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第二章
俺様王子再び:前編2
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その後も、私は前の世界で見たアニメーションのイメージを駆使し、様々な魔法を作り出した。
エヴァンはそんな私の様子に嬉しそうに笑みを深める姿に、ほっと胸をなでおろす中、私は彼を見つめるように、視線をあわせた。
よし……機嫌も直ったようだし、聞くなら今ね……。
「あの……教えて欲しいのだけど……」
私は徐にローブからスマホを取り出すと、エヴァンへ前へ差し出した。
するとスマホを目にしたエヴァンは顎に手をあて、何かを考えるように空を見つめた。
「それは……あぁ、思い出しました。少し待っていて下さい」
エヴァンは瞳を閉じ、杖を大きく振ると、彼の周りに魔力が集まっていく。
何が始まったのか不思議に思いながら彼を呆然と眺めていると、彼の手元に何かが浮かび上がり始める。
キラキラと光る彼の手元を目を凝らしてよく見てみると、そこには見覚えのあるスマホが握りしめられていた。
「それっ!!!えぇ!?どうしてあなたが、それを持っているのよ!?」
「これはあなたを召喚した際に、私の部屋にあなたが忘れて言った物です。返すのが遅くなって申し訳ございません。失念しておりました」
エヴァンはサッと私の前にスマホを差し出すと、申し訳なさそうに頭を下げる。
私は恐る恐る彼の手からスマホを持ち上げると、すぐに電源ボタンを押した。
しかし予想通り……スマホは長時間放置されていた為、電源は入らない。
「これに電流を流して、電源を……じゃなくて、えーと明かり付けたいんのだけれど……どれぐらい電流を流せばいいのか、イメージできなくて……。何かいい案があれば、教えて下さい」
私はそっと彼を見上げるように視線をあわせると、彼はキョトンとした表情を浮かべていた。
「それなら、明かりがついたその薄っぺらい物をイメージすれば大丈夫ですよ。あなたはそれをどのように付けるのかご存知の様ですし、今のあなたなら簡単に出来ると思いますが……」
彼の言葉に度肝を抜かれる中、私はスマホを凝視した。
あぁ……そうよね……。
何か……私自身で深く考えすぎていたみたいね……。
電源の入ったスマホをイメージすれば、魔法はイメージ通りになる。
スマホが壊れてしまうかもなんて……取り越し苦労だったのね……。
部屋に戻ったら試してみよう。
そう自分の中で納得すると、私は二つのスマホをローブの中へ戻し、エヴァンの指導の下、魔法の訓練へと戻った。
そうして訓練が終わり部屋へ戻ると、私はすぐにスマホを取り出した。
静かな部屋で集中するように意識を研ぎ澄ませると、体に廻る魔力を感じていく。
そのまま脳裏に電源の入ったスマホを思い浮かべると、とりあえず魔女から貰ったスマホに、魔力を流してみる。
慎重に慎重に流す魔力を微調整していくと、ふとスマホに熱を感じた。
するとスマホの画面がパット輝き、たちあがっていった。
すごい……電源が入ったわ!
私は緊張した面持ちでトップ画面が表示されるまで、じっとスマホの画面を眺めていると、魔法の明かりとは違う、懐かしい明かりがついた。
指先で画面をタップすると、スマホにロックはかかっておらず、パッとトップ画面が表示される。
現れた画面にはでかでかと、ピンク色のメモが張り付けられていた。
《あなたのスマホの画像データーを見ると良いわ》
そう短く書かれたメモに私は目を見開く中、私は何かこのスマホの持ち主の手がかりがないか、慌てて電話帳や履歴を開いた。
私が自分のスマホをこの世界に持ってきている事実まで知っているなんて……なんだか怖いわ……。
しかしポチポチと画面をスクロールしてみるが……魔女から貰ったスマホの中身は全ての履歴、電話帳、メールが削除されている。
画像ファイルを開いてみるも……ファイルの中にも何もなかった。
私は深いため息をつき、スマホから手を離すと、ふとスマホの画面が真っ暗になった。
あぁ……魔力で電源をつけると、充電しているわけではないから魔力の流れが止まると切れてしまうのね。
そんな事を考える中、私は気を取直して自分のスマホに魔力を流すと、先ほどのメモにあった通り、画像フォルダを開いていく。
そこには……タクミとの思い出がたくさん詰まっていた。
懐かしい彼の姿に思わず涙があふれる中、私は一枚一枚画像をめくっていく。
一緒に遊園地へ遊びに行った時の写真や、タクミが書いた落書き、あの頃は当たり前だった私たち二人思い出が鮮明に蘇っていく。
写真にあわせ様々な懐かし記憶が思い起こされる中、感慨深い思いで画像に目を走らせていると……一枚の古びた紙の写真が現れた。
これ……。
この世界の文字で書かれたそれは、タクミがいつも持ち歩いていたものだ。
アンティーク風のデザインで、その頃ビンテージ物にはまっていた私は無理を言って、彼に撮らせてもらった一枚。
私は画像を拡大し、目を凝らしてその写真の文字を追っていくと……そこには《時空移転魔法》と書かれていた。
これって……まさか……。
タクミはこの魔法を使って……私の世界へ飛ばされた……時空移転魔法……。
私は解像度を上げると、食い入るように小さな文字を一つ一つ読み取っていく。
あの頃は読めなったけれど、今ならわかるわ……。
細かい字で書かれた文字の周りには、複雑な模様が描かれている。
私はスマホを片手に、すぐに机へ向かい文字を書き写していくが……紙に書かれた文字の中には、私の知らない単語がいくつも現れる。
この部屋に辞書はない……エヴァンに聞けば早いのだろうが……タクミの手紙には確かこの魔法は禁術と書かれていたわ。
なら誰にも話さないほうがいいわよね……。
そう結論付けると、私はペンを強く握りしめ、悩むようにペン先でコンコンと机を叩きながら、じっとスマホの画面を眺めていた。
エヴァンはそんな私の様子に嬉しそうに笑みを深める姿に、ほっと胸をなでおろす中、私は彼を見つめるように、視線をあわせた。
よし……機嫌も直ったようだし、聞くなら今ね……。
「あの……教えて欲しいのだけど……」
私は徐にローブからスマホを取り出すと、エヴァンへ前へ差し出した。
するとスマホを目にしたエヴァンは顎に手をあて、何かを考えるように空を見つめた。
「それは……あぁ、思い出しました。少し待っていて下さい」
エヴァンは瞳を閉じ、杖を大きく振ると、彼の周りに魔力が集まっていく。
何が始まったのか不思議に思いながら彼を呆然と眺めていると、彼の手元に何かが浮かび上がり始める。
キラキラと光る彼の手元を目を凝らしてよく見てみると、そこには見覚えのあるスマホが握りしめられていた。
「それっ!!!えぇ!?どうしてあなたが、それを持っているのよ!?」
「これはあなたを召喚した際に、私の部屋にあなたが忘れて言った物です。返すのが遅くなって申し訳ございません。失念しておりました」
エヴァンはサッと私の前にスマホを差し出すと、申し訳なさそうに頭を下げる。
私は恐る恐る彼の手からスマホを持ち上げると、すぐに電源ボタンを押した。
しかし予想通り……スマホは長時間放置されていた為、電源は入らない。
「これに電流を流して、電源を……じゃなくて、えーと明かり付けたいんのだけれど……どれぐらい電流を流せばいいのか、イメージできなくて……。何かいい案があれば、教えて下さい」
私はそっと彼を見上げるように視線をあわせると、彼はキョトンとした表情を浮かべていた。
「それなら、明かりがついたその薄っぺらい物をイメージすれば大丈夫ですよ。あなたはそれをどのように付けるのかご存知の様ですし、今のあなたなら簡単に出来ると思いますが……」
彼の言葉に度肝を抜かれる中、私はスマホを凝視した。
あぁ……そうよね……。
何か……私自身で深く考えすぎていたみたいね……。
電源の入ったスマホをイメージすれば、魔法はイメージ通りになる。
スマホが壊れてしまうかもなんて……取り越し苦労だったのね……。
部屋に戻ったら試してみよう。
そう自分の中で納得すると、私は二つのスマホをローブの中へ戻し、エヴァンの指導の下、魔法の訓練へと戻った。
そうして訓練が終わり部屋へ戻ると、私はすぐにスマホを取り出した。
静かな部屋で集中するように意識を研ぎ澄ませると、体に廻る魔力を感じていく。
そのまま脳裏に電源の入ったスマホを思い浮かべると、とりあえず魔女から貰ったスマホに、魔力を流してみる。
慎重に慎重に流す魔力を微調整していくと、ふとスマホに熱を感じた。
するとスマホの画面がパット輝き、たちあがっていった。
すごい……電源が入ったわ!
私は緊張した面持ちでトップ画面が表示されるまで、じっとスマホの画面を眺めていると、魔法の明かりとは違う、懐かしい明かりがついた。
指先で画面をタップすると、スマホにロックはかかっておらず、パッとトップ画面が表示される。
現れた画面にはでかでかと、ピンク色のメモが張り付けられていた。
《あなたのスマホの画像データーを見ると良いわ》
そう短く書かれたメモに私は目を見開く中、私は何かこのスマホの持ち主の手がかりがないか、慌てて電話帳や履歴を開いた。
私が自分のスマホをこの世界に持ってきている事実まで知っているなんて……なんだか怖いわ……。
しかしポチポチと画面をスクロールしてみるが……魔女から貰ったスマホの中身は全ての履歴、電話帳、メールが削除されている。
画像ファイルを開いてみるも……ファイルの中にも何もなかった。
私は深いため息をつき、スマホから手を離すと、ふとスマホの画面が真っ暗になった。
あぁ……魔力で電源をつけると、充電しているわけではないから魔力の流れが止まると切れてしまうのね。
そんな事を考える中、私は気を取直して自分のスマホに魔力を流すと、先ほどのメモにあった通り、画像フォルダを開いていく。
そこには……タクミとの思い出がたくさん詰まっていた。
懐かしい彼の姿に思わず涙があふれる中、私は一枚一枚画像をめくっていく。
一緒に遊園地へ遊びに行った時の写真や、タクミが書いた落書き、あの頃は当たり前だった私たち二人思い出が鮮明に蘇っていく。
写真にあわせ様々な懐かし記憶が思い起こされる中、感慨深い思いで画像に目を走らせていると……一枚の古びた紙の写真が現れた。
これ……。
この世界の文字で書かれたそれは、タクミがいつも持ち歩いていたものだ。
アンティーク風のデザインで、その頃ビンテージ物にはまっていた私は無理を言って、彼に撮らせてもらった一枚。
私は画像を拡大し、目を凝らしてその写真の文字を追っていくと……そこには《時空移転魔法》と書かれていた。
これって……まさか……。
タクミはこの魔法を使って……私の世界へ飛ばされた……時空移転魔法……。
私は解像度を上げると、食い入るように小さな文字を一つ一つ読み取っていく。
あの頃は読めなったけれど、今ならわかるわ……。
細かい字で書かれた文字の周りには、複雑な模様が描かれている。
私はスマホを片手に、すぐに机へ向かい文字を書き写していくが……紙に書かれた文字の中には、私の知らない単語がいくつも現れる。
この部屋に辞書はない……エヴァンに聞けば早いのだろうが……タクミの手紙には確かこの魔法は禁術と書かれていたわ。
なら誰にも話さないほうがいいわよね……。
そう結論付けると、私はペンを強く握りしめ、悩むようにペン先でコンコンと机を叩きながら、じっとスマホの画面を眺めていた。
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