310 / 358
第五章
新章15:立ちはだかる壁
しおりを挟む
彼女は悲しそうに瞳を揺らすと、こちらへ顔を向ける。
「いえ、私にはただの箱にしか見えないです……。本物の魔法使い様じゃないと見えないのかもしれませんね。ところでその描かれている物を、紙に写して頂くことは出来ますかぁ?」
「えぇ、出来るわ。でもその前に教えてほしいの。どうやってこの箱はこちらへやってきたの?」
そう彼女へ問いかけてみると、パトリシアは何かを考え込みながらに、箱をじっと眺めた。
「そうですねぇ~、確か今から数十年前でしょうか……」
この箱を最初に発見したのは、通りすがりの木こりでした。
まだここが只の森で、ラボなどなかった時代です。
たまたまこの辺りを通りかかった彼がこの箱を発見し、中を開けると、無線機と使い方の書かれた紙が入っていたそうです。
彼はその指示通りに無線機を起動させると、そこから声が聞こえてきたんです。
「うわぁ、本当に起動した!?やっと、やっとだ!おーぃ、そこに誰かいるかい?」
「あっ、はい……。へぇ、いや……何だこれ?人の声が……?」
「声もはっきり聞こえるじゃないか。あー師匠に見せてなかったなぁ。いやいや、あー、うー、よしッ。こんにちは!いやぁ、数十年待ったかいがあったよ!僕は東の国の者だ。君は西の国の方かな?」
「東の国……?冗談だろう?イタズラなら……」
「違う違う、本当だよ!誰かは知らないけれど、その無線機を持ってお城へ行ってくれないかな?」
彼は半信半疑のまま、この箱を持って城へやってきました。
城の者も最初は信じられませんでしたが……無線機の彼が話す内容は、魔法に精通してない西の国では知りえない事ばかり。
信憑性等確かめるすべがありませんでしたが……無線機と言うものが危険物ではないと判断すると、女王様の手に渡りました。
それがこの間、女王様が持っていたあの無線機です。
東の国とやり取りできる無線機はあれ一台。
今私たちが手にしている無線機は、あの無線機を分解し新たに作り出した別物です。
離れた者と連絡を取り合う事が出来るので、便利に使わせてもらってます。
それは置いといて……東の国と連絡が取れるようになり、お互いの現状を把握する事に成功しました。
そこで壁を壊す話が出たんですよ、お互い協力し合い壁を破壊しようと。
そうして箱を最初に発見した木こりを呼び出し、拾った場所を特定すると、私たちはその場所へラボを建設しました。
東の国の者の話では、箱はこの場所でしか起動しないそうです。
箱は小さいですが……中に入る大きさの物であれば、相手に送る事が可能。
それを知り、この箱の研究を進めましたが……構造はわからぬまま、同じものを作り出す事は出来ませんでした。
なので最初の頃は、東の国から物が届くだけで、こちらから送る事は出来ませんでした。
ですが研究していく中で、こちらからも物を送ることに成功しました。
色々と条件が必要ですけどね……。
「まぁ長々と話しましたが、結論から言いますと、最初どうやって送られて来たのかはわかりません。東の国へ訪ねてみたのですが、教えて頂けませんでした。そこで魔法使い様に見て頂きたかったんです」
これは東の国が送ってきたものなのね。
見る限り魔法で送ってきている事には間違いなさそう。
でもどうやって……?
彼女の話に耳を傾ける中、再度箱を確認してみると、置かれている台にも魔法陣が薄っすらと書かれている事に気が付いた。
そんな中、ネイトが横から徐に箱へ手を伸ばすと、パトリシアは慌てた様子でそれを静止した。
「箱に触れてはいけません!」
強い口調に、ネイトは無言のまま手を引っ込めると、私へ顔を寄せる。
「姫、この箱自体は魔道具の一種だ。北の国は魔法に特化し、東の国は魔道具に精通している。だがこちら側へ送り込んだ陣は……魔法の一種だな。陣の形状を見る限りかなり古い物だ。100年ほど前の物だろう。陣を読み取るに……移転魔法を応用している」
「魔道具に移転魔法……。でもあれは道筋を知っていないと、発動しないでしょう?」
「あぁ、想像するに……この辺りは森が生い茂り同じ風景が続いている。東の国も同じこと。幾重にもイメージを繰り返し、偶然ここと同じ道筋が一致したのだろう。そんなあやふやなイメージで送ることに成功したのは、只運が良かっただけだ。だから数十年たった今、これ以外何も送れていないのだろう」
ネイトの言葉に深く頷く中、パトリシアは眉間に皺をよせ首を傾げていた。
「魔法使い様、その男は何者なのでしょうか?魔法にとてもお詳しいみたいですね」
「えぇ、私よりもに彼のほうが魔法ついては詳しいわ。だから連れてきたの。えー、そうね、信頼できる友人よ」
彼女は値踏みするようにネイトへ視線を向けると、ゆっくりと近づいていく。
「わかりました。ですが国家機密を知ってしまった今、彼もここへとどまって頂きます」
「留まる?どういうこと?」
「魔法使い様をこちらへ案内したのは、女王様の命令です。あなたにはここで箱の研究をしてもらいます。部屋は私と同じ部屋を。彼は……そうですね、カミール様と同じ部屋をご用意致します」
突然の言葉に狼狽する中、私は彼女の肩を掴むと、こちらへと振り向かせた。
「ちょっと待って、私は壁を見に来たのよ!?それに彼は……ここにずっと居る事は出来ないわ」
「でしたら説得して下さい。話を聞いた以上、彼もここから出る事は不可能です。壁はすぐそこにありますので、いつでも見て下さい。衣食住はすべて揃えておりますので、ご安心下さい。壁を破壊する研究よりも先に、その箱について調べて頂きたいとの事です。ではではお部屋にご案内しますね。あっ、逃げようと思って無駄ですよ。この周辺には結界師の結界が張られております。遣い魔に魔法は利きませんからね」
パトリシアはニッコリと笑みを浮かべると、私の手を強く引っ張り部屋の外へと連れ出していった。
「いえ、私にはただの箱にしか見えないです……。本物の魔法使い様じゃないと見えないのかもしれませんね。ところでその描かれている物を、紙に写して頂くことは出来ますかぁ?」
「えぇ、出来るわ。でもその前に教えてほしいの。どうやってこの箱はこちらへやってきたの?」
そう彼女へ問いかけてみると、パトリシアは何かを考え込みながらに、箱をじっと眺めた。
「そうですねぇ~、確か今から数十年前でしょうか……」
この箱を最初に発見したのは、通りすがりの木こりでした。
まだここが只の森で、ラボなどなかった時代です。
たまたまこの辺りを通りかかった彼がこの箱を発見し、中を開けると、無線機と使い方の書かれた紙が入っていたそうです。
彼はその指示通りに無線機を起動させると、そこから声が聞こえてきたんです。
「うわぁ、本当に起動した!?やっと、やっとだ!おーぃ、そこに誰かいるかい?」
「あっ、はい……。へぇ、いや……何だこれ?人の声が……?」
「声もはっきり聞こえるじゃないか。あー師匠に見せてなかったなぁ。いやいや、あー、うー、よしッ。こんにちは!いやぁ、数十年待ったかいがあったよ!僕は東の国の者だ。君は西の国の方かな?」
「東の国……?冗談だろう?イタズラなら……」
「違う違う、本当だよ!誰かは知らないけれど、その無線機を持ってお城へ行ってくれないかな?」
彼は半信半疑のまま、この箱を持って城へやってきました。
城の者も最初は信じられませんでしたが……無線機の彼が話す内容は、魔法に精通してない西の国では知りえない事ばかり。
信憑性等確かめるすべがありませんでしたが……無線機と言うものが危険物ではないと判断すると、女王様の手に渡りました。
