生えた耳と、後ろにはブンブン左右に揺れているフサフサしっぽがなぜか見える?


これは幻覚だ!

しっかりしろ、私っ!!



「俺がこうやってくっつくのは、ローズとクロエの2人だけだよ。2人のことが俺、本当に大好きなんだっ!!」



キラキラキラキラキラキラッ!!



「・・・・・・!!!」



く、くそっ。

言ってることは二股なのに。

ちょっと、可愛いじゃないか。





「・・・・・・ッ!?」



いやいやいやいや、落ち着け私っ!!


私はレオの飼い主でも親でもないし。
ましてや、恋人でも浮気相手でもありませんっ!!



「だ、だから、こういうことは愛しのローズにだけって何度も言ってるでしょうがっ!!」



ゴンッ!!!



「いってぇーーー!!殴ることないじゃんか、ケチーーーー!!」

「はいはい、ケチで結構!では、グレイ様。また後で♪」

「あぁ、また後でな」

「ズルい、ズルい!ズルい~~~!!!
俺もお茶会に混ざりたいッ!!!」

「お前は、特別体力増強訓練だ」

「げッ!?」



涙目をしながら殴られた頭を両手で押さえて喚き立てるレオをさっさと置いて、私はまだ渡しそびれている団員達に本日のお弁当を配りに歩き出した。



レオとの出会いは、数日前にさかのぼる。

そうだ。
最初が肝心だった!

多分、出会いの時に私がやらかしたから今のレオがいる。



『二股?えぇーー何それ??』

『2人とも好きだし、それが俺の本当だもん!!』

『俺、ローズもクロエも、大好きだよ!!』



そう、どれだけ混じり気のない100%純粋だからって、何でもいいわけじゃないぞ!的なレオがいるんだと思います。

はい。
別のやり方があったかもと、今は少しだけ反省しています。





レオと出会ったのは、アルカンダルでは珍しい大雨の天気の中だった。 




ランチの件があった日の数日後。

お弁当を届け終わった後に帰ろうとするといきなりの大雨に降られて、私は近くにあった騎士院の端に位置する物置小屋のようなところに避難した。



「あぁ~~あ、全身びちょびちょで気持ち悪い。帰ったらすぐにお風呂だな」


とりあえず、身につけていた白いレースの飾りがついたエプロンを外して水気をきって乾かす。

さすがに上下の服は脱げないので、着たままスカートの端をつかんではしぼってを繰り返していた。



「はぁ~~~、風邪ひかなきゃいいけど」

「ーーーーーーーの?」

「えっ?」



部屋のどこからか聞こえた小さい声に、まさか他に人がいるとは思わず一瞬全身がビクッ!!と跳ね上がった。



「誰か、そこにいるの?」


今度は、先ほどよりは大きく聞こえた。


「あ、ごめんなさい!雨が突然降ってきちゃって、しばらく一緒に雨宿りさせて欲しいんですが」


「ーーーーーーー」


「あ、あの、私は城下のレストランで働くクローディア=シャーロットです。あ、あなたは??」




小屋の中に明かりはほとんどないので、隅の方は暗さが深くなり部屋の奥で座り込んでいるだろう、先ほど聞こえてきた声からしておそらくクローディアと同じくらいの青年。

だが、入り口からではその姿はやっぱり見えにくい。




「お、俺は、レオ。騎士の1人だ」

「よかった~~!騎士さまが一緒なら、もう安心ですね!」



はぁ~~と安堵の息を吐いて奥に向かおうすると、その足音で自分の方に向かってきているのに気がついたのか青年はよけいに身体を強張らせた。



「こ、こっちに来るな!!」

「え?」

「い、今、俺体がおかしくて、いつもとなんか違くて・・・・・だから、頼むからそれ以上こっちに来るな!!」

「!?」
 


話しながら、鳴き声が少し混じっているのがわかった。

途中で鼻をすする音もそこには混じっている。




レオ!!

そうだ、思い出した!

