12 / 16
11
しおりを挟む
1週間後、私は再びディナール様と会っていた。今回は私からのお誘いではなく、ディナール様からのお誘いだ。
大好きなディナール様からのお誘いを私が断るわけがない。
たとえ何か用事があろうともこちらを優先する自信がある。
「あれからディルには会ったかい?」
「いいえ。ディルハム様とは、まだお会いしていません。」
ディルハムからは手紙1通すらも届けられていないし、当然、ふたりで会う機会もない。
いまだに忙しいのだろう、王子の仕事に。
そして、アデール姫にかまうことに。
「え?まだなのかい?まったく、あの子は一体何をもたもたしているんだ」
もしかしたらディナール様は、ディルハムと何かお話しをしてくれたのかも。
たとえば、いい加減、私との婚約の解消を認めるように説得、とかね。
「ディナール様。私が昔、ディナール様のこと好きだったこと覚えていらっしゃいますか」
「あぁ、覚えているよ。あんなに可愛らしい求婚は初めてだったからね」
「私、今でも好きなのですよ。ディナール様のこと」
「へぇ、それは嬉しいな」
返事を返すディナール様は、にこにこと優しく笑っている。
これはまったく相手にされてないなぁ、なんて思いながら私もにっこりと笑う。
これはディナール様にこんな対応をされたらきっと傷ついていただろうから、アデール姫との茶会の前なら、絶対に口に出せなかったことだ。
でも、今なら話せた。ディルハムのことを好きだと自覚した今ならば。
それでも、前世の人生をかけてディナール様を愛していたことには変わりないし、今でも変わらずディナール様のことは別の意味では愛してはいるのだけれど。
「ディナール様。私、ディルハム様がどんな結論を出したとしても、すべてを受け入れるつもりですわ」
「そうなんだ。……だけど、ルビー。ルビーの気持ちはどうなんだい?ディルのことを少しでも好きだと思うのなら、私としては伝えてみるのもありだとは思うのだけれどね」
「気持ちを伝える、ですか」
「うん。さっき私に伝えたようにね」
「……そうですね。考えてみようと思いますわ」
そのあともディナール様と会話の間に王宮御用達のおいしいクッキーをつまみつつ、とても楽しい時間を過ごした。
そしてその夜、ディルハムから手紙が届いた。
少し緊張しつつ、手紙を開くと、内容はいつも通り、短く簡潔に会う日時と場所が書かれていた。だけど、いつもと違って追伸があった。
一緒に贈ったドレスを着てくるように、と。
これは、ディルハムは正式に婚約を解消するつもりなのかもしれない。
その場面を思い浮かべるだけで胸が痛む気がして、耐えるように私は、胸の前でぎゅっと拳を握りしめた。
大好きなディナール様からのお誘いを私が断るわけがない。
たとえ何か用事があろうともこちらを優先する自信がある。
「あれからディルには会ったかい?」
「いいえ。ディルハム様とは、まだお会いしていません。」
ディルハムからは手紙1通すらも届けられていないし、当然、ふたりで会う機会もない。
いまだに忙しいのだろう、王子の仕事に。
そして、アデール姫にかまうことに。
「え?まだなのかい?まったく、あの子は一体何をもたもたしているんだ」
もしかしたらディナール様は、ディルハムと何かお話しをしてくれたのかも。
たとえば、いい加減、私との婚約の解消を認めるように説得、とかね。
「ディナール様。私が昔、ディナール様のこと好きだったこと覚えていらっしゃいますか」
「あぁ、覚えているよ。あんなに可愛らしい求婚は初めてだったからね」
「私、今でも好きなのですよ。ディナール様のこと」
「へぇ、それは嬉しいな」
返事を返すディナール様は、にこにこと優しく笑っている。
これはまったく相手にされてないなぁ、なんて思いながら私もにっこりと笑う。
これはディナール様にこんな対応をされたらきっと傷ついていただろうから、アデール姫との茶会の前なら、絶対に口に出せなかったことだ。
でも、今なら話せた。ディルハムのことを好きだと自覚した今ならば。
それでも、前世の人生をかけてディナール様を愛していたことには変わりないし、今でも変わらずディナール様のことは別の意味では愛してはいるのだけれど。
「ディナール様。私、ディルハム様がどんな結論を出したとしても、すべてを受け入れるつもりですわ」
「そうなんだ。……だけど、ルビー。ルビーの気持ちはどうなんだい?ディルのことを少しでも好きだと思うのなら、私としては伝えてみるのもありだとは思うのだけれどね」
「気持ちを伝える、ですか」
「うん。さっき私に伝えたようにね」
「……そうですね。考えてみようと思いますわ」
そのあともディナール様と会話の間に王宮御用達のおいしいクッキーをつまみつつ、とても楽しい時間を過ごした。
そしてその夜、ディルハムから手紙が届いた。
少し緊張しつつ、手紙を開くと、内容はいつも通り、短く簡潔に会う日時と場所が書かれていた。だけど、いつもと違って追伸があった。
一緒に贈ったドレスを着てくるように、と。
これは、ディルハムは正式に婚約を解消するつもりなのかもしれない。
その場面を思い浮かべるだけで胸が痛む気がして、耐えるように私は、胸の前でぎゅっと拳を握りしめた。
0
お気に入りに追加
900
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢が可愛すぎる!!
佐倉穂波
ファンタジー
ある日、自分が恋愛小説のヒロインに転生していることに気がついたアイラ。
学園に入学すると、悪役令嬢であるはずのプリシラが、小説とは全く違う性格をしており、「もしかして、同姓同名の子が居るのでは?」と思ったアイラだったが…….。
三話完結。
ヒロインが悪役令嬢を「可愛い!」と萌えているだけの物語。
2023.10.15 プリシラ視点投稿。

退屈令嬢のフィクサーな日々
ユウキ
恋愛
完璧と評される公爵令嬢のエレノアは、順風満帆な学園生活を送っていたのだが、自身の婚約者がどこぞの女生徒に夢中で有るなどと、宜しくない噂話を耳にする。
直接関わりがなければと放置していたのだが、ある日件の女生徒と遭遇することになる。

悪役令嬢アンジェリカの最後の悪あがき
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【追放決定の悪役令嬢に転生したので、最後に悪あがきをしてみよう】
乙女ゲームのシナリオライターとして活躍していた私。ハードワークで意識を失い、次に目覚めた場所は自分のシナリオの乙女ゲームの世界の中。しかも悪役令嬢アンジェリカ・デーゼナーとして断罪されている真っ最中だった。そして下された罰は爵位を取られ、へき地への追放。けれど、ここは私の書き上げたシナリオのゲーム世界。なので作者として、最後の悪あがきをしてみることにした――。
※他サイトでも投稿中

悪役令嬢、第四王子と結婚します!
水魔沙希
恋愛
私・フローディア・フランソワーズには前世の記憶があります。定番の乙女ゲームの悪役転生というものです。私に残された道はただ一つ。破滅フラグを立てない事!それには、手っ取り早く同じく悪役キャラになってしまう第四王子を何とかして、私の手中にして、シナリオブレイクします!
小説家になろう様にも、書き起こしております。

悪役令息の婚約者になりまして
どくりんご
恋愛
婚約者に出逢って一秒。
前世の記憶を思い出した。それと同時にこの世界が小説の中だということに気づいた。
その中で、目の前のこの人は悪役、つまり悪役令息だということも同時にわかった。
彼がヒロインに恋をしてしまうことを知っていても思いは止められない。
この思い、どうすれば良いの?
パーティーを追放された少年は異世界の少女と出会う
たくみ
ファンタジー
「お前はもういらない」
その一言で少年はパーティーを追い出された。
元々雑用係で加わったけど、戦闘なんかもこなして子供ながらに色々と口うるさい事も言ってしまって生意気だったかもしれない。
けど、いきなり追い出すなんてあんまりだ。
でも、僕には彼らとは違う旅の目的があるからずっと一緒に冒険出来る訳ではなかった。
僕の旅の本当の目的は……。
最近の流行りものを書いてみたいと思い立ち書いてみました。
後、バトルシーンの練習です。
なので、打ち切り漫画のように、俺たちの旅はこれからも続くぜ、見たいな感じで終わります事をご容赦ください。

気だるげの公爵令息が変わった理由。
三月べに
恋愛
乙女ゲーの悪役令嬢に転生したリーンティア。王子の婚約者にはまだなっていない。避けたいけれど、貴族の義務だから縁談は避けきれないと、一応見合いのお茶会に参加し続けた。乙女ゲーのシナリオでは、その見合いお茶会の中で、王子に恋をしたから父に強くお願いして、王家も承諾して成立した婚約だったはず。
王子以外に婚約者を選ぶかどうかはさておき、他の見合い相手を見極めておこう。相性次第でしょ。
そう思っていた私の本日の見合い相手は、気だるげの公爵令息。面倒くさがり屋の無気力なキャラクターは、子どもの頃からもう気だるげだったのか。
「生きる楽しみを教えてくれ」
ドンと言い放つ少年に、何があったかと尋ねたくなった。別に暗い過去なかったよね、このキャラ。
「あなたのことは知らないので、私が楽しいと思った日々のことを挙げてみますね」
つらつらと楽しみを挙げたら、ぐったりした様子の公爵令息は、目を輝かせた。
そんな彼と、婚約が確定。彼も、変わった。私の隣に立てば、生き生きした笑みを浮かべる。
学園に入って、乙女ゲーのヒロインが立ちはだかった。
「アンタも転生者でしょ! ゲームシナリオを崩壊させてサイテー!! アンタが王子の婚約者じゃないから、フラグも立たないじゃない!!」
知っちゃこっちゃない。スルーしたが、腕を掴まれた。
「無視してんじゃないわよ!」
「頭をおかしくしたように喚く知らない人を見て見ぬふりしたいのは当然では」
「なんですって!? 推しだか何だか知らないけど! なんで無気力公爵令息があんなに変わっちゃったのよ!! どうでもいいから婚約破棄して、王子の婚約者になりなさい!! 軌道修正して!!」
そんなことで今更軌道修正するわけがなかろう……頭おかしい人だな、怖い。
「婚約破棄? ふざけるな。王子の婚約者になれって言うのも不敬罪だ」
ふわっと抱き上げてくれたのは、婚約者の公爵令息イサークだった。
(なろうにも、掲載)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる