[R18] 異世界は突然に……

あみにあ

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第五章

新章11:捕らえられた先に

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彼女の姿が消えると、また光が闇の中へと溶け込んでいく。
掌から光がなくなり、暗闇が訪れると、瞬く光粒が浮かび上がった。

「こうやってうちはこの世界へ飛ばされた。改めてみると悲惨な最後やったなぁ」

彼女は悲し気に眉を寄せると、空を見つめるように顔を上げる。

「さっきのは本当にあなたなの?……髪の色それに目の色だって今とは全然違うわ」

「せやねん。でも理由はわからへん。この世界に来た時には今の姿になっとった。でな、こっちで目覚めてな、眩しすぎて大変やった。天井にあんな光の放つ球体何て初めてやったからな。時間がたつに連れて色を変えて移動して行く。それに合わせるように天井が色を変えるんや。最初は何がなんやらようわからんかったわ。外には緑色のもんがいっぱい生えとるし、一日中煩い音が響いてなぁ。適当に穴倉見つけて、耳塞いで籠っとったんわええ思い出や」

彼女は穏やかな口調でそう話すと、深く息を吐き出した。

「でもそれも数日ぐらいやろうか、ようやく太陽の光にも慣れてな。そこからうちの新しい生活が始まった。魔法を使えたんが幸いやった。衣食住は全て魔法で補えたし、周りの森には見たことないもんばっかりでな、飽きることもなかった。手に持っていたはずの本がなくなってたんは焦ったけど、内容はほぼ頭にはいっとる。だから母さんが来るまで、うちは本の内容を思い出しながらノートを作っとったなぁ。けどいくら待っても現れへん。どれぐらい時間が流れたか何てわからんけどな、体が成長して……大人になってようやく気が付いた。母さんがけぇへん事実に。信じたくはなかったけど……あの魔法を使うには相当な魔力が必要や。時間がないってゆうてた状況で、もう一回あの魔法を使うなんて不可能。そう気いついてな、戻ろうとも考えたんやで。けどな……どうにもこうにも自分の世界がどこにあるんか、それがわからんとどうしようもない。うちはずっと天井のあるあの世界で過ごしてきたんや。その向こう側がどうなってるかなんて考えたことあらへんかった」

彼女の瞳が暗がりの中悲し気に揺れると、胸がギュッと締め付けられる。

「……ごめんなさい、なんと言っていいのか……ッッ」

「ええんや、もう過ぎたこと。それに……この世界へ来たからノエルに出会えたんも事実やからな」

柔らかい笑みを浮かべる彼女の掌に、また新たな光が集まり始めると、映像がフワッと浮かび上がった。

そこは深い深い森の中。
川のせせらぎに心地よい鳥の鳴き声。
緑溢れるその中央に、エレナはいた。
先ほどよりも幾分成長し、今隣にいる彼女と同じ姿だ。
彼女は辺りを注意しながらに森を進んで行くと、街の方へと向かって行く。

街にはこの世界の住人たちが溢れ、賑わっていた。
エレナはそんな人々を幹から顔を出しコッソリ覗き込む。
日が高く昇りそして夕日となって沈んでいく中、彼女はずっと人間たちを眺めていた。

「ええなぁ……うちも混ざりたい。けどな……魔法での翻訳もなんや変ななまりがついとるんよな。うーん……まだ早いよな。よし今日はここまでや」

エレナはサッと身を隠すと、ボソボソと何かを唱え始める。
魔力の様子に移転魔法だと気が付くと、彼女の姿はその場から消えていった。

そして場面が切り替わり、エレナは小さな小屋の前に立っていた。
どうやらその小屋はエレナの家のようだ。
つい最近造ったのか……造りは新しく新築。
エレナは鼻歌を歌いながらに歩き始めると、川のほとりへと向かって行った。

川へ到着すると、エレナはバケツに川の水を汲んでいく。

「ふん、ふふん~、ふん、るんるん~♪魔法のない生活もやってみるとおもろいなぁ~」

バシャッと水の跳ねる音が響く中、ふと森の中から人影が現れた。
草木が踏まれる微かな音にエレナは慌てて振り返ると、そこにはノエルの姿。
エレナは驚きのあまり口を半開きのままに固まると、バケツが手から離れ水が辺りへ散らばった。

「こんなところに人が……?何をしているの?」

ノエルはエレナを探るように見つめると、彼女はそれに気が付いていないのだろう、目を泳がせながらモジモジと頭を垂れる。

「うわっ、どうしよう、どないしよ、人間や……不意打ちすぎやろ、待て待て、心の準備が……ブツブツ」

小さなその声はノエルには聞こえてないのだろう、彼は訝し気に眉を寄せると、ゆっくりと近づいて行く。

「……大丈夫?」

「へぇっ、いや、あっと、その……大丈夫や……。えーと、ビックリして……いや、だから……」

「驚かしてごめんね。えーと君の名前は?」

「へぇっ、名前!?あっと、その、うちは……エレナいいます。あんたは?」

「僕はノエル。ところで君はこんなところで何をしているの?」

エレナは転がったバケツを慌てて拾い上げると、彼へ見せつけた。

「あっ、うちは……ッッここへ水を汲みに来たんや。あのっ、もしよかったら、うちの家けぇへん?すぐ近くやねん!」

突拍子もない誘いに、ノエルは一瞬驚いた様子を見せたが、楽しそうに笑い始めるとコクリと頷いた。

そしてまた映像が切り替わっていく。

二人向かい合って楽し気に食事を楽しむ姿。
ノエルの肩越しに本を覗き込み語り合う二人の姿。
指先が触れ見つめあい、頬を染め、何とも甘酸っぱい雰囲気の二人の姿。
距離が近づき、触れるだけの口づけ。
何とも微笑ましい二人の姿に、私は自然と笑みがこぼれていった。
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