319 / 358
第五章
新章5:捕らえられた先に
しおりを挟む
今の一体何だったの?
ノエルが死んで、そしてエレナの存在。
暗闇の中、意識だけが存在する世界で、先ほどの二人の姿を思い描く。
夢や妄想にしては、あまりに現実的すぎるわよね?
答えの出ない問いかけに、深い深い闇の中へ沈んでいく。
するとその先にふと光が差し込むと、先ほどまで感じなかった自分の存在が浮かび上がった。
ハッと目が覚めると、そこは水の中だった。
ローブが脚に絡まると、必死にバタバタと足をばたつかせる。
口からブクブクと空気の泡が上っていく中、私は慌てて水をかき浮上しようとするが、頭上は水で埋め尽くされていた。
息を止め手を伸ばしてみると、指先に固い鉄板のようなものが触れる。
慌てて手のひらで押してみるが、ビクともしない。
息苦しさに泡が辺りを埋め尽くす中、バタバタともがいていると、バチンッと大きな音が耳にとどいた。
「やぁ、目覚めたようだね。大丈夫、大丈夫、落ち着きなさい。ほらゆっくり息を吸い込んで」
声のする方へ顔を向けると、そこにはノエルがニコニコと笑みを浮かべ佇んでいた。
その姿は先ほど見たノエルより幾分老け、まるで死んだはずの彼が生き返り、成長したその姿そのもの。
息を止めることも忘れ彼を凝視する中、小さな気泡が上っていく。
その違和感に私は恐る恐るに呼吸をしてみると、不思議なことに息苦しさがなくなった。
どうなっているの?
唖然とする中、私はキョロキョロと自分の置かれた状況を確認していく。
水の中、人一人が入れるほどの大きさの筒状クリアケース。
実験室などで目にする液体を入れ、生き物などを保存する容器と近い。
ノエルが佇んでいる場所は、整備された土の上、闇が深すぎてどこまで続いているのかわからない。
ポツポツと魔法だろう光を頼りに見渡してみると、天井は分厚い何かで覆われ、柱がポツン、ポツンと均等に並んでいた。
ここは一体どこなの……?
「よかった、落ち着いたようだね。やっとこれで全てが整った」
ニコニコと嬉しそうに笑う彼の姿に、私はキッと睨みつける。
(なんなのよこれは!それよりもみんなは無事なの?)
そう叫ぼうとするが、口から出るのは気泡のみ。
ノエルの言葉は届くのに、私の声は音にすることさえできないようだ。
困惑しながらに金魚のようにパクパクと口を開いていると、ノエルがゆっくりとこちらへ近づいてくる。
「残念だけど、喋る事は出来ないよ、うるさいのはあまり好きではないんだ。でも君の考えている事ならなんとなくわかる。ふふっ、安心するといい、ラボに人たちは無事だよ。君を連れ出す事に成功して、ちゃんと魔法は解いたからね。後は……獣人の坊やと、カミールなら……君の隣にいるよ」
彼の言葉に視線を向けてみると、そこには同じ筒状のクリアケースに入ったシナンとその逆側にはカミールが瞳を閉じたままに水中へ浮かんでいた。
二人の口元から気泡が出ているのを確認すると、ほっと胸を撫で下ろす。
よかったわ、怪我もなさそうね。
でもどうして二人がここにいるの?
二人の姿を交互に見つめる中、ノエルはクスクスと笑い始めた。
「ふふっ、二人がどうしてここにいるのか、気になるのかな?二人はね、君が素直に従ってくれないときの保険だよ。君は不思議な魔法使いだからね。奇異なる存在の聖獣を仲間にしていたり、本当に何が起こるわからない。まぁここから逃げられるとは思わないけれど、もし逃げようとすれば、二人の命はここで消えるよ」
彼の言葉に大きく目を見開く中、カミールのクリアケースの傍に人影が浮かび上がる。
その影はカミールの筒の上へ飛び乗ると、鋭い剣先を真下に向けた。
私が……二人を巻き込んでしまったの……。
キラリと光る剣先に私はノエルに向かって必死で首を横に振ると、人影がサッと飛び降りた。
そうしてノエルの傍へやってくると、そこには見覚えのある男の姿が現れた。
どうして彼がここに?
黒に近い紺色の髪に、狐目の奥には藍色の瞳。
それはまごうことなく、情報屋だと言っていたセドリック、彼だった。
彼とノエルは繋がっていったというの?
なら私の情報は……全てノエルに知られている。
それよりも彼はあまり知られていないという、ノエルの居場所や詳しい情報を知っていたのは仲間だったから。
でもどうして仲間の彼の事をペラペラと喋ったのかしら?
そういえば、あの時彼はわざわざノエルの名を口にした。
もしかしてそれは、私をこの地へおびき寄せるため。
私とカミールは付き合っているとそう思われていた。
だからカミールの前でノエルの話を出すことで、私の興味を引いた……?
「驚いているようだね、彼は私の右腕だ。君をここへ導かせる指南役を任せていたんだ」
「お久しぶりですね、魔法使いさん。またこうしてお会いできとても嬉しく思いますよ」
全ては彼の計画通り……ッッ。
己の不甲斐なさに苛立つ中、柔らかい物腰でそう挨拶をするセドリックを睨みつける。
色々と言いたいことはあるが、声は泡となって消えてしまう。
「さて、早速準備をしようか」
ノエルはそう話すと、床に魔力を集め、光の線を描いていく。
浮かび上がる光は自由自在に動き回ると、大きな円を描き始めると、そこには陣が浮かび上がった。
現れたその陣に私は大きく目を見開くと、凝視するように見つめていた。
この陣……まさか……私はこの陣を知っているわ。
これは時空移転魔法……まさかノエルは……ッッ一体どこへ行くというの?
私は光が溢れる陣を目で追う中、時を示す印を探していく。
そこに描かれていたのは、今から300年以上も前の日付だった。
300年も前に戻ろとしている、一体どうして?
ってその前にそんな昔へ戻る事なんて可能なの?
確か……タクミの手紙に、己自身が存在しない世界には入れない、そう書いていたはず。
なら彼はまだ生まれていない世界、入ることが出来ないのではないの?
ノエルが死んで、そしてエレナの存在。
暗闇の中、意識だけが存在する世界で、先ほどの二人の姿を思い描く。
夢や妄想にしては、あまりに現実的すぎるわよね?
答えの出ない問いかけに、深い深い闇の中へ沈んでいく。
するとその先にふと光が差し込むと、先ほどまで感じなかった自分の存在が浮かび上がった。
ハッと目が覚めると、そこは水の中だった。
ローブが脚に絡まると、必死にバタバタと足をばたつかせる。
口からブクブクと空気の泡が上っていく中、私は慌てて水をかき浮上しようとするが、頭上は水で埋め尽くされていた。
息を止め手を伸ばしてみると、指先に固い鉄板のようなものが触れる。
慌てて手のひらで押してみるが、ビクともしない。
息苦しさに泡が辺りを埋め尽くす中、バタバタともがいていると、バチンッと大きな音が耳にとどいた。
「やぁ、目覚めたようだね。大丈夫、大丈夫、落ち着きなさい。ほらゆっくり息を吸い込んで」
声のする方へ顔を向けると、そこにはノエルがニコニコと笑みを浮かべ佇んでいた。
その姿は先ほど見たノエルより幾分老け、まるで死んだはずの彼が生き返り、成長したその姿そのもの。
息を止めることも忘れ彼を凝視する中、小さな気泡が上っていく。
その違和感に私は恐る恐るに呼吸をしてみると、不思議なことに息苦しさがなくなった。
どうなっているの?
唖然とする中、私はキョロキョロと自分の置かれた状況を確認していく。
水の中、人一人が入れるほどの大きさの筒状クリアケース。
実験室などで目にする液体を入れ、生き物などを保存する容器と近い。
ノエルが佇んでいる場所は、整備された土の上、闇が深すぎてどこまで続いているのかわからない。
ポツポツと魔法だろう光を頼りに見渡してみると、天井は分厚い何かで覆われ、柱がポツン、ポツンと均等に並んでいた。
ここは一体どこなの……?
「よかった、落ち着いたようだね。やっとこれで全てが整った」
ニコニコと嬉しそうに笑う彼の姿に、私はキッと睨みつける。
(なんなのよこれは!それよりもみんなは無事なの?)
そう叫ぼうとするが、口から出るのは気泡のみ。
ノエルの言葉は届くのに、私の声は音にすることさえできないようだ。
困惑しながらに金魚のようにパクパクと口を開いていると、ノエルがゆっくりとこちらへ近づいてくる。
「残念だけど、喋る事は出来ないよ、うるさいのはあまり好きではないんだ。でも君の考えている事ならなんとなくわかる。ふふっ、安心するといい、ラボに人たちは無事だよ。君を連れ出す事に成功して、ちゃんと魔法は解いたからね。後は……獣人の坊やと、カミールなら……君の隣にいるよ」
彼の言葉に視線を向けてみると、そこには同じ筒状のクリアケースに入ったシナンとその逆側にはカミールが瞳を閉じたままに水中へ浮かんでいた。
二人の口元から気泡が出ているのを確認すると、ほっと胸を撫で下ろす。
よかったわ、怪我もなさそうね。
でもどうして二人がここにいるの?
二人の姿を交互に見つめる中、ノエルはクスクスと笑い始めた。
「ふふっ、二人がどうしてここにいるのか、気になるのかな?二人はね、君が素直に従ってくれないときの保険だよ。君は不思議な魔法使いだからね。奇異なる存在の聖獣を仲間にしていたり、本当に何が起こるわからない。まぁここから逃げられるとは思わないけれど、もし逃げようとすれば、二人の命はここで消えるよ」
彼の言葉に大きく目を見開く中、カミールのクリアケースの傍に人影が浮かび上がる。
その影はカミールの筒の上へ飛び乗ると、鋭い剣先を真下に向けた。
私が……二人を巻き込んでしまったの……。
キラリと光る剣先に私はノエルに向かって必死で首を横に振ると、人影がサッと飛び降りた。
そうしてノエルの傍へやってくると、そこには見覚えのある男の姿が現れた。
どうして彼がここに?
黒に近い紺色の髪に、狐目の奥には藍色の瞳。
それはまごうことなく、情報屋だと言っていたセドリック、彼だった。
彼とノエルは繋がっていったというの?
なら私の情報は……全てノエルに知られている。
それよりも彼はあまり知られていないという、ノエルの居場所や詳しい情報を知っていたのは仲間だったから。
でもどうして仲間の彼の事をペラペラと喋ったのかしら?
そういえば、あの時彼はわざわざノエルの名を口にした。
もしかしてそれは、私をこの地へおびき寄せるため。
私とカミールは付き合っているとそう思われていた。
だからカミールの前でノエルの話を出すことで、私の興味を引いた……?
「驚いているようだね、彼は私の右腕だ。君をここへ導かせる指南役を任せていたんだ」
「お久しぶりですね、魔法使いさん。またこうしてお会いできとても嬉しく思いますよ」
全ては彼の計画通り……ッッ。
己の不甲斐なさに苛立つ中、柔らかい物腰でそう挨拶をするセドリックを睨みつける。
色々と言いたいことはあるが、声は泡となって消えてしまう。
「さて、早速準備をしようか」
ノエルはそう話すと、床に魔力を集め、光の線を描いていく。
浮かび上がる光は自由自在に動き回ると、大きな円を描き始めると、そこには陣が浮かび上がった。
現れたその陣に私は大きく目を見開くと、凝視するように見つめていた。
この陣……まさか……私はこの陣を知っているわ。
これは時空移転魔法……まさかノエルは……ッッ一体どこへ行くというの?
私は光が溢れる陣を目で追う中、時を示す印を探していく。
そこに描かれていたのは、今から300年以上も前の日付だった。
300年も前に戻ろとしている、一体どうして?
ってその前にそんな昔へ戻る事なんて可能なの?
確か……タクミの手紙に、己自身が存在しない世界には入れない、そう書いていたはず。
なら彼はまだ生まれていない世界、入ることが出来ないのではないの?
0
お気に入りに追加
2,460
あなたにおすすめの小説
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる