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隣国のお姫様からのお誘いを断るわけにもいかないので、私は指定された期日と時間にお茶会の会場とされる、姫が滞在中のマカロン侯爵家へとやってきた。
そんなに親しくもない私を呼ぶくらいなので、てっきり学園の何人かの令嬢を招待しているのだと思っていたが、そうではなかった。
案内された部屋に入った瞬間、アデール姫とマカロン公爵令嬢がテーブルに着いており、その二人の間にひとつ席が用意されているのと周りに他にテーブルが用意されていないことから、どうやらアデール姫の参加者は私とアデール姫と侯爵令嬢のみであるようだった。
ふたりに向けられる笑みから、これはなんだか嫌な予感がするなぁと思うけど、来てしまったのだからしょうがないと、私はおとなしくふたりに促されるままに席に着いた。
しばらく、3人で学園の話しなどの当たり障りのない世間話が続けたあと、まるですっかり忘れていたとでもいうような演技をしてアデール姫はようやく本題を話し始めた。
「ところで、ディルのことなのだけれど」
きた、と私は思った。お姫様が学園でもまったく接点のない私をこんなお茶会に誘う理由なんてディルハム絡みのことでしか考えられない。覚悟していたとはいえ、いざ話を持ち出されると緊張した。
「あぁ、緊張なさらないで。私たちは貴女に何かをするつもりはないのよ。ただ、貴女とディルの話をしたくて」
「えぇ、ぜひ。私もアデール殿下とディルハム様についてお話しはしたいと思っていたところですわ」
ディルハムと貴女の邪魔をする気はありませんよ、という気持ちを込めて、私はアデール姫に、にっこりとほほ笑んだ。
それから、アデール姫が話した内容は隣国でのディルハムについての話題が主であった。ディルハムはディナール様と違って、わざわざ自国にいる婚約者に手紙を寄越すようなタイプの性格ではなかったし、隣国から帰ってきてからも慌ただしく、先日、呼び出して話した以外ではまともに話をしていない。だから、私はディルハムが隣国で何をしていたのかどんな人たちと知り合ったのか、まったく知らなかった。そのため、姫の話しは興味深くもあり、面白くない気持ちもあった。まるで婚約者の貴女なんかより自分の方が最近のディルハムについては良く知っているのよ、とでも言われている気分だった。
姫はひとしきり隣国のディルハムでの様子や、そのとき、いかに彼がかっこよかったか等の話をすると、今度は私に昔のディルハムの話を話してくれるように頼んできた。
なんだか、姫には昔のディルハムの話をしたくはない気がしたけれど、この場で話さないわけにもいかないので、深くは話さず簡単に彼の話をした。
私の話を聞く姫はとても楽しそうで、本当にディルハムのことが好きなことが感じ取れた。
この様子だときっとふたりは両想いなのかもしれない。
これではまるで、本当に私は、愛する二人の仲を引き裂く悪役令嬢だ。
そんなに親しくもない私を呼ぶくらいなので、てっきり学園の何人かの令嬢を招待しているのだと思っていたが、そうではなかった。
案内された部屋に入った瞬間、アデール姫とマカロン公爵令嬢がテーブルに着いており、その二人の間にひとつ席が用意されているのと周りに他にテーブルが用意されていないことから、どうやらアデール姫の参加者は私とアデール姫と侯爵令嬢のみであるようだった。
ふたりに向けられる笑みから、これはなんだか嫌な予感がするなぁと思うけど、来てしまったのだからしょうがないと、私はおとなしくふたりに促されるままに席に着いた。
しばらく、3人で学園の話しなどの当たり障りのない世間話が続けたあと、まるですっかり忘れていたとでもいうような演技をしてアデール姫はようやく本題を話し始めた。
「ところで、ディルのことなのだけれど」
きた、と私は思った。お姫様が学園でもまったく接点のない私をこんなお茶会に誘う理由なんてディルハム絡みのことでしか考えられない。覚悟していたとはいえ、いざ話を持ち出されると緊張した。
「あぁ、緊張なさらないで。私たちは貴女に何かをするつもりはないのよ。ただ、貴女とディルの話をしたくて」
「えぇ、ぜひ。私もアデール殿下とディルハム様についてお話しはしたいと思っていたところですわ」
ディルハムと貴女の邪魔をする気はありませんよ、という気持ちを込めて、私はアデール姫に、にっこりとほほ笑んだ。
それから、アデール姫が話した内容は隣国でのディルハムについての話題が主であった。ディルハムはディナール様と違って、わざわざ自国にいる婚約者に手紙を寄越すようなタイプの性格ではなかったし、隣国から帰ってきてからも慌ただしく、先日、呼び出して話した以外ではまともに話をしていない。だから、私はディルハムが隣国で何をしていたのかどんな人たちと知り合ったのか、まったく知らなかった。そのため、姫の話しは興味深くもあり、面白くない気持ちもあった。まるで婚約者の貴女なんかより自分の方が最近のディルハムについては良く知っているのよ、とでも言われている気分だった。
姫はひとしきり隣国のディルハムでの様子や、そのとき、いかに彼がかっこよかったか等の話をすると、今度は私に昔のディルハムの話を話してくれるように頼んできた。
なんだか、姫には昔のディルハムの話をしたくはない気がしたけれど、この場で話さないわけにもいかないので、深くは話さず簡単に彼の話をした。
私の話を聞く姫はとても楽しそうで、本当にディルハムのことが好きなことが感じ取れた。
この様子だときっとふたりは両想いなのかもしれない。
これではまるで、本当に私は、愛する二人の仲を引き裂く悪役令嬢だ。
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