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第五章
最終話:世界の意思
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タクミの力を借りて召喚魔法はあっさり成功した。
魔女の話では私をここへ呼び寄せたときよりも、エレナの世界から呼び出す方が簡易だったようだ。
召喚する経緯は同じでも、その後の定着させる行為は不要。
だからエレナもこの世界へきて何事もなく定着できたようだ。
魔女曰くこの世界はあの世界を見本に作られた世界で、だからこそエレナの壮大な魔法がこの世界でも通用したのだ。
エレナの世界は昔、この世界と同じ魔力が溢れ自然豊かな大地だった。
しかし人間たちが利益と利便性を追求した結果、自然界のバランスが崩れ川が氷、海が氷、そして太陽が消え氷河期になってしまったのだと。
エレナの世界では、世界は干渉できず、美しい世界が滅びる様を、ただただ見ていることしか出来なかった。
植物が死に動物が死にそして人間もたくさん死んでいった。
暗黒が訪れ絶望する中で、生き残った残った人間たちは魔法でドームを作り、新たな街を創り出したのだ。
創り出した街は世界の理想とは程遠い近代的で人間的だった。
見る影もなくなったあの世界を嘆き、新たに作り出したのがこの世界。
同じ過ちを繰り返さぬよう、魔女という管理人そして自然を守る神獣の存在を創り出すことで、自然を守り世界の声を届くようにしたのだ。
今更ながらエレナが落とした魔法の本に書かれた魔法が、この世界で問題なく使えるのはおかしいな話。
あの世界とエレナの世界が同じだからこそ安易に使うことが出来たのだろう。
召喚し現れたのはエレナの母だけでなくリョウも一緒だった。
正直召喚した後どうなるのか不安だったけれど、この世界とあの世界の元が同じなのなら、二人とも不自由なく魔法が使え暮らしていけるだろう。
ただ魔女は世界から何かを言われているのか、この地へ定着させる前に魔女が二人を預かることになった。
そしてその後、私は魔女から全ての魔力を奪われ、ただの人となってしまった。
魔力を一切持たぬ者。
もう以前のように魔力を感じることも使うことも出来ない。
魔力を奪われた瞬間、魔力切れとは違う体の奥にあった熱が一気に抜けたそんな気がした。
暫くすると騒ぎを聞きつけた東の国、西の国の人々が集まり始める。
パトリシアに続きラボの人たち、東の国からアーサーと東の国の王子がやってきた。
「やぁ初めまして僕はノーバード。想像していた以上に美しいお嬢さんだね」
そういってニカっと笑った彼は、端正な顔立ちでまさしく物語に出てくる王子様のようだ。
差し伸べられた手をおずおず握り返すと、ポッと頬が熱くなる。
「初めまして、ありがとうございます」
「おいおい、うちのお姫様を口説かないでもらおう」
ノーバードを押しのけやってきたのは、ブラウンの髪に琥珀色の瞳。
「アーサーッッ、あっ、ごめんなさい、アーサーさまお久しぶりです」
「アーサーで構わない、久しぶりだな、こうしてまた会えて嬉しいぜ」
そう言って笑った彼は、以前とは違う。
初めて出会った彼は影がありぶっきらぼうで子供っぽくて、わがまま王子だった。
だけど今は落ち着いた雰囲気で、とても大人びている。
過去を変えたことで、彼にも変化があったのかもしれない。
「もうエヴァンには会ったのか?」
私はコクリと渦鳴くと、一人離れたところに佇む彼の姿を見つめる。
あれはあからさまに私から距離をとっているわよね……。
私の視線を追うようにアーサーは振り返ると、首を傾げた。
「なんだあいつ?なんであんなところにいるんだ?」
「えっ……その……怒らせてしまったみたいで……」
理由は定かではないが、怒っているのは間違いない。
シュンっと肩を落としていると、アーサーがエヴァンに向かって叫んだ。
「おーいエヴァン、何拗ねてるんだ?こっちへ来いよ。寝る間も惜しんで研究に没頭して、俺が止めなきゃ倒れてたぜ。それほど会いたがってただろう?もしかしていざ目の前にすると恥ずかしくて目を合わせられないとかか?そんなガキみたいなこと考えてんのかー?」
揶揄うような言葉にエヴァンのこめかみがピクピク動くと、魔力が溢れ出した。
ゆっくりこちらへ近づいてくると、アーサーはビビる様に後ずさる。
「どういう意味でしょうか?私がそんな子供じみているように見えるのですか?……アーサー殿」
「おいおい、落ち着けって、なっ。冗談じゃねぇかー、はっはっは……」
アーサーは両手を広げエヴァンを宥めるが、怒りは全く収まっていない。
ひぃぃっと小さな悲鳴をあげると、アーサーは回れ右をし慌てた様子で逃げていった。
*************************
次話は10/9(土)更新です!
タイトル【帰ってきた場所】
魔女の話では私をここへ呼び寄せたときよりも、エレナの世界から呼び出す方が簡易だったようだ。
召喚する経緯は同じでも、その後の定着させる行為は不要。
だからエレナもこの世界へきて何事もなく定着できたようだ。
魔女曰くこの世界はあの世界を見本に作られた世界で、だからこそエレナの壮大な魔法がこの世界でも通用したのだ。
エレナの世界は昔、この世界と同じ魔力が溢れ自然豊かな大地だった。
しかし人間たちが利益と利便性を追求した結果、自然界のバランスが崩れ川が氷、海が氷、そして太陽が消え氷河期になってしまったのだと。
エレナの世界では、世界は干渉できず、美しい世界が滅びる様を、ただただ見ていることしか出来なかった。
植物が死に動物が死にそして人間もたくさん死んでいった。
暗黒が訪れ絶望する中で、生き残った残った人間たちは魔法でドームを作り、新たな街を創り出したのだ。
創り出した街は世界の理想とは程遠い近代的で人間的だった。
見る影もなくなったあの世界を嘆き、新たに作り出したのがこの世界。
同じ過ちを繰り返さぬよう、魔女という管理人そして自然を守る神獣の存在を創り出すことで、自然を守り世界の声を届くようにしたのだ。
今更ながらエレナが落とした魔法の本に書かれた魔法が、この世界で問題なく使えるのはおかしいな話。
あの世界とエレナの世界が同じだからこそ安易に使うことが出来たのだろう。
召喚し現れたのはエレナの母だけでなくリョウも一緒だった。
正直召喚した後どうなるのか不安だったけれど、この世界とあの世界の元が同じなのなら、二人とも不自由なく魔法が使え暮らしていけるだろう。
ただ魔女は世界から何かを言われているのか、この地へ定着させる前に魔女が二人を預かることになった。
そしてその後、私は魔女から全ての魔力を奪われ、ただの人となってしまった。
魔力を一切持たぬ者。
もう以前のように魔力を感じることも使うことも出来ない。
魔力を奪われた瞬間、魔力切れとは違う体の奥にあった熱が一気に抜けたそんな気がした。
暫くすると騒ぎを聞きつけた東の国、西の国の人々が集まり始める。
パトリシアに続きラボの人たち、東の国からアーサーと東の国の王子がやってきた。
「やぁ初めまして僕はノーバード。想像していた以上に美しいお嬢さんだね」
そういってニカっと笑った彼は、端正な顔立ちでまさしく物語に出てくる王子様のようだ。
差し伸べられた手をおずおず握り返すと、ポッと頬が熱くなる。
「初めまして、ありがとうございます」
「おいおい、うちのお姫様を口説かないでもらおう」
ノーバードを押しのけやってきたのは、ブラウンの髪に琥珀色の瞳。
「アーサーッッ、あっ、ごめんなさい、アーサーさまお久しぶりです」
「アーサーで構わない、久しぶりだな、こうしてまた会えて嬉しいぜ」
そう言って笑った彼は、以前とは違う。
初めて出会った彼は影がありぶっきらぼうで子供っぽくて、わがまま王子だった。
だけど今は落ち着いた雰囲気で、とても大人びている。
過去を変えたことで、彼にも変化があったのかもしれない。
「もうエヴァンには会ったのか?」
私はコクリと渦鳴くと、一人離れたところに佇む彼の姿を見つめる。
あれはあからさまに私から距離をとっているわよね……。
私の視線を追うようにアーサーは振り返ると、首を傾げた。
「なんだあいつ?なんであんなところにいるんだ?」
「えっ……その……怒らせてしまったみたいで……」
理由は定かではないが、怒っているのは間違いない。
シュンっと肩を落としていると、アーサーがエヴァンに向かって叫んだ。
「おーいエヴァン、何拗ねてるんだ?こっちへ来いよ。寝る間も惜しんで研究に没頭して、俺が止めなきゃ倒れてたぜ。それほど会いたがってただろう?もしかしていざ目の前にすると恥ずかしくて目を合わせられないとかか?そんなガキみたいなこと考えてんのかー?」
揶揄うような言葉にエヴァンのこめかみがピクピク動くと、魔力が溢れ出した。
ゆっくりこちらへ近づいてくると、アーサーはビビる様に後ずさる。
「どういう意味でしょうか?私がそんな子供じみているように見えるのですか?……アーサー殿」
「おいおい、落ち着けって、なっ。冗談じゃねぇかー、はっはっは……」
アーサーは両手を広げエヴァンを宥めるが、怒りは全く収まっていない。
ひぃぃっと小さな悲鳴をあげると、アーサーは回れ右をし慌てた様子で逃げていった。
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