[R18] 異世界は突然に……

あみにあ

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第三章

旅の終焉①

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《旅の真実⑩の続きとなります》


埃っぽい匂いが鼻を掠め、ガタガタとの小さな音に目覚めると、私は椅子に座らされていた。
体は椅子に固定するようにロープで巻かれ、手首は椅子の後ろに縛られている為、全く体を起こすことが出来ない。
私はすぐに拘束を外そうと魔力を集めようとして見るも……なぜか魔力を感じる事が出来ない。
それならば……と力任せに縄を強く引っ張ってみるが、ガチガチに縛られている手首に鈍い痛みが走った。

はぁ、はぁ、はぁ、ここは……。
私は確か……魔女に森の入口へ飛ばされて……。
それで……そうだわ、あいつに会った。
後ろから殴られて……何かを嗅がされて……。
あぁ……そこからの記憶がないわ……。
意識がないまま、どこかへ運ばれたのね……。

私は大きく息を吸い込み、冷静さを取り戻すと、徐に辺りへ視線を向けてみる。
木製の質素な部屋にはベッドしかなく、生活感がまるでない。
掃除もされていないのだろう、薄暗い部屋には埃が舞っている。
壁には立派なランプがいくつも並び、綺麗な装飾がされていることから……どこかのお屋敷なのだろうか。
窓はカーテンが締め切られている為に外は見えないが、隙間から入る光を見る限り、地下とかではないだろう。

物音一つしない部屋の中、私の息遣いが部屋に響く。
どうにかしてここから逃げ出さないと……。
きっとここから脱出することが出来れば、魔法は使えるはずよ。
私は再び必死にロープを引っ張って見るが……やはり全く取れる気配がしない。
そのままグリグリと手首を動かしてみると、硬く結ばれた縄は緩くなるどころか……抵抗すればするほど硬く強固なものになっていった。
もう……一体何なのよ……。

何度やっても外れる事のない縄に苛立つ中、ガチャッと音と共に、眩しい明かりが部屋の中へ差し込んだ。
目を凝らしながらそちらへ視線を向けてみると、そこには逆行で顔が見えないが……ガタイの良い男が佇んでいる。

「おっ、ようやく目覚めたか」

誰……。
低い男の声に、私は睨みつけるように入口へ視線を向けると、バタンと扉が閉められ、薄暗い中、男がゆっくりゆっくりと私の傍へとやってくる。
ようやく顔が確認できるところまでやってくると、そこには以前ダレルの宿で出会った、顔に傷のある男の姿あった。
男は私の様子にニヤリと口角を上げると、楽しそうに私を見下ろす。
私は無言のまま男を睨みつけていると、彼の手が私へと伸びてきた。

「魔導師のあんたに聞きたい。あんたは俺と会った事を覚えているか?」

何を言っているのこの男は……?
私は訝し気に顔を上げると、答える事無く、じっとサファイヤの瞳を睨みつける。

「チッ、さっさと答えろ……」

怒りが混じった低い声にゾワゾワと恐怖が体に走っていくと、私の体が自然と震え始める。
私は何とか震えを抑え込むと、恐る恐るに口を開いた。

「……覚えているわ。あなた宿屋で襲ってきた男でしょう。不躾に部屋に飛び込んで、襲ってきた男の事を忘れるはずがないわ」

そう冷たく言い放つと、男は私の前へしゃがみ込み、私へ視線をあわせた。

「俺はなぁ……ずっとあんたを探してたんだ。あんたと出会った後……あれは満月の夜だったぁ~。あの日広場から魔力を感じたんだ。あんただと思ってその場所へ向かったんだが……そこにはあんたはいなかった。……だがガキ二人がとてつもない魔法を使ってたんだぁ。何の魔法か俺にはわからなぇが……それを見た翌日に、街が変わった。あんたも知っているだろうが、街から女の姿が突然に消えたんだ。俺の周りには、俺以外女が消える前の世界の事を誰も知らない。不思議だろう……その日を境に全てが変わった……。なぁ~あんたなんでこうなったのかを、知ってるんだろう?」

この男も……セーフィロと同じ……タクミの魔法の傍に居たから……記憶があるのね……。
でもここで話すわけにはいかない。
タクミが禁忌を犯してしまった事は、絶対に言わない。

「……知らないわ」

「ほう……、もう一つ言い忘れたんだが、街が変わった後、あの宿屋行った事を誰も覚えていないんだぁ。それになぁ……あの宿屋は最初からなかったことになってんだ」

衝撃的な事実に私の体がビクッと跳ねると、私は狼狽する中、男から視線を外した。
うそ……。
女性が消えただけじゃなくて、それまでの流れも変わっているの……?
あぁ……でも私が戻った世界は、正しい世界。
……タクミが魔法を使って戻ってくるまでは、世界はまだ一つのだった……。
タクミが戻って、ようやく二つの世界に分かれた。
あれ……でも……誤った未来でも私は魔女に出会っていたわ。
違う様で同じ……、世界が一つになろうと修正しているから……?
でも……本当に歪み原因は……この世界からさらに過去……15年前に始まっていて……。
あぁ、もう!頭がこんがらがってきた……。

口を噤み考え込んでいると、男の手が私の顎を捕えた。
そのまま無理矢理に顔を上げさせられると、サファイヤの瞳が目の前に映る。

「黙ってねぇで、答えろ」

脅かす様な低く鋭い声に私は必死に体を震えを押さえると、男を鋭く睨みつける。

「私は何も知らないわ」

そう言い放ってやると、男はスッと目を細めた。

「……そう簡単に口を割るとは思っちゃいねぇ。ふんっ、その虚勢がいつまでもつかな?」

男は私から体を離すと、徐に懐から鋭いナイフを取り出した。
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