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第三章
序章
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彼女が時空移転魔法を使い、時空の狭間に飛ばされた。
その刹那、彼女の目の前に映ったものは……。
*****************************
子供らしい無邪気な笑みを浮かべ走る、水色の瞳に、短髪のブラウンの髪を揺らした少年。
その男の子は蒼い髪を長く伸ばした、アメジストの瞳を浮かべた少年に駆け寄っていった。
「なぁ、見てくれ!俺の親父がいた研究室で、すごい魔法を見つけたんだ!」
「すごい魔法……一体どんな魔法なんだ?」
短髪の髪の少年は含みを持たせる笑みを浮かべると、蒼い髪の少年の手を引いて人気のない場所へと引っ張っていく。
少年は用心深く周りを気にする中、彼は徐に杖を掲げると防音の魔法を唱えた。
「ほら、これだよ。父さんはさぁ……すっげぇ魔法使いだったんだ!!!」
彼は嬉しそうに少年の前によれよれになった紙を広げると、そこには時空移転魔法と記されていた。
「おぃ、これは……ダメだろう。国で禁止されている魔法じゃないか!」
「やだよ!父さんが見つけたこの魔法は俺の物だ!」
「いやいや、お前それを使えば……捕まるぞ」
「わかってる……。でも……俺はどうしても、父さんと母さんに会いたいんだ。……どうして俺を残して死んだのかわからない……誰も教えてくれないからな……きっとこれは神様からの贈り物なんだ!俺はこの魔法を使って父さんと母さんに会いに行く」
そう力強く話す短髪の少年の様子に、蒼い髪の少年は唇を強く格むと、複雑そうな表情を浮かべていた。
「……いつやるんだ?」
「そうだな~。一番魔力が高まる、満月の日にしようと思ってる」
「はぁ!?満月って……明日じゃないか!!」
ターコイズの瞳を浮かべた少年はニヤリと笑みを浮かべると、必ず戻ってくるからと言ってアメジストの瞳をした少年の前を去っていった。
場面が切り替わるようにスライドすると、空にはまん丸な大きな月が浮かんでいた。
ふと目線を落とすと、何もないただっぴろい広場で、少年は土の上に複雑な模様を描いていくと、彼の周辺には、魔力が集まっていった。
そうして描かれた模様から強い光が発せられると、広場一面を照らしていた。
そんな光が集まる中央では、短髪の少年がニッコリと笑みを浮かべながら、ボソボソと何かを唱えたかと思うと……少年の姿が霞んでいく。
眩い光線があたり一面に広がる中、軽い調子で、必ず戻るからな~!と少年が手を振った瞬間、短髪の髪をした少年はその場から、跡形もなく消え去った。
取り残された少年は呆然とその場に立ち尽くしていると、広場に強い風が吹き荒れる。
蒼い髪の少年はギュッと拳を強く握りしめると、動くこともできず、その場に縫い付けられたように固まっている。
次第に光がなくなり、少年は先ほど彼が居た場所へかけていくと、そこには彼が居た痕跡すら残ってはいなかった。
誰もいなくなった広場で……どれぐらい時間がたったのだろうか……ふと目の前に明るい光が現れると、そこには消えたはずの少年の姿が現れた。
短髪の少年はニヤリと笑みを浮かべると、蒼い髪の少年へと近づいていく。
「お……お前……もう帰ってきたのか?それで……両親に会う事は出来たのか?」
「あぁ、俺の両親は……魔導士だった。二人がどうして死んだのかは、わからなかったけれど……それでも俺の存在を快く迎い入れてくれた。もう俺に思い残すことはない!俺を騎士団へ突き出してくれ」
少年は潔く両手を差し出した。
「バカッ……僕は何も見ていない。ターキィーミは何も……何の魔法も使っていない」
そう言い切った蒼い髪の少年は、今にも泣きそうな笑みを浮かべる短髪の少年へと手を伸ばすと、強く引き寄せる。
眩い月明かりが照らす広場で、二人は強く抱き合うと、土に描かれていた魔法陣がゆっくりと風に吹かれ消え去っていった。
その刹那、彼女の目の前に映ったものは……。
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子供らしい無邪気な笑みを浮かべ走る、水色の瞳に、短髪のブラウンの髪を揺らした少年。
その男の子は蒼い髪を長く伸ばした、アメジストの瞳を浮かべた少年に駆け寄っていった。
「なぁ、見てくれ!俺の親父がいた研究室で、すごい魔法を見つけたんだ!」
「すごい魔法……一体どんな魔法なんだ?」
短髪の髪の少年は含みを持たせる笑みを浮かべると、蒼い髪の少年の手を引いて人気のない場所へと引っ張っていく。
少年は用心深く周りを気にする中、彼は徐に杖を掲げると防音の魔法を唱えた。
「ほら、これだよ。父さんはさぁ……すっげぇ魔法使いだったんだ!!!」
彼は嬉しそうに少年の前によれよれになった紙を広げると、そこには時空移転魔法と記されていた。
「おぃ、これは……ダメだろう。国で禁止されている魔法じゃないか!」
「やだよ!父さんが見つけたこの魔法は俺の物だ!」
「いやいや、お前それを使えば……捕まるぞ」
「わかってる……。でも……俺はどうしても、父さんと母さんに会いたいんだ。……どうして俺を残して死んだのかわからない……誰も教えてくれないからな……きっとこれは神様からの贈り物なんだ!俺はこの魔法を使って父さんと母さんに会いに行く」
そう力強く話す短髪の少年の様子に、蒼い髪の少年は唇を強く格むと、複雑そうな表情を浮かべていた。
「……いつやるんだ?」
「そうだな~。一番魔力が高まる、満月の日にしようと思ってる」
「はぁ!?満月って……明日じゃないか!!」
ターコイズの瞳を浮かべた少年はニヤリと笑みを浮かべると、必ず戻ってくるからと言ってアメジストの瞳をした少年の前を去っていった。
場面が切り替わるようにスライドすると、空にはまん丸な大きな月が浮かんでいた。
ふと目線を落とすと、何もないただっぴろい広場で、少年は土の上に複雑な模様を描いていくと、彼の周辺には、魔力が集まっていった。
そうして描かれた模様から強い光が発せられると、広場一面を照らしていた。
そんな光が集まる中央では、短髪の少年がニッコリと笑みを浮かべながら、ボソボソと何かを唱えたかと思うと……少年の姿が霞んでいく。
眩い光線があたり一面に広がる中、軽い調子で、必ず戻るからな~!と少年が手を振った瞬間、短髪の髪をした少年はその場から、跡形もなく消え去った。
取り残された少年は呆然とその場に立ち尽くしていると、広場に強い風が吹き荒れる。
蒼い髪の少年はギュッと拳を強く握りしめると、動くこともできず、その場に縫い付けられたように固まっている。
次第に光がなくなり、少年は先ほど彼が居た場所へかけていくと、そこには彼が居た痕跡すら残ってはいなかった。
誰もいなくなった広場で……どれぐらい時間がたったのだろうか……ふと目の前に明るい光が現れると、そこには消えたはずの少年の姿が現れた。
短髪の少年はニヤリと笑みを浮かべると、蒼い髪の少年へと近づいていく。
「お……お前……もう帰ってきたのか?それで……両親に会う事は出来たのか?」
「あぁ、俺の両親は……魔導士だった。二人がどうして死んだのかは、わからなかったけれど……それでも俺の存在を快く迎い入れてくれた。もう俺に思い残すことはない!俺を騎士団へ突き出してくれ」
少年は潔く両手を差し出した。
「バカッ……僕は何も見ていない。ターキィーミは何も……何の魔法も使っていない」
そう言い切った蒼い髪の少年は、今にも泣きそうな笑みを浮かべる短髪の少年へと手を伸ばすと、強く引き寄せる。
眩い月明かりが照らす広場で、二人は強く抱き合うと、土に描かれていた魔法陣がゆっくりと風に吹かれ消え去っていった。
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