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それなのに、どうしてこんな噂がたったのか。
男爵令嬢ウルティカのような夢見がちな馬鹿女と違って、私は賢く鋭い王妃になるに相応しい教養を兼ね備えた美人な女であるので、当然、元凶に予想はついていました。
元凶はおそらく、私の婚約者であるソレル王太子殿下です。
昔からあの男は性格が悪かった。
顔だけは良いのに、腹黒くて本当に嫌なやつでした。
婚約者として初めて顔を合わせた当初から、ニコニコと表面上は微笑みながらも全身で私を拒絶しているのが、よくわかりました。
でも、私は年齢はともかく内面はソレルよりも大人でしたので、それに気づかないフリをして、同じようにニコニコと笑って、彼に「はじめまして、ルピナと申します。これから婚約者として、よろしくお願いいたしますわ」といって握手を求めました。
すると、ソレルはニコニコと笑ったまま、私の握手に応えると、力一杯、私の手を握りしめてきたのです。
「痛いですわっ!」
痛みに顔をしかめ、声を出すと、ソレルはすぐに手を離し、申し訳なさそうな顔をしていいました。
「ごめん!緊張してしまって力が入りすぎてしまったみたいだ。本当にすまない」
「いいえ、だいじょうぶですわ。お気になさらないでくださいな」
「……すまない」
若干9歳にして、この嘘つきっぷりです。
すまなそうな表情や態度をしていても、ソレルのやつがざまぁみろ、と言わんばかりの空気を出しているのを、私はなんとなく、感じ取っていました。
こうして初対面を終えたのですが、とにかくソレルに対しては、最初から最後まで嫌なやつという印象しか抱けませんでした。
このあと私は屋敷に帰ってから、あの男と結婚なんかしたくない。絶対に嫌だ。と涙ながらに父親に訴えたのですが、もう決まってしまったから身分的にこちらからは断ることはできないから諦めろ、お前は王妃になれるのだ、ソレル様と結婚すればこの国で1番偉い女性になれるのだぞ、と逆に説得をされてしまいました。
昔の私は強くて賢い現王妃様にとても憧れていたのです。
王妃様の後継になれる、というだけで、なんとかソレルの野郎との婚約を、幼い自分に納得させました。
男爵令嬢ウルティカのような夢見がちな馬鹿女と違って、私は賢く鋭い王妃になるに相応しい教養を兼ね備えた美人な女であるので、当然、元凶に予想はついていました。
元凶はおそらく、私の婚約者であるソレル王太子殿下です。
昔からあの男は性格が悪かった。
顔だけは良いのに、腹黒くて本当に嫌なやつでした。
婚約者として初めて顔を合わせた当初から、ニコニコと表面上は微笑みながらも全身で私を拒絶しているのが、よくわかりました。
でも、私は年齢はともかく内面はソレルよりも大人でしたので、それに気づかないフリをして、同じようにニコニコと笑って、彼に「はじめまして、ルピナと申します。これから婚約者として、よろしくお願いいたしますわ」といって握手を求めました。
すると、ソレルはニコニコと笑ったまま、私の握手に応えると、力一杯、私の手を握りしめてきたのです。
「痛いですわっ!」
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「ごめん!緊張してしまって力が入りすぎてしまったみたいだ。本当にすまない」
「いいえ、だいじょうぶですわ。お気になさらないでくださいな」
「……すまない」
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こうして初対面を終えたのですが、とにかくソレルに対しては、最初から最後まで嫌なやつという印象しか抱けませんでした。
このあと私は屋敷に帰ってから、あの男と結婚なんかしたくない。絶対に嫌だ。と涙ながらに父親に訴えたのですが、もう決まってしまったから身分的にこちらからは断ることはできないから諦めろ、お前は王妃になれるのだ、ソレル様と結婚すればこの国で1番偉い女性になれるのだぞ、と逆に説得をされてしまいました。
昔の私は強くて賢い現王妃様にとても憧れていたのです。
王妃様の後継になれる、というだけで、なんとかソレルの野郎との婚約を、幼い自分に納得させました。
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