愛称がレオこと、レオナルド=ラティーート。

彼は騎士院にて団長であるジークフリート様の下で働く、騎士院内で言えば中の下というポジションな明るく元気な好青年。

生まれはローズと同じ村で、幼馴染。

彼のルートに進むと最初は毎日元気な大型犬ワンコのように出会うたびに飛びついてくっついてきて、すごくびっくりした。

でも人懐っこく成人男性なのにかわいいと感じてしまう幼馴染は、その後どんどんその元気さと笑顔を失っていく。



彼の死亡フラグは、原因不明・治療法不明の謎の病。

幼い頃は大変病弱で、毎日ベットから離れられなかった彼をローズは毎日ように会いに行っては元気付けていたエピソードが途中ではさまれた。

そんな健気でまっすぐで優しいローズに彼は幼いながらも恋をし、彼女を守れる男になるために村を出て王都で騎士院に入り、立派な騎士を目指すこととなる。

騎士院で身体を鍛えて見た目はなんともないように見えていたが、彼の奥で静かに眠る病魔というモンスターはゲーム開始とともに目を覚まし、彼の体力・気力をゆっくり奪っていきゲーム後半のレオはどんどん衰弱していった。



「ゴホゴホッ!!」

「!?」



そうだ。それにこの流れは、彼の病気のことをローズが本格的に知ったイベントによく似ている。

この先に起こるだろうローズとの大切なイベントなのに、モブの私が勝手に進めていいものなんだろうか。



「ゴホゴホッ!く、くそっ!!」

「ッ?!」



今の彼が後々に辿るだろう、その先の姿を知っているだけに病の発現に脅えるレオを見ているだけで胸が苦しくなった。

彼は、あんなにも明るく元気な青年なのに。

ローズの為に病気でガリガリだった自分の体を人一倍努力して鍛えあげ、騎士見習いから騎士になり今も努力し続けているというのに。

病気になったことも本当に偶然で、彼は何も悪くないのに。
 


「ゴホゴホッ!!」

「レオ、そっちに行ってもいいかな?」

「!?」




ごめん、ローズ。
あなたとの大事なイベントかもしれない。

団長のフラグにももしかしたら全く関係なかったり、逆に死亡フラグのきっかけになるのかもしれないけど。

それでも今目の前にいるレオを見て、何もしないで放っておくなんてやっぱりできないよ。



「な、なんで?来るなって言ってるじゃん!!」

「うん。でも、ごめん。私があなたのそばに行きたいんだ」

「!?」




この他者自動回復機能が確かに病気まで治したことはあるものの、その時々で効果に波があるしどこまで役に立てるかも分からない。

彼の病は治療法不明・回復方法すらも不明の謎の病気。

確かゲーム内では死亡フラグ回避の為に、何か特別な道具が必要だったことだけは覚えている。

でも、その道具が魔力だろうと奇跡だろうと完治する可能性があることは証明されたのだ。

それならば、試してやるだけやってみる価値はあるかもしれないじゃないか。

結果がどう転ぶなんて、誰にも分からないのだから。



「く、来るなっ!俺は病気なんだ!
治療法も不明の病気だから、来るとうつるかもしれないぞ!!頼むから来ないでくれっ!!」



レオは泣きじゃくりながら、私に病気のことを打ち明ける。

本当は言いたくなかったろうに、私に病気の影響が受けないようにと必死で叫んでる。
 

本当にレオは優しい。


優しいから、きっと今まで色んなところで病気のことでも傷ついてる。

前世で保育士という仕事をする中で、心が傷つけられて苦しんでいる子どもともたくさん出会った。

すぐになんて受け入れてもらえなかったけど、その子達との関わりは私の方が教えられることばかりだった。

あの時助けているようで、私の方が助けてもらっていた。

温もりや愛を与えているようで、それを本当に望んでいるのは自分自身だということにもすごく気づかされた。

その時に、人が人に求めているものは、きっとみんなそんなに違わないと思ったから。





「そしたら、私は原因不明の人を治す力が急に体にできたんだって話したら、同じように信じてくれる?」



ニッーーーーコリ!



「・・・・・へ?」



ギューーーーーーッ!!!




「は~~い、レオ君つっかま~~えった!!」

「!?」




レオが、私の腕の中で身体を強張らせるのが分かる。



お願い、自動回復機能!
レオの身体を少しでも癒してっ!!




「は、離して!離せ!!なんでこんなことするんだっ!!俺のことなんか、何も知らないくせにっ!!!」

「そうだね。うん、全然知らない」

「・・・・!?」




知ってるとすればゲームの中のことだけかもしれないけど、それだって間違ってるかもしれないけど。



「でも、知ってることもあるよ。あなたが病気だろうとそれをいいわけにしないで、騎士の訓練や努力を人一倍努力してきたこととか」

「!?」

「病気のことを1人で抱え込まずにみんなを巻き込むことだって出来るのに、さっきみたいに人に迷惑かからないようにする優しい人だってことは、会ったばかりの私にだって分かる」


「・・・・・・・」



レオの全身に入っていた力が、少しずつ抜けていく。

自動回復機能の効果が出たんだろうか?




「でも、あなたのことはまだまだ知らないから。だからこれから教えてくれないかな?これからあなたのことを、たくさん聞かせて欲しい」

「・・・・・・・」



ずっとされるがままに抱きしめられていたレオが、私の背中に恐る恐る手を回してそっと触れる。



「なん、で?なんで、会ったばっかりの俺に、そんなこと言うの?」

「!?」



それは確かにごもっとも。

私が他の人から急にそんなことを言われても、何それ?ってへたしたら気持ち悪い!って逃げるかもしれない。

まぁそれでも、今はありのままに伝えるしかない。


「確かに、そう思うよね。私がレオの立場でも同じことを思うだろうし言うと思う。でも私ね、レオの笑った顔が好きなんだ♪」

「えっ??」

「元気いっぱいのレオの笑顔を見て、すごく気持ちが明るくなって私の方が元気をもらってたんだよ」



それは前世の世界のしかもゲームの中のレオだったけど、それでも私の気持ちは嘘じゃない。



「今のあなたも、同じように明るい笑顔で笑っててくれたら嬉しいな。レオが病気で辛い時も側で私がその分笑ってるから、大丈夫な時は一緒にたくさん笑おう♪」

「・・・・・・」





『レオーー!私、レオの笑顔がだーい好き!』

『レオの笑顔見てると、私までつられて笑っちゃうんだもん!』

『レオが病気の時は私が笑ってあげる!元気になったら、また一緒に笑おう~♪』




「・・・・・・ローズ!」  

「!!??」



レオの瞳から、またたくさんの涙が溢れ始める。



「お、俺、ローズと、約束したんだ!」

「約束?」

「り、りっぱな、騎士になるって・・・!」



泣きながらレオの全身が震え始めたので、私は彼を抱きしめる腕に力込めた。



「う、うぅ・・・・ろ、ローズを、守るってっ!!」

「うん、そうだよ。ローズもレオが騎士になるの待ってる。レオが元気になって、逞しい騎士になって迎えに来てくれるのを待ってくれてるよ」


「お、俺・・・・・死にたくない!!絶対に、死にたくないよぉ~~!!」



レオが大きく身体を震わし、私の首元に顔を伏せると思いっきり抱きつきながら子どものように大きな声で泣き出した。

もしかしたら、彼はずっとこんな風に泣きたかったのかもしれない。



「大丈夫。あなたをけっして、死なせたりなんかしない!!」

「!?」

「一緒に、生きられる方法を探そう!!
ローズの為にも、絶対に生きることを諦めちゃダメ!!だってレオは、ローズと一緒に幸せになるんでしょっ!!!」

「・・・・・ッ!!」


 


『レオ!立派な騎士になったら、私のことを迎えに来てね!』

『そしたら、私はレオのお姫様になるから♪』

『2人で一緒に、幸せになろうね♪』




「うん!俺、生きる!!絶対、絶対諦めないで生きる!!ローズが待ってるもん!!」

「そうだよ!とびきりいい男の、素敵な騎士になって、ローズに会いに行こうよ!レオなら絶対できる!!大丈夫!!」

「うん!!・・・・うん!!」




それからしばらくの間レオは私にしがみつき、首元に顔をうずめて泣き続けていた。
そのまま泣き疲れて、子どものように寝てしまうまで、ずっと。

その間中も自動回復機能は彼を癒してくれてたらしくて、目が覚めたレオは身体が全然違うとすごくいい笑顔で元気いっぱいの姿を見せてくれた。


ただ、その時から首元に顔をくっつけるのが彼の癖になってしまったようで。

そうしてるのが一番安心して、とても身体が心地よくて気持ちがいいのだと。


初めの何回かは身体の癒しになればとそのままにしていたが、これをローズが見たら何て思うかを考えたら、とんでもないっ!!と、今に至っているわけです。


まぁ、実際の年齢がアラサーの私からすると年の離れた弟のような気持ちなんだけど、今のクローディアの体は10代だから人から見たらそうは思わないだろうし。

それどころか、もしそれをあの愛しの団長に見られて、少しでも変な誤解でもされたら!!と、後から肝がひえたのだ。




「クロエ!俺、クロエのこと、だーーーい好きだよ!!」

「ハァ。ローズはどうしたの?」

「もちろん!ローズのことも大好き!!」

「おい!!」

「だって、ローズへの好きって気持ちも君への大好き!!って気持ちも、両方ちゃんとあるんだ!!」

「ハァ。何かを、間違えた」

「どうしたの、クロエ?ね、クロエ!ギューーってしていい??」

「だ、だ、ダメに決まってんでしょーーーーーッ!!!」

「ちぇっ」




おかしいな。
俺、クロエのこと好きなのに。


あ、ローズのことも好きだよ!
ローズのことを考えると、心がフワフワして嬉しくなる。

でも、何年も会えてないからかな。
どんどんローズとの思い出も忘れて行くんだ。

キレイな思い出は心の中に残ってキラキラしているけど、それだけしかなくなってきているのがすごく悲しい。



俺が、おかしいのかな?

長く会えてなくてもみんなそんな風にならないで、全部の思いや思い出をずっと覚えているものなんだろうか。

クロエは毎回なぜか怒られるけど。
でも、同じくらい俺が頑張った時も思いっきり褒めてくれるし一緒に喜んでくれるんだ。

俺の話も、俺が説明へたくそでもちゃんと全部聞いてくれるし。

くっつくのもローズにやりなさい!ってよく怒るけど、でも甘えまくったら最後には仕方ないな~~って許してくれる。

怒った顔も笑った顔も好きだけど、仕方ないなって、少し困ったように笑う顔も俺けっこう大好きなんだ!


なんだか、もっともっと困らせたくなっちゃって。


でも、やっぱり一番はクロエの首元にくっついて全身隙間ないくらいくっついてるのが何よりも気持ちがいい。

彼女はそれを自分の回復機能っていう、魔法みたいなもののせいだっていうけど。


抱きしめたときの温かさとか、柔らかさとか。

抱きしめ返してくれた時のあの心から満たされたような、何かが溢れてくるようなこの気持ちはクロエにしか感じたことがない。


ローズにだって、そんな気持ちはこれまでに感じたことがないんだ。



俺が、おかしいのかな?



クロエともっと一緒にいたいんだ。

もっとくっついていたいし、もっと深いところで繋がりたい。

いっそクロエを、独り占めにしてどこかに閉じ込めてしまいたい。


時々そんな気持ちになったりもするんだ。


 
ローズにはそんな気持ちにならないのに。

いつだって笑顔で幸せでいてくれたらいいって、ローズにはそう思えるのに。


ローズ、俺のこの気持ちはなんなんだろう?

ずっと考えてるのに、答えが全然わからないんだ。

俺がバカなのかな?

君にもう一度会えたら、答えは出るのかな?

クロエに感じる気持ちと同じものを、君にも感じたりするんだろうか?




ねぇ、教えてよーーーーーーーローズ。
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