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第二章
閑話:彼女と過ごす日々7
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時は少しさかのぼる。
あの日エヴァンがセーフィロと図書館で出会った事で、彼が戻ってきた事実はすぐに城内に知れ渡った。
アーサー殿下を王位から降ろそうとする貴族達は、こぞってセーフィロのところへ押しかける。
そんな城中が騒がしくなる中、とるあ応接室には、男5人が集まっていた。
大きな広間にあるソファーの中央には、アーサーが足を組みドッシリと腰かけ、その後ろには護衛をするように、腰に剣を差したブレイクが静かに佇んでいる。
その向かいには、レックスがアーサーを覗う様に座っており、レックスの後ろにはエヴァンが杖を片手に、立っていた。
そんな彼らのすぐそばには、絨毯の上で丸くなる獣が一匹……、ネイトが犬の様に寝そべっている。
重々しい空気が流れる中、徐にエヴァンが杖で床を軽く叩くと、重い口を開いた。
「皆さま、この度はお時間を頂き、ありがとうございます。さて、お集り頂きましたのは、異世界の姫が夜会に参加する事についてでございます。セーフィロ様がおられる今、参加は必然となるでしょう。先ず彼女には、夜会の準備が必要となります」
「そうだが……あいつが素直に受け取ると思わないぜ」
アーサーは何かを思い出す様に、不貞腐れながらそう呟くと、エヴァンはアーサーへと顔を向ける。
「それは皆さんで分担してお渡しすれば大丈夫でしょう。彼女は見目に反して、中身は大人びている。夜会に参加する為に必要だと話せば、受け取って頂けるかと……」
その言葉にアーサーは勢いよく顔を上げると、ソファーから立ち上がった。
「なら俺はドレスとネックレスを贈る。ネックレスはすでに用意してあるからな。ドレスは俺好みに仕立ててやるよ」
「ちょっと待て、くそっ……なら俺はストールと靴だ」
「でしたら僕は手袋とアンクルにしましょう」
「私は腕輪とピアス……髪飾りを贈る」
いつの間にか人型になっていたネイトは、アーサーとレックスの前に割り込むと、紅の瞳を鋭く細め、そう言い放った。
彼女に贈る物が決まり、男4人ワイワイガヤガヤと彼女に似合う色や、デザインなどの話で盛り上がる中、エヴァンはそんな4人を静かに眺めていた。
「アーサー、お前ドレスの色はどうするんだ?」
「俺の瞳の色と同じ淡いオレンジだな」
「ドレスがオレンジでしたら……手袋は淡い黄色にしましょう」
「なら私は彼女に赤いピアスを贈る……」
そんな話が繰り返される中、レックスは一人口を閉ざしていたエヴァンへと振り返った。
「そういえば、エヴァンはどうするつもりなんだ?」
エヴァンはその言葉に笑みを深めると、ゆっくりと前に進み出る。
「私は当日、彼女のドレスアップを担当致します。この城へ来る前に、そういった事も学んでおりましたので……女性は嫌いですが……着飾るのは得意ですからね」
「はぁっ!!!」
「おぃ、それは!」
エヴァンの言葉に皆が唖然とする中、不穏な空気があたりを包む。
彼女の姿を一番に見られる特権に、彼らの視線がエヴァンへと集中した。
「何ですか?なら私以外に、彼女のドレスアップを出来る方はおられるのでしょうか?髪をセットし、ドレスを着せ、化粧をする。……アーサー殿下はドレスを着せるというよりも、脱がせるほうが得意そうですがね」
エヴァンは口角を上げると、見据えるようにアーサーへ視線を投げる。
アーサーはグゥの根も出ない言葉に押し黙ると、拗ねた様子でプイッとそっぽを向いた。
そんな二人のやり取りが行われる中、レックスはその手があったか……と頭を垂れ、何やらブツブツと呟いていた。
皆が押し黙る中、エヴァンはレックスの方へ近づいていくと、項垂れる彼の肩を軽く叩いた。
「それとレックス殿。私は彼女のドレスアップに必要な物をそろえる為に城を出ますので、しばらくの間、彼女の講習をお願いいたします」
そうエヴァンは言い残すと、皆を置いたまま静かに部屋を出て行った。
エヴァンが去った事で、他の者達も応接室を出てくと、そこには誰もいなくなった。
アーサーはすぐに商人を呼び寄せ、彼女に似合うドレスの生地を選び、この国一番有名なデザイナーを呼び寄せていた。
レックスは屋敷へ戻り、母の元へ向かうと、今流行しているデザインやブランドの収集を始めていた。
ブレイクはそのまま街へ向かい、街で有名な高級ブティックへと足を向ける。
ネイトは森へ帰ると、ルビーの原石を探すため……鉱石が豊富にある山へと向かっていった。
エヴァンはというと……。
城を出て森の奥へと入って行くと、彼女に使う香油を探しに来ていた。
彼が昔男娼に居た際に、貴族女性に教えてもらったその香油は、街では手に入れることが出来ない。
(師匠の大事な女性の為だ。)
そう彼は自分を納得させる中、心の奥底から熱い気持ちがこみ上げてくる。
(あの香油を纏った彼女は今以上に艶やかになるだろう。)
そう心が訴えかけてくるが……エヴァンはそれを認めることはない。
エヴァンは霧が漂う薄暗い森の中へ足を延ばすと、魔法を使い、辺りを慎重に探し歩いていた。
あの日エヴァンがセーフィロと図書館で出会った事で、彼が戻ってきた事実はすぐに城内に知れ渡った。
アーサー殿下を王位から降ろそうとする貴族達は、こぞってセーフィロのところへ押しかける。
そんな城中が騒がしくなる中、とるあ応接室には、男5人が集まっていた。
大きな広間にあるソファーの中央には、アーサーが足を組みドッシリと腰かけ、その後ろには護衛をするように、腰に剣を差したブレイクが静かに佇んでいる。
その向かいには、レックスがアーサーを覗う様に座っており、レックスの後ろにはエヴァンが杖を片手に、立っていた。
そんな彼らのすぐそばには、絨毯の上で丸くなる獣が一匹……、ネイトが犬の様に寝そべっている。
重々しい空気が流れる中、徐にエヴァンが杖で床を軽く叩くと、重い口を開いた。
「皆さま、この度はお時間を頂き、ありがとうございます。さて、お集り頂きましたのは、異世界の姫が夜会に参加する事についてでございます。セーフィロ様がおられる今、参加は必然となるでしょう。先ず彼女には、夜会の準備が必要となります」
「そうだが……あいつが素直に受け取ると思わないぜ」
アーサーは何かを思い出す様に、不貞腐れながらそう呟くと、エヴァンはアーサーへと顔を向ける。
「それは皆さんで分担してお渡しすれば大丈夫でしょう。彼女は見目に反して、中身は大人びている。夜会に参加する為に必要だと話せば、受け取って頂けるかと……」
その言葉にアーサーは勢いよく顔を上げると、ソファーから立ち上がった。
「なら俺はドレスとネックレスを贈る。ネックレスはすでに用意してあるからな。ドレスは俺好みに仕立ててやるよ」
「ちょっと待て、くそっ……なら俺はストールと靴だ」
「でしたら僕は手袋とアンクルにしましょう」
「私は腕輪とピアス……髪飾りを贈る」
いつの間にか人型になっていたネイトは、アーサーとレックスの前に割り込むと、紅の瞳を鋭く細め、そう言い放った。
彼女に贈る物が決まり、男4人ワイワイガヤガヤと彼女に似合う色や、デザインなどの話で盛り上がる中、エヴァンはそんな4人を静かに眺めていた。
「アーサー、お前ドレスの色はどうするんだ?」
「俺の瞳の色と同じ淡いオレンジだな」
「ドレスがオレンジでしたら……手袋は淡い黄色にしましょう」
「なら私は彼女に赤いピアスを贈る……」
そんな話が繰り返される中、レックスは一人口を閉ざしていたエヴァンへと振り返った。
「そういえば、エヴァンはどうするつもりなんだ?」
エヴァンはその言葉に笑みを深めると、ゆっくりと前に進み出る。
「私は当日、彼女のドレスアップを担当致します。この城へ来る前に、そういった事も学んでおりましたので……女性は嫌いですが……着飾るのは得意ですからね」
「はぁっ!!!」
「おぃ、それは!」
エヴァンの言葉に皆が唖然とする中、不穏な空気があたりを包む。
彼女の姿を一番に見られる特権に、彼らの視線がエヴァンへと集中した。
「何ですか?なら私以外に、彼女のドレスアップを出来る方はおられるのでしょうか?髪をセットし、ドレスを着せ、化粧をする。……アーサー殿下はドレスを着せるというよりも、脱がせるほうが得意そうですがね」
エヴァンは口角を上げると、見据えるようにアーサーへ視線を投げる。
アーサーはグゥの根も出ない言葉に押し黙ると、拗ねた様子でプイッとそっぽを向いた。
そんな二人のやり取りが行われる中、レックスはその手があったか……と頭を垂れ、何やらブツブツと呟いていた。
皆が押し黙る中、エヴァンはレックスの方へ近づいていくと、項垂れる彼の肩を軽く叩いた。
「それとレックス殿。私は彼女のドレスアップに必要な物をそろえる為に城を出ますので、しばらくの間、彼女の講習をお願いいたします」
そうエヴァンは言い残すと、皆を置いたまま静かに部屋を出て行った。
エヴァンが去った事で、他の者達も応接室を出てくと、そこには誰もいなくなった。
アーサーはすぐに商人を呼び寄せ、彼女に似合うドレスの生地を選び、この国一番有名なデザイナーを呼び寄せていた。
レックスは屋敷へ戻り、母の元へ向かうと、今流行しているデザインやブランドの収集を始めていた。
ブレイクはそのまま街へ向かい、街で有名な高級ブティックへと足を向ける。
ネイトは森へ帰ると、ルビーの原石を探すため……鉱石が豊富にある山へと向かっていった。
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城を出て森の奥へと入って行くと、彼女に使う香油を探しに来ていた。
彼が昔男娼に居た際に、貴族女性に教えてもらったその香油は、街では手に入れることが出来ない。
(師匠の大事な女性の為だ。)
そう彼は自分を納得させる中、心の奥底から熱い気持ちがこみ上げてくる。
(あの香油を纏った彼女は今以上に艶やかになるだろう。)
そう心が訴えかけてくるが……エヴァンはそれを認めることはない。
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