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第五章
新章7:立ちはだかる壁
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女王と視線が絡むと、私は引きつった笑みを浮かべて見せる。
壁の向こう側から来たことは間違いないけれど、私が暮らしていたのは北の国。
東の国なんて訪れた事もない。
「勝手な事をして申し訳ないのだけれど……あなたの事を調べさせてもらったの。何でもあなた……壁の向こう側から来たとおっしゃっているようですわね。だけどあの壁をどうやって越えてきたのはわからない。それを鵜呑みにすることは女王として出来ないわ。だから確認させてもらうわ」
私は驚き目を丸くする中、恐る恐る無線機へと視線を落とす。
「えっ、あの……確かに壁の向こう側からきましたが、私が居たのは北の国なのです。ですので東の国の方は私の事を知らないと思いますわ」
「ふふっ、それは安心して。北と東の国は同盟を結んでいるのよ。だから今日の為に、北の国の方を東の国へ呼び寄せてもらっているの。だから……ね」
女王は無線機を手に取ると、中央にある黒い魔石へそっと撫でる。
無線機から魔力が溢れ始めると、キーンとした耳障りな音が頭の中に響いた。
頭が痛い……何なのこれ。
不快な音に思わず耳をふさぐ中、私以外には聞こえていないのか……皆平然とした様子だ。
次第に音が弱まり、私はそっと耳から手を離し顔をあげると、ジジジッ……と機械音が無線機から聞こえた。
「ご機嫌よう、東の国の王子様。ふふっ、聞こえているかしら?」
「……ジジッ……。聞こえているよ。朝からあなたの甲高い声を聞くと、一気に目が覚めるね」
「あら、それはよかったわ。もう少し聞かせてあげた方が宜しいかしら?」
「……いや、遠慮しておくよ。それでそちらの準備は整ったのかな?」
「えぇ、もちろん。だからこうして連絡をしたのでしょ?あら、もしかしてまだ眠っているのかしら?」
女王の言葉にピリッとした空気が流れると、無線機から微かに舌打ちしたような音が聞こえた。
「それはすまない。あたなが僕の言葉を正確に理解してくれているか心配だったんだ。だから念のため、確認をね」
女王は無線機から響く言葉に笑みを消すと、ピリピリと張り詰めた空気が漂い始める。
ちょっと、何なのよ……この空気は……。
もしかして東の国と仲が悪いの?
居心地が悪くなる中、チラリと隣へ視線を向けると、カミールは気にした様子もなく、平然としている。
「それはそれは……お気遣い頂きありがとうございますわ。あなたの言葉を理解出来る者は少数ですものねぇ」
「……口の減らない女だ」
「何か言いまして?」
「いや、何でもない。早速だが、壁を渡ったという女性を出してくれるかな。君の声はもう十分に堪能したからね」
「……ッッ、こちらも堪能しすぎて、思わず切ってしまうところでしたわ。ふふっ」
女王はニッコリを笑みを浮かべながらに私へ視線を向けると、無線機を差し出した。
「お見苦しいところをお見せしてごめんなさいね。はぁ……彼に言葉を伝えるのは大変なのよ」
「おぃ、聞こえてるぞ!」
向けられた無線機から声が飛んでくると、私は苦笑いを浮かべた。
これ……話しても大丈夫なのかしら……。
彼女はグッと中央にある鉱石を手のひらで覆うと、くぐもった声が微かに耳にとどく。
様子を覗うように女王へ視線を向けると、乾いた笑みが映った。
「野蛮な人でごめんなさいね。彼の言葉は気にしないで。……これを彼女に」
無線機を隣に座るパトリシアへ手渡したかと思うと、彼女は席を立ち無線機を掲げたままに私の前へ立ち止まった。
口元へ近づけるように無線機をこちらへ近づけると、ジジジ……とした機械音がはっきりと聞こえる。
「えっ、あっ、はい……ッッ。あの……初めまして」
そうたどたどしく無線機へ話しかけると、パトリシアは満足げな笑みを浮かべていた。
「初めまして、君の噂は聞いているよ。僕は東の国の王、ノーバート。どこかの誰かとは違って、澄んだ美しい声のお嬢さんだね。早速だけれども、北の国から西の国へ渡ったというのは本当なのかな?」
「はい、どうやってこちらへ来たのかはわかりません。私はどこかの山道に倒れていたようで……」
「ようで……?」
「はい、あの……山賊?のような人たちに倒れているところを連れ去られてしまって、実際に目が覚めたのは、薄暗い馬車の中でした」
そう説明すると、ガガガッ……と電子音と共に、くぐもった声が響く。
「……、とう……ジジ……ッッ、です……ガガッ、ヂヂッ……ッッ」
「……バカッ、……ジジジ……ッッ、ギギ……つけ……ガガガッ、ビビッ」
複数人の何やらもめているのだろう声に、私は慌てて女王へ顔を向けると、彼女は心配ないわとニッコリと笑みを深めてみせた。
「失礼……、それは大変だったようだね。……ジジッ、ガガッ、あぁ……くそっ、あぁいや、少し待ってもらえるかな……ッッ」
そう話すや否や、騒がしい声が聞こえたかと思うと、突然に無線機の向こう側から、ガタガタッと激しい音が部屋に響いた。
壁の向こう側から来たことは間違いないけれど、私が暮らしていたのは北の国。
東の国なんて訪れた事もない。
「勝手な事をして申し訳ないのだけれど……あなたの事を調べさせてもらったの。何でもあなた……壁の向こう側から来たとおっしゃっているようですわね。だけどあの壁をどうやって越えてきたのはわからない。それを鵜呑みにすることは女王として出来ないわ。だから確認させてもらうわ」
私は驚き目を丸くする中、恐る恐る無線機へと視線を落とす。
「えっ、あの……確かに壁の向こう側からきましたが、私が居たのは北の国なのです。ですので東の国の方は私の事を知らないと思いますわ」
「ふふっ、それは安心して。北と東の国は同盟を結んでいるのよ。だから今日の為に、北の国の方を東の国へ呼び寄せてもらっているの。だから……ね」
女王は無線機を手に取ると、中央にある黒い魔石へそっと撫でる。
無線機から魔力が溢れ始めると、キーンとした耳障りな音が頭の中に響いた。
頭が痛い……何なのこれ。
不快な音に思わず耳をふさぐ中、私以外には聞こえていないのか……皆平然とした様子だ。
次第に音が弱まり、私はそっと耳から手を離し顔をあげると、ジジジッ……と機械音が無線機から聞こえた。
「ご機嫌よう、東の国の王子様。ふふっ、聞こえているかしら?」
「……ジジッ……。聞こえているよ。朝からあなたの甲高い声を聞くと、一気に目が覚めるね」
「あら、それはよかったわ。もう少し聞かせてあげた方が宜しいかしら?」
「……いや、遠慮しておくよ。それでそちらの準備は整ったのかな?」
「えぇ、もちろん。だからこうして連絡をしたのでしょ?あら、もしかしてまだ眠っているのかしら?」
女王の言葉にピリッとした空気が流れると、無線機から微かに舌打ちしたような音が聞こえた。
「それはすまない。あたなが僕の言葉を正確に理解してくれているか心配だったんだ。だから念のため、確認をね」
女王は無線機から響く言葉に笑みを消すと、ピリピリと張り詰めた空気が漂い始める。
ちょっと、何なのよ……この空気は……。
もしかして東の国と仲が悪いの?
居心地が悪くなる中、チラリと隣へ視線を向けると、カミールは気にした様子もなく、平然としている。
「それはそれは……お気遣い頂きありがとうございますわ。あなたの言葉を理解出来る者は少数ですものねぇ」
「……口の減らない女だ」
「何か言いまして?」
「いや、何でもない。早速だが、壁を渡ったという女性を出してくれるかな。君の声はもう十分に堪能したからね」
「……ッッ、こちらも堪能しすぎて、思わず切ってしまうところでしたわ。ふふっ」
女王はニッコリを笑みを浮かべながらに私へ視線を向けると、無線機を差し出した。
「お見苦しいところをお見せしてごめんなさいね。はぁ……彼に言葉を伝えるのは大変なのよ」
「おぃ、聞こえてるぞ!」
向けられた無線機から声が飛んでくると、私は苦笑いを浮かべた。
これ……話しても大丈夫なのかしら……。
彼女はグッと中央にある鉱石を手のひらで覆うと、くぐもった声が微かに耳にとどく。
様子を覗うように女王へ視線を向けると、乾いた笑みが映った。
「野蛮な人でごめんなさいね。彼の言葉は気にしないで。……これを彼女に」
無線機を隣に座るパトリシアへ手渡したかと思うと、彼女は席を立ち無線機を掲げたままに私の前へ立ち止まった。
口元へ近づけるように無線機をこちらへ近づけると、ジジジ……とした機械音がはっきりと聞こえる。
「えっ、あっ、はい……ッッ。あの……初めまして」
そうたどたどしく無線機へ話しかけると、パトリシアは満足げな笑みを浮かべていた。
「初めまして、君の噂は聞いているよ。僕は東の国の王、ノーバート。どこかの誰かとは違って、澄んだ美しい声のお嬢さんだね。早速だけれども、北の国から西の国へ渡ったというのは本当なのかな?」
「はい、どうやってこちらへ来たのかはわかりません。私はどこかの山道に倒れていたようで……」
「ようで……?」
「はい、あの……山賊?のような人たちに倒れているところを連れ去られてしまって、実際に目が覚めたのは、薄暗い馬車の中でした」
そう説明すると、ガガガッ……と電子音と共に、くぐもった声が響く。
「……、とう……ジジ……ッッ、です……ガガッ、ヂヂッ……ッッ」
「……バカッ、……ジジジ……ッッ、ギギ……つけ……ガガガッ、ビビッ」
複数人の何やらもめているのだろう声に、私は慌てて女王へ顔を向けると、彼女は心配ないわとニッコリと笑みを深めてみせた。
「失礼……、それは大変だったようだね。……ジジッ、ガガッ、あぁ……くそっ、あぁいや、少し待ってもらえるかな……ッッ」
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