[R18] 異世界は突然に……

あみにあ

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第三章

旅の途中⑦

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魔女を連れたまま階段を下り、私たちはダレルが待っている場所へと向かっていく。
エントランスを抜け外へ出ると、私は木に体を預けているダレルへと手を振って見せた。
しかし木陰の傍に映った彼は頭を抱えながら、激しく体をゆらしている。
その姿に急いで駆けだすと、ダレルは苦虫をかみ殺したような苦痛の表情を浮かべながら、そのまま土の上へと倒れこんだ。
苦しみに悶えながら両手で体を鷲塚む様子に、すぐに彼へ手を伸ばすと、グッタリとした冷たい体を持ち上げた。

「ちょっと大丈夫!?しっかりして!魔女を連れてきたわ!ねぇっ、ほら!」

はぁ、はぁ、はぁ、と荒い息が繰り返される中、私はそっと彼の背へ手を伸ばすと、呼吸を落ち着かせるように、ゆっくりと撫でていく。

「ほう……まさか……人間に交じっているなんてね……」

不穏な声色で囁かれた言葉に顔を上げると、魔女はダレルへと魔力を打ち込んでいた。
光の玉が目の前に迫ってくる中、咄嗟に彼を守るように防御魔法で包み込んだ瞬間……耳元で小さな風を感じたかと思うと、ダレルの中から黒い影が飛び出していくのが目に映った。

「あははっ、ようやく見つけたわぁ~。覚悟しなさいよね……」

私はダレルをギュッと抱きしめたまま、空中を動き回る小さな黒い影を必死で目で追っていく。
魔女は黒い影に向かって指先に魔力を集中させると、魔力で作った玉を投げつけた。
玉は見事にクリーンヒットすると、鉢のように素早く飛んでいた黒い小さな影が地面へと落ちていった。
一体……何が起こっているの?
あれは何……?

私は土の上でピクピクと痙攣する黒い影へ目を向けると、そこには4枚の羽が生えた、10cmほどの人型が映った。
魔女はその小さな人型を魔法で包み込むと、逃がさないように閉じ込めていく。

「お手柄ね~人間の女。まさか本当にこのブラックピクシーを連れてきているなんて思わなかったわ~。これでこの忌まわしい呪いともおさらば。もう、あなたのせいで本当に大変だったんだからね~」

魔女は嬉し気にブラックピクシーを引き寄せると、手の平へとのせ、ツンツンと指先でつつきながら語り掛けていた。

「ちょっと待って……状況が全く読めないんだけれど……」

「あら、あなた……知らないで連れてきたの?」

魔女の質問に、なにがなんだかわからず狼狽する中、腕の中にいたダレルが小さく身震いすると、薄っすらと瞳を開けた。

「ダレルさん!!見て、魔女を連れてきたのよ!」

「はぁ、はぁ、……よかったわぁ……」

ダレルは青白い顔でそう笑みを浮かべると、徐に腕を持ち上げ、私の手をそっと握りしめた。

「魔導師様……本当に……ありがとう……」

囁くような小さな声に耳を傾けていると、次第に彼の瞼が閉じていく。
そのまま握りしめていた彼の手がゆっくりと地面へ落ちていくと、彼は眠るように横たわった。

「ちょっと!!!ダレルさん!しっかりして!!」

激しく彼の体を揺さぶってみるも……彼からは何の反応もかえってこない。
そっと彼の口元へ耳を寄せてみると……微かに呼吸はしているが……虫の息だった。
どういうことなの!?
どうして、どうして、どうして!!!!
私はダレルを支えたまま魔女へ視線を向けると、彼女は黒い小さな影を今にも握りつぶしそうな勢いで、ギュッと握りしめていた。

私は目を凝らして魔女の手の中をよく見てみると、苦しそうに顔を歪めたブラックピクシーが目に映る。
人型の小さな生き物のシルエットは、物語に登場する妖精そのものだった。
だが物語の妖精とは違い、ブラックピクシーは全身真っ黒に染まり、目が異様に血走っている為、可愛いとはいいがたい。
いや……むしろホラー映画に出てきそうな見目だった。

ブラックピクシーが憎しみを込めた目で魔女を見つめる姿に混乱する中、私は体温を感じられないダレルの体を必死に擦っていた。
一体……何が起こっているのよ!!!
あのブラックピクシーがどうして彼の体から出てきたの?
それに呪いはどうなっているのよ!

「ダレルさん、しっかりしなさい!!、魔女にお礼を言うんでしょ!!!」

そう必死にダレルへ語り掛けてみるも……彼はピクリとも反応を見せない。
擦っても擦っても、温かくならない冷たい彼の肌を感じ、自然と私の体が震えていく。
ちょっと待って……なんで、何が起きているのよ!!!
今日の朝は元気だったじゃない!
なのにどうして!!!!
もう……何もわからない……。
お願いよ……ダレルさん……目を覚まして!!
そう願いながら抱いている手に魔力を集めダレルへ流してみるも、魔力は彼に吸収されることはなく、目を開けてはくれる気配もない。

どうすればいいのか、どうすればダレルが目覚めるのかと頭を悩ませていると、ふと遠くから悲鳴が聞こえた。
その声にハッと顔を上げると、そこには何かにもがき苦しむブラックピクシーが、私を真っ赤な瞳で睨みつけていた。
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