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女官
しおりを挟む引き続き椿に調査をお願いし、瀕死に近い柳は少し休ませることにした。
今のままでは行き倒れならまだいいが、下手をすれば姿を保てなくなるほど衰弱してしまうのが目に見えている。
それは柳もわかっているようで、頭を深々と下げた後にはすぐさま姿を消し力の回復に努めた。
それを見届けてから、照葉は明日は早いので軽く体を清めてから食事を摂って休もうと考えていたところへ。部屋の外から女の声がした。
「失礼いたします」
入ってきたのは、淡い赤色の袿を来た女官だった。
帝の妃に仕える女官たちは、その妃に倣った色の着物を着る。
すなわち、この女官は赤の女御である鶴子の女官ということになるはずだ。
あんな騒ぎがあったその日に、原因の女御の女官がやって来るなんて。
どういうつもりなんだろうと黙っていれば、女官は一礼し口上を述べた。
「本日より儀式の日まで、あなた様専属の女官になりました赤鈴花と申します。生憎と女官の数が足りておりませんので、お侘びの意味も込めて赤の女御様の元より派遣されました由にございます」
「・・・それは帝が命じたこと?それとも女御様が?」
「帝がお命じになったことでございます」
だろうな、と照葉は心の内で思った。
本当に詫びる気持ちがあるにしろ照葉を探る為に女官を派遣するにしろ、あれだけ取り乱しておいてすぐさま冷静に指示が出せるはずがない。
女官のまとめ役がよかれと思って指示を出したにしろ、必ず帝の許可が必要になるのだ。
いくらなんでも許可が下りるのが早すぎるので、照葉に舞姫を頼むと決めていた時からすでに女御たちの誰かから女官を借りる手筈は整えていたんだろう。
今回盛大なやらかしをしたということで、赤の女御から派遣されただけに過ぎない。
特別な裏は無いのだということがわかると、照葉はすぐさま女官に言って湯を貰った後で食事をし、すぐに休むと伝えた。
特に感情を見せることなく、無表情のまま赤鈴花は是と頷くとしずしずと部屋を退室する。
その反応に肩が凝ると思いながら、明日からのことを考えるのだった。
ーーーーーーーーーーーー
「さすがは皇居、食事の内容が全て高級品ばかりだったわ。海が近いから海産物には困らないし、山も近いから新鮮な山の幸も食べ放題なんだから贅沢な話よね」
「・・・お気に召していただけたようでなによりでございます」
「食後のお茶は天露茶にしてちょうだい。飲み終えたら湯で体を拭うわ」
「恐れながら、湯殿の準備は整っておりますが」
「今日はいいわ、明日から入る。せっかく準備してくれたのに悪いわね」
「いいえ。では、すぐに用意いたします」
「お願いね」
またも静かに退出した赤鈴花を見届けて、照葉は思いきり伸びをした。
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