それがこの間、女王様が持っていたあの無線機です。
東の国とやり取りできる無線機はあれ一台。
今私たちが手にしている無線機は、あの無線機を分解し新たに作り出した別物です。
離れた者と連絡を取り合う事が出来るので、便利に使わせてもらってます。
それは置いといて……東の国と連絡が取れるようになり、お互いの現状を把握する事に成功しました。
そこで壁を壊す話が出たんですよ、お互い協力し合い壁を破壊しようと。
そうして箱を最初に発見した木こりを呼び出し、拾った場所を特定すると、私たちはその場所へラボを建設しました。
東の国の者の話では、箱はこの場所でしか起動しないそうです。
箱は小さいですが……中に入る大きさの物であれば、相手に送る事が可能。
それを知り、この箱の研究を進めましたが……構造はわからぬまま、同じものを作り出す事は出来ませんでした。
なので最初の頃は、東の国から物が届くだけで、こちらから送る事は出来ませんでした。
ですが研究していく中で、こちらからも物を送ることに成功しました。
色々と条件が必要ですけどね……。
「まぁ長々と話しましたが、結論から言いますと、最初どうやって送られて来たのかはわかりません。東の国へ訪ねてみたのですが、教えて頂けませんでした。そこで魔法使い様に見て頂きたかったんです」
これは東の国が送ってきたものなのね。
見る限り魔法で送ってきている事には間違いなさそう。
でもどうやって……?
彼女の話に耳を傾ける中、再度箱を確認してみると、置かれている台にも魔法陣が薄っすらと書かれている事に気が付いた。
そんな中、ネイトが横から徐に箱へ手を伸ばすと、パトリシアは慌てた様子でそれを静止した。
「箱に触れてはいけません!」
強い口調に、ネイトは無言のまま手を引っ込めると、私へ顔を寄せる。
「姫、この箱自体は魔道具の一種だ。北の国は魔法に特化し、東の国は魔道具に精通している。だがこちら側へ送り込んだ陣は……魔法の一種だな。陣の形状を見る限りかなり古い物だ。100年ほど前の物だろう。陣を読み取るに……移転魔法を応用している」
「魔道具に移転魔法……。でもあれは道筋を知っていないと、発動しないでしょう?」
「あぁ、想像するに……この辺りは森が生い茂り同じ風景が続いている。東の国も同じこと。幾重にもイメージを繰り返し、偶然ここと同じ道筋が一致したのだろう。そんなあやふやなイメージで送ることに成功したのは、只運が良かっただけだ。だから数十年たった今、これ以外何も送れていないのだろう」
ネイトの言葉に深く頷く中、パトリシアは眉間に皺をよせ首を傾げていた。
「魔法使い様、その男は何者なのでしょうか?魔法にとてもお詳しいみたいですね」
「えぇ、私よりもに彼のほうが魔法ついては詳しいわ。だから連れてきたの。えー、そうね、信頼できる友人よ」
彼女は値踏みするようにネイトへ視線を向けると、ゆっくりと近づいていく。
「わかりました。ですが国家機密を知ってしまった今、彼もここへとどまって頂きます」
「留まる?どういうこと?」
「魔法使い様をこちらへ案内したのは、女王様の命令です。あなたにはここで箱の研究をしてもらいます。部屋は私と同じ部屋を。彼は……そうですね、カミール様と同じ部屋をご用意致します」
突然の言葉に狼狽する中、私は彼女の肩を掴むと、こちらへと振り向かせた。
「ちょっと待って、私は壁を見に来たのよ!?それに彼は……ここにずっと居る事は出来ないわ」
「でしたら説得して下さい。話を聞いた以上、彼もここから出る事は不可能です。壁はすぐそこにありますので、いつでも見て下さい。衣食住はすべて揃えておりますので、ご安心下さい。壁を破壊する研究よりも先に、その箱について調べて頂きたいとの事です。ではではお部屋にご案内しますね。あっ、逃げようと思って無駄ですよ。この周辺には結界師の結界が張られております。遣い魔に魔法は利きませんからね」
パトリシアはニッコリと笑みを浮かべると、私の手を強く引っ張り部屋の外へと連れ出していった。
0
お気に入りに追加
2,459
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる