悪役令嬢エリザベート物語

kirara

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エリザベート嬢はあきらめない

相談ごと

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 アルベールは、生徒会室の奥にある会長の部屋にいた。

 宰相セザールは幹部職員のフレイルに紹介された食材の業者と、癒着ゆちゃく関係にあるようだ。

 食堂の女性スタッフのエレナからの情報によると、月に1度は豪華な料亭に招待されているらしい。

その会食には、セザール、フレイル、オーバンと、新しいシェフの4人。そこに接待役として、エレナが招かれるらしい。

 エレナがセザールのお気に入りの愛人だという事は業者も知っている。

エレナ個人にも、高価なネックレスなどの贈り物があるようだ。

 癒着業者の経営者はフレイルの弟。裏で仕切っているのはフレイル本人との事だ。

 学園長からこの件については、学園側と国に任せるようにいわれたけれど、今、ここで、引く気にはなれなかった。

(自分1人で解決するには、時間がかかりすぎる。自分が生徒会長であるうちに解決したい)

アルベールはそう考えていた。

(何とかならないだろうか。)

 その夜、彼は王都学園の男子寮にいた。

同世代で、彼が自分以上と認める唯一の存在。リアム・ノイズを訪ねて来たのだ。

「頑張っているね。アルベール君。
あの時、君を生徒会長に推薦した僕の目は確かだったね」

「まだまだ、貴方には及びませんよ。今日も僕1人ではお手上げの問題を持って、貴方を訪ねてきたのですから。リアム会長」

「リアムでいいよ」

「では、リアム先輩と呼ばせて頂きます。私のことはアルベールと」

「先輩か、悪くないね。アルベール」

「君が僕に相談に来るなんて、よっぽど大きな問題を抱えているんだね。話してみてよ」

 アルベールはエリザベートから、

「食堂の料理は私の口には合いません」

と言われてから、今日までの経緯いきさつをリアムに話した。

「ハハハ、私の口には合いませんか」

リアムは声を出して笑った。

「あの子はね、生まれた時から最高の食材を使って、最高のシェフが作った料理を食べてきたんだ。舌は確かだよ」

「最高の食材でなくても、その食材をキチンと活かした料理が出ていれば、あの子は、何も言わなかったと思うよ。きっと、その新しいシェフは、まがい者だね。

前のシェフのカルロスを呼び戻そう。彼は本物だよ。本物で最高の料理人だよ。

 奥さんの件は、奴らに毒を盛られたか、闇魔法でやられたか。いずれにしても奴らが絡んでいるのは間違いないね。

 僕が直接会いに行って、カルロスから話を聞いてくるよ」

 リアムは瞬間移動が出来る。
ここは、任せておこう。

「宜しくお願いします」

「その他の姑息な犯罪に関しても、任せてもらえるかな?」

 リアムは自分の思いついた計画を話した。

「国王陛下と王妃さま。父上(アフレイド)と母上(マーガレット)。
 この4人をお忍びで、学園側にも知らせずに、食堂でお昼ご飯を食べて頂くのはどうだろう?」

 リアム先輩によると、マーガレット様と王妃様は、こういうお忍びが大好きらしい。

「国王陛下と父上(アフレイド)も誘って、子供達の食堂での様子を見ながら、評判のランチを食されるのはどうだろう?

身分がばれないように、髪の色などを変えて、どこかの伯爵家の親戚とでも、名乗っておけば良いのでは?

きっとご婦人方はワクワクして楽しんで下さるはずだよ。

 そして、皆様には大変申し訳ないのだけれど、そこで、伯爵家用の食材を使った料理を食べて頂くんだ。

最高級の食材を使うのは、侯爵家以上だろ?

エリザの「口に合いません。」どころの騒ぎではなくなるよ。きっと。

 父上には前もって僕から話しておく。陛下の耳に入れるかどうかは、父上に任せよう。

その時に、偶然に、宰相セザールと愛人の逢瀬を見せるのもいいね。
愛人殿に協力をお願いできるかな?」

「わかりました。日にちと時間がわかれば、宰相のセザールを誘って食堂で食事するように、彼女に言っておきますよ」

 国王陛下とアフレイド・ノイズ様が動いて下されば、この件は解決するだろう。有難い。

ご両親にどう伝えるのか。
国王陛下にどう伝えるのか。
このあたりは、リアム先輩にお任せしよう。

 僕の方は連絡をもらってから、エレナを呼び出せばいい。

エレナが誘えば、宰相セザールはきっとお昼の逢瀬に食堂まで足を運ぶことだろう。

リアム先輩、貴方に相談に来てよかった。
そう思って帰途に着くアルベールだった。
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